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アタシは慌てて扉に耳を近づけた。
「ああ。それなりの力はあるようだ」
マーリンが言った。
「呼び出す相手は、もう分かってるの?」と女。
「見当はついてる。条件を満たせるかは、まだ計算中だ。しかし可能性はある。勝負してみてもいいだろう」
マーリンの声はいつもより暗い。
すごく…すごく歳をとったみたいだ。
「もう諦めれば?」
「僕の性格は知ってるだろう。一度決めたら必ずやり遂げる」
「あなたはバカだわ。知識があるし、魔力もあるのに…。こんなことに関わる意味はないわ」
「君がそれを言うのかっ!!」
マーリンの声が激しくなった。
「怠惰の神を殺して、その血を浴びたあなたは老化することはない。でも、不死身じゃないわ。戦って殺されたら…」
「これが片付いたら、毎日、本を読むだけの日々も楽しいだろう。だか多少の危険は犯しても、この決着だけはつけないと気が済まない」
「あなたは愚かだわ」
静かになった。
アタシは扉のノブに手をかけた。
一気に開けようとして…やめた。
マーリンと話してる女が誰か知って、どうなる?
アタシには関係ない話だ。
マーリンが神を殺して歳をとらなくなったって分かっただけ。
他のことはアタシとモルガングレムスやアドロポリスの神々とは関係ない。
アタシは寝室に戻った。
シーツを頭から被って顔だけ出す。
窓際に立って空を見た。
優しい光を放つカルナディアの美しい月がアタシの顔を照らす。
理由は全然、分からない。
でも何故だか、すごく悲しかった。




