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殿下達のブートキャンプ

「とーちゃんかーちゃん」甘えるな」

「「とーちゃんかーちゃん」甘えるな」」


「人生捨てずにゴミすてろー」

「「人生捨てずにゴミすてろー」」


「おいらは分隊いちの色男」

「「おいらは分隊いちの色男~ぶふっ(自称なっ!)」」


「あのコの為にがんばろう」

「「あのコの為にがんばろう(畜生会いたいぜ!)」」


「あと5周だ!足あげろっ!!ペースを保て!」


「今日の夕食なんだろなー」

「「今日の夕食なんだろなー(昼前なのにもう夕飯の心配かよ!)」」


「強い魔物をぶっ飛ばせ~」

「「強い魔物をぶっ飛ばせ~」」


 ザッザッザッザッ


 隊列を組んで走る若者達。


「おらおらおら!王子様はもうスタミナ切れかよ!甘えてんじゃねーぞ!!」


「はっ!はい!」


「ハンナにリーシャ会いたいぞ~」

「「ハンナにリーシャ会いたいぞ~」(ねーちゃんと妹の名前じゃねぇか!)」


「宰相様のご子息はもう限界か?足をあげろ腕をふれ!そんなんじゃ戦場で一人残されあっという間に人生とさよならだ!」


「は、はい。(ゼェゼェゼェ)まだ、走れます!」


「軍隊育ちはタフガイさ~」

「「軍隊育ちはタフガイさ~」」


「お前ら!喜べ!今日のメニューにと「「スララおばさんのクッキー」」が差し入れされたそうだ!


「「おおおおおおお!!」」


「クッキーマカロンりんごパイ」

「「クッキーマカロンりんごパイ!」」


 甘党派がそこそこいそうだ。いや身体が甘いものを求めるのかもしれないが。


「あと2周!全速力で2周いけ!」


「「うおおおおおおおおおお!!」」


ドドドドドドという音と共にラストスパートをかける集団。


その集団が走り去った後には、ヨレヨレの王族と高位貴族の子息が二人、息も絶え絶えであと1周を走っていた。


「はぁっはぁっはぁっ」


「はぁっはぁっ、僕は頭脳派なのに…」


「戦場では体力のない者から死んでいく。殿下方にはもっと基礎体力をあげて頂く必要がありますな。…それに、宰相子息殿にはそのモノクルはどうみても邪魔のようですが?」


「これは、マリアベルが似合うって…ははは、そうだなもういらないやコンナもの」


 汗が流れ込んでうっとおしかったのだ。


「繰り言ですが、家庭教師は何をしていたのですかな。この程度で音をあげてもらっては到底…」


首をふる教官は、二人と同じ距離を走っていたのに、たいして汗をかいていないようだ。


「はい、ゴールです。食欲がわかないでしょうが、しっかり食べてください。でないと午後からがきついですからな。では私はこれにて失礼」


 ハァハァハァ、ゼィゼィゼィ


 二人はゴールするやいなや地面に座り込む。


 教官はそんな二人を気の毒そうな目で一瞬みたが、さっさと教官棟に戻っていってしまった。


「おーい殿下方、ちゃんと整理体操してくださいよ~。でないとキますからね!」


 先にゴールしていた同期の青年が声をかけてくれる。

 彼はちょっと世話焼きのようだ。


「わかった!ハァハァ。少し休んだらちゃんとする!」


「先に飯にしてますからねー!ちゃんとしてくださいよ!」


 青年は二人の返事を聞くと「めし、めしめしめし~食後にクッキー」と変なふしをつけて歌いながら走っていってしまった。あれだけ走らされたのに元気なものだ。


「ハァハァ、軍隊では、身分など関係ないとは本当だったのだな」


「ハァハァ、ゼィ。まさか新兵訓練に放り込まれるとは思わなかったですね」


「レーベル、その、ソレいいのか」


 レーベルの手に握られたものを見てルーカスが言う。


「どうせこんな所じゃ細かい数字なんて見る機会ありませんよ。もっと上にいけば違うでしょうが」


服が汚れるのも構わず、レーベルは仰向けに地面に寝ころんだ。尤も、もとより汗と土埃でドロドロなのだが。


「訓練の時ははずすようにします」


「そうか」


「では殿下、忠告に従って屈伸運動でもしましょうか」


「ああ、ようやく息も整ったな」


二人はのそのそと整理体操をはじめる。広いグラウンドにはもう二人しか残っていなかった。


「これでも、吟味されているのだろうな」


「他の部隊では、ついていけない者はケチョンケチョンに貶される事もあるらしいですね。知り合いが言ってました。…さぁ終わりましょうか」


「十分貶されていると思うのだが」


「まだ温いらしいですよ。ここの教官は」


「これで手加減されているのか。手加減て何だろうな」




結局件の青年が忠告してくれたのに、整理運動を適当にすませたために、このあと二人は地獄の筋肉痛を味わう事になる。


さらに、教官のアドバイスにも従わず、というか疲れきって食べられず、午後の訓練では二人して倒れる事になった。


「どこが温いって?」

「父の護衛が言ってました。殿下の意見に同意しますけど~」


 救護室に運ばれた二人はそれでも王族だったり高位貴族の誇りがあるのか、2時間後に訓練には復帰して温いと評判の教官に特別メニューを科せられるのであった。


「「鬼だ」」


 ともらして鉄拳制裁をもらったとかもらわなかったとか。





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