乙女ゲームは終了しました???ぼうけんのはじまり?
「えっ?これ着るの?」
「何よぉ。私の服、着れないっていうの?そんな恰好でこの辺ウロウロするつもり?」
部屋着にガウンを羽織った姿のままブランケットで簀巻きにされて拉致されたため、はっきり言って動きにくいのはたしかだけれど、シルビアの「侯爵令嬢」として培って来た今までの価値観から言ったら…。
「露出多すぎですわ」
「ミーシャはシーフだからね」
シーフという冒険者クラスの彼女は、あらゆる情報を自然界の中から読むため肌を普段からさらしている。
そのため、ブラ的な胸あてとショーパンのような短いパンツにちょっとした防具といった大変破廉恥な恰好なのである。
小麦色の肌でツルペ…ゴホン、大変スレンダーな彼女にはそんな恰好もお似合いなのだけど、シルビアが着ると、ウッフンおねーさんの出来上がりだ。
「ちょっとこれは…」
「刺激が…」
コータと青髪の青年は鼻を押さえ目を泳がせている。
「オレは故郷で慣れてるからね」
ハッハハと鍋をかきまぜつつバレンが笑っている。
ミーシャとバレンの故郷では割とよく見る装備なのだそうだ。
「おれのシャツ貸してやるよ」
「足も隠したいわ」
「わたしのでよければ、まだ未使用なので」
「ありがとう」
シルビアは青髪の青年、デュランの足が長すぎて、借りた鎧下に着るアンダーパンツの裾を折る事になったのがちょっと悔しかった。
「デュランは行き倒れていたの?」
「ええ、恥ずかしながら、荷馬ごと盗まれまして。やはり一人旅は甘くはなかったようです。今はこうしてコータさん達と一緒ですからいろいろと助かっています」
「その代わり危険な所にけっこう寄り道させられてるけどねー」
ミーシャが混ぜっ返すと彼は品よく笑った。
「わたし一人では怯むような所に行けて、結構楽しんでますよ」
「ふーん。デュランさんは前は何してた人?」
シルビアはデュランの物腰から高等な教育を受けたかそれ相応の地位にいた人間だろうと当たりをつけた。
「まぁ、よくある話ですよ。家督問題で負けたのです。わたしに叛意はなかったのですが、兄はわたしを邪魔に思ったようで、追い出されました」
「庶民の方がよっぽど情が厚いよねー。そういう話を聞くと」
ミーシャはバレンの肩を叩いた。
「私たちは幼馴染なの。一山当てようと故郷を出て探索者になったんだけど手柄をぜーんぶ仲間だと思ってたやつらに横取りされちゃって、まぁ嫌になっちゃって腐ってたところにコータと出会ったの。以来ずっとつるんでるわ。で、シルビアは?」
「ふふふっ。そうね。私もなかなか理不尽な目にあってるのよ」
シルビアは結構な身分の人と婚約していたけれど、その人に好きな人が出来てその彼女に嫌がらせをしていると勘違いされて拉致され紆余曲折あってあの崖から落ちる事になった経緯を話した。
「えー何それ?他に好きな人が出来たなら、ちゃんと話をして別れればいいのに。貴族って変な事をするんだねー」
「友人の婚約者を勝手に拉致するとは、しかもそれは友人の為というより自分の為にだろ?信じられないな。そんな友人、友人じゃないな」
「何人もの異性を虜にするとは、話に聞く毒婦というのではないのか?そのご令嬢は」
「…知りたくなかった。乙女ゲーの裏側…怖い、乙女ゲー怖い」
「しかし悔しいよね、シルビア、何も悪くないのに」
「私だけじゃないですわね。ここにいる皆、悪い事してないのにそろって何故か追いやられて」
「そうだな。ちょっと相手をするのがやっかいな連中が敵っていう所まで一緒って所までな」
「そろいもそろって負け組だねー。あははは」
「笑いごとなのだろうか、それは」
「いやいやいや、だって笑うしかないじゃん。自分達じゃどーにも出来ない事だもの」
「ほんとにな」
「なんかこー運命に一発逆転ってできないのかね!スカっと●●パンみたいに!」
「それねー」
「スカッとしてみたいものです」
ついてない5人はそろって項垂れた。




