信じてくれる人
私は病院で目を覚ました後、絶望していた。なんだか、高校生の時のことを思い出す。きっと、サークルの皆から明日は来なくて良いというメールが来るのだろう。体調を理由に。そんな事を想っていると、メールが届いた。恐る恐るメールを開くと
『明日は無理しない程度に学園祭に来てね!』
というメールが届いた。その瞬間、メールの通知音が鳴りやまない。どのメールも
『明日、学園祭に来るの楽しみにしているから』
『絶対に来てくださいね!みんなで支えますから』
『みんな待ってますから!』
という、学園祭に来てほしい旨が書かれたメールだ。
最後に二通、だいご君とかける君からだった。だいご君からは
『女の子のために無理したんだってな。えみみたいな奴も学園祭には必要だ』
と書いてあった。私は
(何で…?)
そんな疑問で一杯だった。かける君のメールを見る前に私は、だいご君に返信した。
『なんでそんな優しい言葉を掛けてくれるの?』
『かけるに言われたんだよ』
部長の俺はどのチームにも属さず、各チームの監督をしていた。そんな中、ポスティングに行った、ポスター制作チームを待っていた。ポスター制作チームは帰ってきたが、えみの姿が見当たらない。
「えみはどうした?」
「えみ先輩は発作で病院に行きました」
かけるがそう言うと、その場の全員が息を飲む。全員が次の言葉を探している中、一人が口を開いた。
「でも、学園祭当日じゃなくて、良かったね」
「確かに、私、当日にそんなことが起きたら、どうすればよいか分からないもん」
全員が口々にそう言い、俺も
「えみには当日、体調を考慮して休んでもらうか」
そう言った。かけるがすかさず
「待ってください。それは違います」
その場が静まる。
「今ここで決めるべきなのは、えみ先輩を学園祭から外すことじゃありません。
えみ先輩が明日参加できるかどうかを、えみ先輩本人が判断できる状態を作ることです」
誰かが言う。
「でも、また発作が起きたら危ないだろ」
かけるは落ち着いて続ける。
「危ないのは、学園祭に出ることそのものじゃありません。無理をして、一人で抱え込んで、周りが支えない状態です。逆に言えば、休憩の確保、作業量の調整、付き添い、この三つを決めれば、負担はかなり減らせます」
「でも当日に倒れたら困るよ」
「困るから来るな、というのは違います。それなら、風邪を引くかもしれない人も、貧血になるかもしれない人も、全員来るなという話になります。大事なのは、誰かに何かあった時に、どう支えるかを決めておくことです」
少し間を置いて、さらに続ける。
「それに、今日発作が起きたからこそ、えみ先輩自身も明日は慎重になるはずです。
参加するにしても、無茶はしない。その前提で来てもらう方が、本人にとっても、サークルにとっても健全です」
俺はまだ迷っていた。
「でも、休んでもらった方が安全じゃないか?」
「安全だけを理由に本人の役割を奪うと、次からえみ先輩は『倒れたら役割から外される』と思います。それは今後の人生経験で一番よくない。緊張も増えるし、居場所もなくなる。
むしろ今必要なのは、『無理はしなくていい。でも来たいなら来ていい。みんなで支える』
そう伝えることです」
かけるが呼吸を忘れたように言い切る。
「僕たちが今やるべきなのは、休ませる相談じゃなくて、来る場合にどう支えるかを決めて、その上で『待ってます』と伝えることです」
そして最後
「えみ先輩は学園祭に出たいと言っていました」
かけるの表情は、切望に満ちていた。えみを受け入れてくれと言わんばかりの表情だった。周りが静まり返る中、誰かが
「確かに、先に来るなって決めるのは違うかも」
それを皮切りに
「無理しない前提なら、えみちゃんにも来てほしい」
「えみちゃんにはお世話になったし」
「えみちゃんが来たいなら応援したい」
そんな空気に包まれた。
『ってことがあったんだ』
『そんなことがあったんだ』
『てことで、俺もえみが来るの楽しみにしている』
『ありがとう』
私は返信を終えると、かける君のメールを見た。
『みんな待ってます。けれど、無理はしないように。学園祭当日の動きの計画は練り直して、休憩を多めにとってあります。明日は時間通り、来れますか?』
『うん、行けるよ。しっかり休んだもん』
私はそう返信すると、スマホを閉じた。『ありがとう』は直接言いたかったから。




