第六話 滝の下
今回は氷塚視点でお届けします。前にも書いた気がするんですが、滝落ちはずっと練っていたネタのひとつなので書けて嬉しいです。
僕は何をしているんだろう。友達の様に思っていた孤狼月を攻撃し、己が勝てないと分かっている勝負を仕掛けた。僕はルカに殺して欲しいと思っていたのかもしれない。誰も、殺したくなかったから。殺してしまう前に殺されたかったんだ。
(都合良く扱いすぎだよな、殺して欲しいからって殺人を犯させようとしたんだから)
で、このザマだ。滝に落とされている、ルカごと。
(って、ルカまで落ちたら意味ないじゃないか!心中でもする気か馬鹿。)
このまま行ったら溺れるぞ。僕じゃなくてルカが。
「なぁ、確かに僕はカナヅチだけどルカってものすごく寒いの苦手じゃなかったっけ!?」
「あっ」
あっ、じゃない!全くもう。いつもいつも、ものすごく頭良い癖に考えなしなんだから。運の良いことに体当たりを仕掛けられた状態で落ちている。僕はルカをガシッと抱きしめた。僕らは抱きしめたのとタッチの差で水面に叩きつけられた。
う、息が出来ない。水面が遠ざかっていく。まずい。滝壺に流れたら、水面に上がって来られないかもしれない。おかしい。水に終わりがある。地下に繋がっているのか?だから水面の泡が少なかったのか。
(地下に落ちることが出来たら水から出られる!)
意を決して、僕は更に下へ落ちる水の中に入った。
「おい、氷塚、氷塚ぁ!」
痛いな、そんなに叩くなよ。ちゃんとルカだけは生かそうと頑張ったんだから。って、
「水から出られた!」
喜びでいっぱいで何も考えずに目を開けた僕は猛烈に後悔した。何故ならば水に濡れたためか髪を下ろして、涙目で僕をペチペチと叩くルカの姿が目に入ったからだ。しかも、冷静に考えてみると、今はいわゆる膝枕状態なのである。…僕も一応思春期真っ只中である。これに何も思わない方がおかしいだろう。最近髪を下ろしている姿機会がなかったので、若干忘れかけていたがルカは女の子である。しかもめちゃくちゃ美人の、だ。
(うっ、ジャージ若干透けてないか?誰だよジャージ白で作ったの)
しかし、男子なら分かってくれるだろうが、こういうのって指摘しずらいのだ。でも指摘しないと目に毒が過ぎる。
「起きてるよ。…えっとその、ね。寒いでしょ。僕のジャケット貸すよ!制服に着替えてきたら?」
直接言う勇気は僕にはなかったので『必殺、寒いでしょ着替えてきたら作戦』でなんとかすることにした。本人も本当に寒いのが苦手だったらしく、納得してくれたようだ。この選別とやらが始まった時から背負っていたリュック(放課後だったのでそのまま帰ろうと思っていたため)を漁り防水仕様の体操服袋からジャケットを取り出して渡した。防水なのはたまたまだ。
「それにしてもここ明るすぎないか?地下だから普通光差し込んでなかったら暗いよな?」
僕のジャケットを受け取り近くの岩陰に移動したルカが尋ねてくる。ルカはすごいよ。僕にはそんな余裕なんてなかったからね。辺りを見渡すと確かに明るい。なんかこう、空間自体が明るい気がする。いや、石か。空間の壁は勿論岩だ。その岩肌自体が発光しているのだ。
「岩肌が発光してるみたいだよ。見たこともないし知らない石だ。そんなものがこんなところにあるなんて」
岩肌を撫でながら答える。すべすべでひんやりとした石だ。かなり頑丈そう。
「ん〜。ほんと今は謎が多いよな。頭がパンクしそうだ。あ、ジャケットさんきゅ。お前も着替えてこいよ」
着替え(ジャージ脱いで下着の上にジャケット羽織っただけ下は流石にそのまま)を終えたルカが同じように岩肌を撫でながら言った。あのさ、僕の努力いらなかったんじゃないか?
言葉に甘えて上裸で下はジャージになった僕はいつの間にか火を起こして保存食のパンを炙っていたルカの下へ向かった。食事中は何か考えているらしいルカが黙り込んでいたので静かに終わり、特に何も近くにいなかったので僕らは寝ることにした。ちなみに時計はどちらもダイバーズウォッチだった為に無事だった。これほどまでにこの決断を喜ぶことはこの先ないだろう。
「おやすみ優」
優呼びは狡いと思う。君のことを殺そうとしたのに、今度は好きになりそうだ。というか昔から、ずっと好きだ。
「おやすみルカ」
非日常生活1日目が幕を閉じた。
ちょっといつもより長いです。主人公の名前と漢字をようやく書けました。まさかの女の子だったとは。
氷塚編が終わったので次はみなさん大好きかわいい子をスカウトしに行くかもしれません。
余談ですがこのシリーズのタイトルを付け足しました。
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