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八話

「今、なんと申されましたか?」

「多分、聞き違えと思うのですが、もう一度言っていただけないでしょうか?」

「何度言っても同じじゃ」

「で、ですが。それでは……」

「決まりを破ることになるのでは?」

「先に破ったのは、お主らじゃ」

「「ぐっ!」」

「諦めるのじゃな。わしはもう諦めた」


恋愛RPGの世界に悪役(?)として転生した話


 両親襲来の次の日。

 学外実習の出発日で、勇者誕生の前日。

 私は、寮の自室にいた。

 理由は簡単で、学園にいるのが鬱陶しかったからだ。

 今朝、エヴァとカリーヌを見送るために学園に行ったのだが、校門をくぐった早々拉致された。

 犯人は複数の教師で、無理やり生徒指導室に押し込まれた。

 要件は、自分たちが受ける処分をなくすこと。

 私が決めるということを聞いて、行動に移したと思われる。

 始めは説得という言い訳を聞かされていただけだったが、次に賄賂(授業単位)というものを出してきて、それにも応じなかったら脅迫ということをしてきた。……教師としての身分を使って。

 幸い、停職処分が取り消され、出勤してきていたマリーポサ先生が駆けつけてくれたため、大事にはならなかった。

 それにしても、教師の質がここまで落ちているとは思わなかった。

 言い訳ならまだ良い。情報の一つとして使えるかもしれないから。

 賄賂は時と場合によっては有効だが、私には何の意味もない。

 だが、権力を使った脅迫は駄目だ。学生なのだから、こうすれば大人しく言うことを聞くと思い、いつも通り(・・・・・)やったのだろうが、まったくの無駄、愚かな行為である。

 今回の件の処分の決定権は、陛下から頂いたもの。正確には、お父様が頂いたものを私が預かったという形になる。要するに、今回のことに関しては、私はこの国の最高権力者の庇護下にあり、教師の権力など問題ない立場にあるのだ。

 それに、処分の決定権を私が持っているとはいえ、絶対ではない。私が決めたことでも、納得のいかないものだったら却下される。そのことは明言してあるため、私をどうにかしたとしても、お父様とお母様が決めた処分が実行されるだけだ。

 実を言えば、今回のことは両親から私への試験というものだ。

 貴族として、周りや感情に流されずに冷静な判断が出来るかどうか試されているのである。

 私に甘いという両親ではあるが、こういうところはしっかりしている。

 その後、カリーヌとエヴァついでにカミーユとミカの見送りをして自習しようと図書館に向かったのだが、その途中またも拉致されそうになった。

 今回の犯人は事務員たち。彼らが荒事に慣れていなかったことと、私も警戒していたので、未遂に終わった。

 事務員たちは、話を聞いてほしいなどと言っていたが、私は無視をすることにした。どうせ自分は悪くないということを、延々と繰り返すだけだろうから。

 二度にわたる襲撃ということもあり、本格的に身の危険を感じたので、しばらくは寮の部屋にいようと思い立ち、現在に至る。

 寮も学園の一部、危険では? という疑問が出るだろうが、寮内は絶対安全だと言える。その理由は……

「リリアーヌさん。荷物が届いているよ」

「アリシアさん。ありがとうございます」

「いいよ。これがあたしの仕事だからね」

 そう言って、豪快に笑うこの人―寮母アリシアさんのおかげである。

 見た目はちょっと太った近所のおばさんといった風だが、前職は冒険者だ。

 『金線のアリシア』という二つ名をもつ、最高位であるランク5の冒険者だった。

 そんな人が何故冒険者をやめ寮母をしているのかは分からないが、安全ということからかなり助かっていることは間違いない。

「アリシアさん。お願いがあるのですが……」

「分かっているよ。来客は断る。安心して籠っていればいい」

「ありがとうございます」

 事情を聴いているのか、アリシアさんは私の頼みをあっさりと了承してくれる。

 自信満々なその姿は、とても頼もしい。

「ん? そうなると、この荷物も怪しくないのかい?」

 送られてきた荷物は、長さ80セイル(≒80センチ)位の包みと50セイル(≒50センチ)四方くらいの箱だ。

 包みの方はともかく、箱の方は中身が詰まっているのかズシリと重い。

「賄賂として贈られてきたものじゃないのかい? それなら送り返してやるけど……」

「大丈夫です」

 どちらも、お父様からの荷物である。

 包みの方は以前から頼んであったもので、箱の方は今回の事件についてお父様たちが調べた資料が入っているものである。

 その証拠にどちらの荷物にも、公爵家の封蝋が施されている。

 これを偽造して使用することは重犯罪に当たるし、そこまで用意出来るほど期間があったわけではないので大丈夫だろう。

「そう。なら大丈夫ね。何かあったら呼びなさいよ」

 説明を聞き、安心したようにそう言って荷物を置いてアリシアさんは去って行った。

「ありがとうございました」

 その背中にお礼の声をかけて、荷物を部屋へと運び込む。

 ……暇だし、早めに資料に目を通そうかな。


 駄目だ、こりゃ。

 資料を読んで、最初に思ったのがこれである。

 たらこ唇で、鉢巻きを巻いた法被姿のおじさんが一瞬頭に浮んだ。

 資料によると、かなり以前から同じようなことは行われていたらしい。

 確かに、名目上平等をうたっていても、上下関係を気にする貴族の家の子供たちが集まっているのだ。当然、自然と身分の高い家柄の者たちに、低い家柄の者たちが遠慮したり融通をきかせたりしたということが起こる。

 学園側も、下手に藪を突っついて蛇を出すわけにはいかないという考えから、多少のことは黙認していた。もちろんあまりに目に余ることならば、容赦なく介入していた。

 しかし、時が経つにつれ、“多少のこと”という範囲が大きくなり、教師の中からも親の身分に対し遠慮するものが出始める。今では、教師の七割、事務員の六割が親の身分による生徒の優遇というものを行っている。

 その結果が、今回のことにつながるわけだ。

 この国の最高権力者の子供である王子様(ストゥルザ)と、貴族の娘()。短絡的に見れば優遇するのは王族の方だろう。少し調べたならば、私の方に傾くと思うが、そんなことも思いつかないほど王族というブランドは高かったということだろう。

「……と言うか、こんな人たちに今まで教わっていたのか……」

 教えることがうまいと評判の先生が、七割の方に入っているのを見ての感想だ。

「何か、異様に疲れる。処分を早めに決めてしまおう」

 さて、勘違いしている人が多かったようだが、私が今回のことに対してすべての処分を決めるわけではない。

 私が決めるのは、学園内の処分。学園の規則に沿って、処分を決めるだけだ。

 それ以外の処分――ストゥルザの殺人未遂など刑事事件というものは、お父様と国王陛下を含む裁判官に委ねられる。

 まだ子供である私に、そこまで任せるわけにはいかないということだろう。

 結構な人数の処分を決めるので、細かいところは後で吟味するとして、大まかに処分を決めてしまおう。

 まず、最も罪の大きいストゥルザ。

 これは、学生に対する処分の内最も重い退学及び除名処分が適当だろう。

 続いて、教師長と事務長。

 懲戒免職(クビ)かな。色々やっているみたいだし。

 学園長。

 監督不行き届きの退職かな。もちろん後継を決めてからだけど。

 私を拉致しようとした教師及び事務員。

 懲戒免職(クビ)。教師長と事務長の腰巾着たちであり、審問会の出席者だった。そんなこと(拉致)をしなければ、もう少し軽い処分だったものを……自業自得である。

 ほかの教師及び事務員。

 一人一人違うが、停職と減俸を処することとする。

 ストゥルザの腰巾着。

 やはり、一人一人違う。審問会に出席し虚偽の証言をしたものは退学処分だが、それ以外は停学処分とする。

 ざっくりと処分を決め、ふと気付くとちょうど夕食の時間になっていた。

 取りあえず食事にしよう。

 細かい処分の決定はそのあとだ。

 そう思い、私は部屋を後にし、食堂に向った。


 翌日、学園のみならず世界が揺れる情報が走る。

 神による勇者選定が行われ、二人の勇者が選定された……と。

 これにより、魔王の復活が事実とされ、世界がパニックに襲われることとなる。

 そんな騒動の中、私は冷静に正念場を迎えたことを悟る。

 この後に起こること、これを乗り越えれば、確実に死亡フラグが折れるはずだ。

 その為に十分準備してきたのだ。

 絶対に成功させる。


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