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パーティを引退したら、勇者様がメイド服を着て玄関に立っていました  作者: 28号
終章:25日目の求人募集

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第2話

「クリード、もう出ていいぞ」


 検査のため、光の魔力が満ちる聖水の中で横になっていたクリードは、ミゲルの声で目を開ける。

 このところ毎日、クリードはこうした検査を受け続けている。

 

 魔王の意志は消え、脅威は去った。

 だがそれを誰もが信じたわけではない。


 本当に魔王はもういないのか、呪いは消えたのかという不安も大きく、未だクリードは城に拘束され、あれこれ実験や検査をされている。


「うむ、魔王の力は完全に抑え込めているな」

「この腕でもか?」


 聖水の中から持ち上げた左腕は、肘から下が黒く硬化したままだ。

 その先に伸びる鋭い爪は禍々しく、ひと目見れば人のものでないとわかる。


「むしろその腕が、魔王を封じているともいえる」

「ここに、奴が……」

「しかし魔王の意志は、もはやないに等しい。腕はそのままだが、お主が魔王になることはないだろう」


 ミゲルの説明を聞きながら、クリードはゆっくりと身体を起こす。


「聖水との拒絶反応もないし、お前は正真正銘人間だ」

「……そうか」

「鈍い反応だな。せっかく生きながらえたのだ、もっと嬉しそうにしろ」

「別に生きたいとは、思ってなかった」


 思わず本音がこぼれると、そこで老師にバシッと頭をはたかれる。


「そんなことを言ったら、イザベラが泣くぞ」

「……泣かないさ、彼女はもう俺を覚えていない」


 魔王を封じたあの日、遺物の効果はイザベラにも及んでしまった。

 その結果、彼女が失ったのはクリードとの記憶だ。

 すぐに事情を説明したが、かつての仲間だと言っても彼女は混乱するばかりだった。

 それどころかクリードを見て怯えた顔をし、初めて会った時のようにフードで顔を隠す始末だ。


 それでも諦めきれなかったが、クリードは身体を調べるためにイザベラと引き離され、十日以上もたってしまった。


「今、イザベラはどうしてるんだ?」

「家に帰りたいと言うから、カイリナに送り届けたよ」

「そう、か……」

「今日の検査が終われば、お前は魔王でないと証明できる。そうすればあの子の元にだって行けるぞ」


 ミゲルはそう言ったが、クリードは正直迷っていた。


(俺に、行く資格があるのだろうか)


 クリードが見つめたのは、魔物と化した左腕だ。


(多分俺は、もう人ではない)


 魔王の意志を抑え込み、姿は人へと戻った。

 でも、わかるのだ。

 自分はもう前とは違う。人でも魔物でもない、曖昧な化け物だと。


 それを知られたくなくて検査では人の振りをしているが、側にいるミゲルはなんとなく、それに気づいていると思う。


「陛下も、お前を自由にするとおっしゃっている。だから、これからは好きに生きていいのだぞ」

「……自由か」


 ならばイザベラの元に戻りたい。

 でも今の自分が側にいることで、また彼女を危険な目に遭わせるのではと思わずにいられなかった。


(一度は、俺が殺しかけたのに……)


 この手でイザベラの首を絞めた時の感覚は、未だ消えない。

 そして同じことが二度と起こらないという確信が、クリードは持てなかった。


「とにかく少し考えてみろ」


 そういうミゲルに、クリードは曖昧に頷くことしかできなかった。


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