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パーティを引退したら、勇者様がメイド服を着て玄関に立っていました  作者: 28号
終章:25日目の求人募集

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第1話


 クリード=グレイシアは、いつもひとりぼっちだった。


 生まれた時から親はなく、孤児院では有り余る魔力と怪力のせいで化け物と呼ばれ、誰もが自分を遠巻きにした。

 それでも誰かに必要とされたくて冒険者として身を立てたけれど、心の底から仲間と呼べる者は現れない。

 その強さと外見から旅の同志は集まるが、共に戦えば皆クリードを恐れ、最後は離れていってしまう。


 でもそんなひとりぼっちの化け物の前に、ある日一人の少女が現れた。


『イザベラ=カイルナージです』


 初めて会った時、彼女はフードで顔を半分隠し、緊張でとても小さくなっていた。

 小動物を思わせる仕草を見て、この小さな魔法使いも、いずれ自分を恐れて去ってしまうにちがいないとクリードは思った。


『よかったら、次もお願いできないだろうか』


 だからそう頼んだ時も、まさか受け入れてもらえるとは思わなかった。


『私でよければ、喜んで』


 二度目の旅に誘った時、彼女は頷いてくれた。

 その拍子にフードが落ち、初めてはっきりと顔が見えた時のことを、クリードは今でも忘れられない。


『また、いっぱい呪いを解きますね』


 ふわりと柔らかな微笑みを浮かべ、イザベラはそう言った。


――今思えば、一目惚れだったのかもしれない。


 でもイザベラは、すぐにまたフードをかぶってしまった。

 それがひどく残念で、どうにか顔を見て話したいとクリードは思ったのだ。


 会話の機会を増やすため、必要もないのに呪いの装備をかき集めたのは一度や二度ではない。

 イザベラはすぐ呪いを解いてしまうから、少しでも長く側にいるために必死でダンジョンを巡った。


 そうして少しずつ打ち解けながらも、内心ではいつ彼女がいなくなるかと怯えてもいた。

 でもイザベラは、次の旅に誘うたび『いいよ』と笑ってくれた。

 クリードの戦う姿を見ても『すごいね』と驚くだけで怯えることもなく、むしろ『守ってくれてありがとう』とふわりと笑う。


 そんな表情の一つ一つに、クリードは恋をしていた。


 でもクリードは、自分の感情に疎すぎた。

 ずっと側にいたかったのに、クリードは一度イザベラを手放してしまった。

『静かな暮らしがしたいんです』

 と言われた時、離れる理由が自分ではないと知って安心までしていた。


 深い喪失感に気づいたのも、彼女が去ってしばらくしてからだ。

 さらに本当の願いをようやく理解したのは、その身に変化の呪いが発動してからだった。


『お前には死んでもらわねばならん』


 父と名乗ったばかりの男にそう言われた時、クリードは絶望を抱くより先に「イザベラに会いたい」と思った。


 知りたくもなかった生い立ちのせいで存在を疎まれ、死を望まれ、クリードは疲れ果てていた。

 でも彼女だけは、こんな自分にも笑いかけてくれる気がしたのだ。


 死ぬことを望まれるなら死んでもいい。

 そして死ぬのなら、最後は好きなように生きよう。イザベラの側で暮らそうと、クリードは決意していた。


 だが思えば、それは間違いだったかもしれない。

 共に暮らし、距離を詰める中で、クリードは今更のように気づいてしまったのだ。


――イザベラと、ずっと一緒にいたかった。


 その願いは叶わないとわかっていたのに、彼女を求める気持ちは止められなかった。

 そしてそれが恋だとようやく気づいたのに、すべては遅すぎた。


「愛してる」


 その一言を伝えるより先に、イザベラはクリードのことを忘れてしまったのだ。


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