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パーティを引退したら、勇者様がメイド服を着て玄関に立っていました  作者: 28号
第8章:16日目の真実

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第5話

「自業自得だと、言われても仕方のない過去だ」


 ミゲルが話し終えると、レジャールが大きくうなだれる。

 そんな王に寄りそい、肩を抱いたのはシャルロットだ。


「父も、そして先王たちも、魔王が生まれぬよう改善は試みたのだ。だが呪いは消すことができず、さらに言えずの呪いが年を重ねるごとに力を増した。王家の中でも、罪は隠すべきと言う一派が強くなり、クリードを襲ったのもそいつらだ」


 魔王になる前に殺してしまえば、少なくとも十年は平和が続く。

 それ故呪いが出て以来、クリードは命を狙われ続けていたのだとシャルロットは告げた。


「だが兄上はすべてに抗わなかった。呪いを受け入れ、自ら命を絶つと約束をした。だから完全に魔王と化すまで猶予を与えられたのだ」

「そして、私の所に……?」

「会いたい人がいるのだと、あの子は言っていた」


 イザベラの疑問に、答えたのはレジャールだった。


「側にいたいと言えず、離ればなれになってしまった友に会いたいと、それは熱心に話していた。そして呪いのことで気に病む私たちに『むしろいい機会をもらった』とさえ言った」


『俺はずっと、誰かに求められることばかりしてきた。だから死ぬ前に、誰のためでもなく自分のために生きてみたい』


 そう言って、彼は最期の時をイザベラと過ごそうと決めたのだ。


(素直になったのは呪いのせいじゃなくて、クリード自身が自分を変えたからなのね)


 だからこそ、彼の行動はどこかおかしかったのだろう。

 自分の欲望のまま動くのが下手で、それでもイザベラの側にどうしてもいたくて、彼はメイド服まで着たのだ。


 その後の行動もすべて、きっとイザベラの側にいるためだった。

 そしてその願いの奥には、自分への特別な思いがあったのだと今はわかる。

 

「あの子にとって、君は救いだったのだな」


 わかりやすいクリードだから、その思いは父であるレジャールにも伝わっていたようだ。

 だからこそ、彼は悲しそうにイザベラを見つめる。


「あの子が君の側にいられるように、できるかぎりの猶予を与えたかった。けれど呪いの進行があまりにも早く、これ以上の先延ばしはできないだろう」

「残り時間は、あとどれくらいでしょうか?」


 尋ねると、そこでミゲルがクリードの側に近づく。

 そして手を掲げ、彼は浮かない顔になった。


「数日ともたないだろう。魔剣の傷が体の変化を抑えてはいるが、心は……もう……」

「でも、呪いを消せば彼は元に戻りますよね?」


 最後の望みを言葉にするも、ミゲルの表情は浮かないままだ。

 

「残念だが、不可能なのはお主が一番わかっているだろう。それにこの呪いは、解こうとすれば魔王の意志を呼び起こす。解呪に猶予がないのも、そのためだ」

「たしか、前は五分と……」

「この状態では、さらに少ないだろう。あやつが目覚めれば、呪いは一気に加速し変化は免れない」


 何をどうやっても、もはやクリードを救う手立てはないのだ。

 重い沈黙が流れ、イザベラの目に涙が浮かぶ。


(解呪は、できない……)


 いくつもの呪いを扱ってきたからこそ、イザベラにはわかってしまう。

 そしてこの状況で彼を救うには、呪いからの解放――死のほかに道はないだろう。


 それが一番いいことだとわかっていても、これまでに交わした会話が、笑顔が、心にこびりついて離れない。


(やっぱり、諦められない……)


 イザベラはどうしても、クリードの笑顔がもう一度見たかった。

 こんな苦しみの中で、死んでほしくなかった。

 だから彼の側に立ち、呪いに目をこらす。


「イザベラ、無理だ」


 呪いに目を向けたイザベラに、声をかけたのはシャルロットだった。


「でも何か、糸口があるかもしれません」

「この五百年、多くの魔法使いが成そうとしたが、解呪は不可能だった。それほど魔王の恨みと意志は深い」

「だけどこのまま、何もしないわけにはいきません」

「だが兄上はそれを望まない。もし解呪に失敗して君が死ねば、彼は死んでも死にきれないだろう」


 だからやめろというシャルロットの声に、イザベラはハッとする。


「……そうか、私が死ぬ……」

「おい、物騒なことを言うな」

「それに呪いが消せないなら……あるいは……」

「しっかりしろ、正気に戻れ!」

「私はこれ以上ないほど正気です」


 だって、正気でなければクリードは救えない。


「イザベラ、考えがあるのなら聞かせておくれ」


 優しく声をかけたのはミゲルだった。

 その隣では王もまた祈るように手を組んでいた。


 この人たちもクリードを救いたい思いは同じ。

 ならば希望もあると信じ、イザベラは口を開く。


「至急、用意してほしいものがあります」

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