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パーティを引退したら、勇者様がメイド服を着て玄関に立っていました  作者: 28号
第8章:16日目の真実

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第3話

 王が、自分に跪いている。

 それを、イザベラは信じられない思いで見つめていた。


「そなたに――クリードの恋人である君にどうしても話しておきたいことがあるのだ」

「わ、私は恋人ではありません」

「だが、クリードを守るため、こうして側にいるのだろう」


 そう言うと、王はクリードに手をかざす。

 すると、あれほどきつく巻かれていた拘束具が外れる。

 しかしクリードは、ぐったりとしたまま動かない。


「クリード、ねえ起きてっ、クリード!」


 頬に手を触れ、何度も名を呼ぶも、彼の反応はない。


「もはや、心が呑まれかけているのか……」

「それは、どういう意味ですか?」

「……言えぬのだ」


 すまぬという顔を見て、イザベラは言えずの呪いのことを思い出す。


(きっと、陛下も同じ……。でも呪いなら、私は解ける)


 国王にまで及ぶ呪いならば、きっとイザベラのような者が知ることは許されない。

 だけどその解呪がクリードの救いに繋がる気がして、イザベラは腕を持ち上げる。


「どうか無礼をお許しください。クリードを救ったら、どんな罰でも受けますから」


 そしてのぞき込んだ『呪い』は、クリードのものほどではないが複雑だった。

 解き方に失敗すれば待っているのは解呪者の『死』。その上呪いは幾重にも重ねがけされており、解呪の方法も百通りはあるだろう。


 でもイザベラは、それを見た瞬間、呪いに魔力を流し込んでいた。

 持ち得る知識のすべてを使い、ミスなく完璧に解呪を重ねていく。

 その速さに王が息を呑む間に、イザベラはすべての呪いを見事解ききった。


「これで、お話していただけますか?」


 イザベラの言葉に、王が戸惑いながら頬に手を当てる。


「ああ、これならしゃべれそうだ。しかしこの五百年解けなかった呪いをこんな短時間で解くとは」

「そんなにも長い呪いだったのですか?」

「これは代々続くもの。我が王族と、王族の秘密を知る者たちの言葉を封じるのだ。特に王の呪いはその起点となるものだから、未だ誰も解けたことがなかった」


 まさかそこまでのものとは思わず、解いてしまったことを今さら焦る。

 だが王はすべてを察した顔で「よいのだ」と笑った。


 そしてレジャールはぐったりと倒れるクリードに近づき、痛ましそうな顔で額を撫でる。

 それから王は息子をベッドに寝かせ、優しく毛布を掛けた。


(本当に、クリードのお父さんなんだ)


 動きの一つ一つに滲む愛情から、イザベラは改めて実感する。

 そして、彼の行動からクリードを傷つける気が無いとわかり、ほっとする。


「陛下!」


 そのとき、部屋に光が瞬きまた一人誰かが転移してきた。

 そこにいたのは、老師ミゲルだ。


「まったく、余の部屋に安易に転移しおって……」


 ここは魔法障壁の中だぞと、レジャールは呆れる。


(障壁の中ってことは、一歩間違えたら塵となって消えてたってことよね……)


 それを無傷でここまで通したシャルロットの凄さを感じていると、当人もまた転移で目の前に現れる。


「……兄上は?」


 だがその顔色はひどく悪い。カリストの森から王都まではかなりの距離がある。

 それを一瞬で移動する魔法は、やはり身体に負担が大きいのだろう。


「ご無事ですか?」


 イザベラが声をかけると、シャルロットは頷く。


「これくらい、兄上の苦しみに比べれば些細なものだ。それよりも父上、今……呪いが……!」


 父に詰め寄るシャルロットに、レジャールがイザベラを指し示した。


「彼女が解いてくれたのだ」

「ならば、彼女に事情を――」

「もちろん話そう。この呪いを解いた者ならば、希望を見いだせるやも知れぬ」


 王が言うと、そこでミゲルが前へと進み出た。


「でしたら私がお話ししましょう。王家の罪を語るのは、気が重いでしょうから」


 そして自分ならば公平に話せると、ミゲルは言った。


「この国は、大きな罪の上に成り立っている。それこそ、クリードを苦しめるすべての元凶。その発端は、五百年前のとある戦だ」

「五百年前というと、魔界から魔王が現れた時代ですよね」

「そうだ。しかしその認識は間違っておる」


 痛ましそうな顔をしながら、ミゲルはイザベラを見た。


「魔王や魔物は人の悪意が生み出したモノ。そう言われているが真実は違う。魔王は人の手で生まれ、そして魔王自身も元々は人なのだ」


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