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198年②微、縁談を受ける

話の展開としてはベタ、ですよね・・・。

 夏。


 村の仕事を終えた【微】が家へ戻ろうとしていると、村の女たちに呼び止められた。


「【微】、ちょっといいかい?」

「何?」

「話があるんだけどね」


 女たちは顔を見合わせた。


「この前、家族を持つのもいいって言ってただろう?」

「……言ったけど」

「だったら、ちょうどいい話があるよ」


 【微】は少し嫌な予感がした。


「話って?」

「縁談だよ」

「……ああ」


 思わず声が小さくなる。


「そんなに嫌そうな顔をするもんじゃないよ」

「嫌ってわけじゃないけど……」

「会ってみるだけでもいいだろう?」


 確かに考えたことがあった。

 春。

 自分も、そろそろ家族を持ってもいいのではないかと思った。

 だから、断る理由もなかった。


「……分かった」


 女たちは嬉しそうに笑った。


「そうこなくちゃ」

「相手は?」

「近くの村の男だよ。働き者で、家族もちゃんとしている」

「そうなんだ」

「一度、話してみるといい」

「うん」


 【微】は頷いた。



 それから数日後。

 男は村を訪れた。

 【微】とよりは少し若い年頃だった。

 身なりは質素だが、きちんとしている。

 挨拶を交わし、村の仕事について話した。


「畑仕事をしている」

「そう」

「父が亡くなってから、母と弟と暮らしている」

「大変ね」

「慣れている」


 男はそう言って笑った。

 悪い人ではなかった。

 むしろ、真面目で落ち着いている。

 村の女たちが勧める理由も分かった。

 話をしているうちに、【微】はふと尋ねた。


「馬には乗る?」

「少しなら」

「少し?」

「あまり得意ではない」

「そう」


 【微】は少し笑った。


「じゃあ、今度教えてあげようか」

「いいのか?」

「私、馬なら得意だから」


 男も笑った。


「頼む」


 その日は、それで別れた。


 【微】は庵へ戻った。

 【田疇】がいつものように書物を読んでいる。


「どうだった?」

「何がだ?」

「縁談」


 【田疇】は顔を上げた。


「そういう話だったな」

「うん」

「それで?」


 【微】は少し考えた。


「いい人だったよ」

「そうか」

「真面目だし、働き者みたい」

「それなら問題ないな。よかったな」

「うん」


 【微】は頷いた。

 けれど、何となく引っかかった。


「……でも」

「何だ?」

「何か足りない気がする」


 【田疇】は【微】を見る。


「足りない?」

「分からない」


 【微】は首を傾げた。


「悪いところはないの」

「そうか」

「だから、断る理由もない」

「なら、受ければいい」

「それがね……」


 【微】は困ったように笑った。


「一緒に暮らしているところを想像しても、あんまり何も思わないの」


 【田疇】は黙った。


「朝起きて、仕事して、ご飯を食べて……」


 【微】は指を折る。


「それで、夜になったら寝る」

「普通の生活だな」

「そう。普通なの」


 【微】はため息をついた。


「でも、私が欲しいのって、それだけなのかなって」


 【田疇】はしばらく【微】を見ていた。


「お前は、結婚して何を望んでいる?」

「え?」

「考えたことはあるか?」


 【微】は黙った。


 春には、家族を持つのもいいと思った。

 村の人たちと同じように、誰かと暮らす。

 子供ができるかもしれない。

 それは悪くない。

 けれど――。


「……一緒にいて、楽しい人がいい」


 【微】はぽつりと言った。


「それだけか?」

「それだけじゃないけど」


 【微】は少し考える。


「困った時に頼れる人。

 私も、その人を助けたいと思える人」


 そして、村を眺める。


「何でも話せる人がいい」


 【田疇】は頷いた。


「ならば、まだ決めなくてもいいだろう」

「そうかな」

「ああ」

「でも、相手は悪い人じゃないよ」

「悪くないことと、お前が望む相手であることは別だ」


 【微】は少し驚いた。


「……なるほど」


 その後も、村の女たちは何度か縁談の話を持ってきた。

 別の村の男。

 村の中で独り身の男。

 どの男も、悪い人ではなかった。

 働き者で、真面目で、家族を大切にしている。

 結婚相手として見れば、十分に良い人たちだった。

 けれど、【微】の心は動かなかった。


「どうしてだろう」


 ある夕方、【微】は一人で馬の世話をしながら呟いた。


「私、結婚したくないわけじゃないのに」


 馬が鼻を鳴らした。


「あなたはどう思う?」


 もちろん、馬は答えない。

 【微】は苦笑した。


「分からないよね」


 手を止める。

 春には、家族を持ってもいいと思った。

 夏になって、実際に縁談も来た。

 けれど、会ってみても「この人と」と思える相手はいなかった。

 【微】は馬の首を撫でる。


「……どこにいるんだろう」


 その問いに、答えはまだなかった。

【田疇】一応独身設定。


史実では息子の存在は明示されているが早世したため、

従孫の【田続】が関内侯を授与されたとある。


【北平田氏】一族ならば五胡十六国の前秦・北燕。南北朝時代の北魏・劉宋にいた記録がある。


自称子孫(二十二世孫。wikipediaにあるのは二十四世孫【田承嗣】が有名か)が唐の時代にいるが、死ぬほど怪しいため半信半疑。ただし、現代中国の田氏の一番の主流の祖でもある。

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