#7 やっぱり俺たちは、ふたりで一人。
「ご機嫌よう、私は陸軍中尉・オスカー。お話を聞かせてもらっても、よろしかな?」
陸軍...やはり、軍人だったのか。
逆らったら面倒な事になるのは目に見えている訳だが、捕まっても面倒な事になる。
となると、逃げるしか選択肢はないな。
「ルミナ、逃げれそうか...?」
と俺は小声で言う。
「微妙かな。あの偉そうなのは未知数だけど、武器を携帯している二人の実力は確か。恐らく、今の私じゃ戦うことも、あなたを抱えながら逃げることはできないと思う」
「ん? 今の私ってどういう意味だ?」
「私は月が出ている間、つまり夜の間じゃないとただの美少女。おまけに、太陽の日を浴びると、私の実力は二割くらいまで下がる」
「そうだったのか... だから目の色も」
最初に異変に気づいたのは教室でルミナの顔を真近で見た時。満月のように綺麗な目は髪色と同じ夜空のような紺色になっていた。
そして、走るスピードもだ。
一番最初に出会った時は俺を抱えながらも、かなりの速さで敵を直線距離で巻いていた。
が、直近のチェイスでは何度も路地に入ったりを繰り返していた。
状況は最悪。
このままでは二人ともども...
「黙りですか... ならば力づくで連れて行きますよ」
「待て!」
「お、やっと喋ってくれましたか。では、お聞きしますがおふた方は何者なのです? 見た所、我が国の国民ではないように思えますが」
言えない。異世界から来たなんて言えない。
そんなこと言ったら余計に怪しまれて捕まる。
というか、そもそも信じて貰えないだろう。
他の国から来たというのも、やがてボロが出て嘘がバレる。
「それは言えない。悪いが言うつもりもない」
「困りましたねぇ。やはり正攻法で行きましょう」
中尉の前で待機していたあの二人が攻撃体勢になる。
クソッ。こうなったらこうするしか...
俺は一歩前へ足を運び。
「わかった! 俺が行く」
「...え?」
「ほう、そう来ますか」
「俺がコイツの代わりに、お前らの所に行く。それで良いだろ?」
「良いでしょう。交渉成立です」
「ちょっと、あなた何言ってるの」
「なに、少しお喋りしてくるだけさ。ルミナ、そっちは任せた」
俺は奴らの元へ歩き出す。
「天海!!」
ルミナが俺の名前を叫ぶ声が後ろから聞こえる。
たが、俺は振り返らない。なぜなら少し寂しいから。
当たり前だ。最近、ずっと一緒にいたんだ。
それは寂しくもなる。
......
もう、会えないなんてことはないよな。
コイツらは異世界の軍人。日本の警察ではない。
恐らく、俺が口を割らなかったら拷問でもなんでもしてくるだろう。
でもまあ、心配する必要はないか。
どうせまた、
死ぬかと思ったら、美少女に助けてもらえる。
そうに決まってる。
「それでは行きましょうか」
俺は奴らと共に歩き始める。
その時だった。
「えっ」
何者かが、俺を持ってその場を立ち去る。
一瞬の出来事だった為、誰かわからなかったが。
まあ、言うまでもないか。
「なあルミナ、お前、俺のこと好きだろ」
「...アホ」
ルミナは目を濡らし、鼻を『グスン』っとしながらそう言う。
あのルミナがこんなことで涙を流すとは。
まあ、俺も人のことは言えないか。
「(グスン)...」
「フッ。なに泣いてるの?」
「お前も人のこと言えないだろ。所で策はあるんだろうな?」
「さっき言ったでしょ? 状況は絶望的。でも、こっちの方が断然良いでしょ?」
「だな」
俺たちはさっきいた場所から全力で逃げる。
しかし、後ろからは例の二人が。
「ん?」
すると、その一人である二刀流の鎌男が右手の鎌を投げつけてくる。
その鎌は一直線に俺たちの方へ。
「ルミナ!!」
『パーン』
ルミナが右の腰あたりから銃を取り出し、飛んできた鎌に見事に当てる。
「お前、エイム良いな」
「私は普段、弓使いなんだけどね」
「弓使いか...何百年前の人だよ」
「ん? なんか言った?」
ルミナが笑顔で俺に圧をかけてくる。
「す、すみません...」
どうやら触れてはいけないものに触れてしまったらしい。
以後、気をつけるとしよう。
というか、今はそれどころではない。
まずはこの状況をどうにかしなければ。
左右に曲がって敵を錯乱してはいるものの、これがいつ続くかはわからない。
早いうちに次の一手を考えなければ。
あ、そういえば。
「ルミナ、あの時みたいにグラップルで上に行けないか? 一度、敵の視界から消えて、その隙をついて人混みに紛れ込めば何とかなるじゃないか?」
「いい案だね。でも、この拳銃に搭載されているグラップルは一人用だから、二人分の重量に耐えてくれるか...」
重量に耐えきれずグラップルが壊れれば、追いつかれてお終い。
だが、このまま逃げ切っても勝機は見えない。
「やってみるしかないだろう。ちなみに俺は少食だから、グラップルが壊れたらお前のせいな」
「今すぐあなたを落として見殺しにしても良いのよ? デリカシー皆無男」
ルミナは上に銃口を向ける。
「振り落とされないようにね!」
「それは、お前次第だっ!!」
グラップルガンを上の建物に向かって発射し、凄い勢いで上昇した。
俺たちは太陽に照らせれ華麗に宙を舞う。
それは、あの時のように。




