#6 逃げ切ったかと思ったら、軍人に追い込まれました。
「盗みを働くのは人生で初めてだ。これで最後にしたいな」
軍服を着たごっつい男から逃げ切り、薄暗い路地でしんみりとした空気になった後。
とりあえず俺たちは、何故か無くなった靴を調達すべく、商店街と思われる場所へ行き、靴を盗んで来た。
「私も盗みは初め...て」
「いや、前科ある奴の言い方なんだよ」
「でも、今回に関しては仕方ないでしょ。流通してる通貨が違うし」
「それはそうだな。でも、もし日本の通貨が使えたとしても、俺たちは一文無しだったから、どの道盗んでいただろうが」
「細かい事はいいの」
良くは無いが、今回に限っては神様にも許して欲しいものだ。
ごめんなさい、神様。
「てか、異世界なんて本当に存在するんだな。正直、まだ信じられない」
街並みは美しいザ・西洋。歩いている人々も西洋のかっこいいコスチュームばかり。
建物の看板には見たことのない文字。でも聞こえる言語は日本語。
ご都合主義にも程がある。だからこそ信じられない。
「私だって信じられないよ。まるで夢を見てるみたい」
「ん? 夢?」
「どうかした?」
「いや、これは仮説だが。もしかしてこれは夢なんじゃないか?」
そうだ。異世界召喚なんて有り得るわけがない。
異世界ファンタジーじゃあるまいし。
これは、あの敵によって見せられている幻想!
ならば、早く夢から覚めなければ危険だ。
「うーん、確かにその可能性はあるね。じゃあ早速試してみよう」
「ルミナ、嫌な予感がするんだが、まさか俺の頬を思いっきり引っ張るんじゃないだろうな?」
「いや、それじゃあ生ぬるいよ。敵にかけられた催眠だとしたら、もっと力を込めないと」
「グハッ!!」
ルミナのグーパンが俺の腹に直撃する。
「あ、やり過ぎちゃった。でも、これで夢じゃないって事がわかったね! 一件落着」
「あの女、マジで許さん...」
さっきの裏路地で良い雰囲気になっていたのにも関わらず、それが無かったかのように俺に暴力を奮ってくる、あの女に神の裁きを...
『ザワザワ...』
俺を拳で吹き飛ばしたせいで、周りの人たちが足を止めザワつき始める。
マズイ、また目立ってしまった。
ほんと、何してくれてるんだ。
「お嬢ちゃん、良いストレートだったねぇ〜」
「ナイス! そこの美少女さん!」
「もっとやっちゃえ〜!」
ん、何か様子がおかしいゾ?
なぜ、ルミナが応援されている?
一方的にやられているのはこっちなんだが。
「お嬢ちゃん、ちなみにその男は何をしたんだい?」
「えーと、胸を触られました」
「えー、最低ね」
「もっとやっちゃいなさい!」
「おい待て待て! 触ってないぞ! 1ミリも!」
「言い訳なんて、男らしくないぞ、坊主。やっちまったもんは、しっかりと謝らないとなぁ?」
こんな理不尽な事があるか?!ありもしない罪を身内に着せられ、群衆に責められるとは...
『ザワザワ』
すると、片方の群衆がまたもザワつき始める。
だが、ザワついているのは俺たちに対してでは無く。
「道を開けてくださーい、これは一体なんの騒ぎです?」
「あれは... 軍服...!」
最初に出会ったごっつい男とはまた別の軍服の男、三人がこちらへ向かってくる。
見つかれば、面倒な事になるぞ...
マジで、やってくれたなルミナの野郎。
「聞いてくださいよ兵隊さん。あの男がお嬢ちゃんに... ってあれ?」
「そんな人、どこにもいませんが?」
「あの二人なら、あっちの路地に行ってしまいましたよ! 少女があの男を腕で抱えて」
「あ? どういうことだ?」
「う〜ん。状況が掴めませんが、我々を見て逃げたとみて間違いはないでしょう。二人とも、追いなさい」
「「ハッ!」」
〜〜〜
「やってくれたなルミナ! お前のせいでまた騒ぎになったじゃねぇか!」
「ちょっと遊びすぎちゃったね。ごめんなちゃい」
「ふざけやがって...」
俺たちは軍服の奴らから逃げるべく、また俺はルミナに腕で抱えられ、路地を全力疾走していた。
この状況、何回目やら...
「にしても、最初のごっついのと違って、あんま追ってこないな」
ルミナの判断が早かったからか、奴らは既に俺たちを見失っているらしい。
間一髪ってか。
『ドォーーン!!』
突如、正面から何かが落ちてきたような大きな音と土ぼこりが舞う。
「あーあ、あなたがフラグ立てたから」
「えー、それはすまん」
そして、土ぼこりからは二つの影が。
一人は鎌のような鋭利な物を二つ持った細身の男。
もう一人は手にゴツイグローブを付けているガタイの良い男。
そして、その奥からもう一人。
「ご機嫌よう、私は陸軍中尉・オスカー。お話を聞かせてもらっても、よろしかな?」
〜あとがき〜
書いてる自分もワクワクしてます




