#5 美少女に助けられたから、この物語は始まった。
「ルミナ、学校屋上にて通信途絶!」
「天海誠也も同様!」
「どういうことだ!」
「わかりません! 通信がいきなり途絶して...」
なんだ、何が起こってる?
いくら弱体化しているルミナでも死にはしないはず...
「ニゲルさん、どうしますか?」
「僕が行く。君たちが動くと学校の生徒たちも混乱してしまう。君たちは直ちに本部に報告を」
「了解!」
僕は、直ぐさま車から出て屋上へと向かう。
校内には入れないから、外から自力で上へ飛んで。
すると屋上へ着いた瞬間、目に入った物があった。
「... なんだコレ...?」
そこには綺麗に並べられた靴があった。
「ルミナの靴は見てないからわからないけど、天海くんの靴はこんなのだったよな」
天海くんを車に乗せていた時の記憶だから、正直そこまで覚えていない。
まさか、靴が重要になってくるだなんて。
「僕としたことが... 完全にやらかした」
この状況から見て、誘拐か?
どうやって誘拐したんだ?
そして敵は、昼間のルミナじゃ対処できない敵。
思った以上に事態は深刻のようだ。
「えー、こちらニゲル。各班に通達。ルミナ、並びに天海は行方不明。現場には両名の靴と思われる物が残されていた為、誘拐と思われる。現場付近に何者かがいた痕跡は無し。至急、行動できる全HARMONIA組員の招集を要請する。これは緊急事態である。直ちに集結せよ」
〜〜〜
「なんだ、これは...?」
見慣れない建物に見慣れない服を着る人々。
日本でないことは一目見てわかるが、一体どこだ...?
「なぁ、ルミナ。ここはどこなんだ...?」
俺にはわけがわからなかったため、いつものようにルミナに質問するが。
「わからない... 雰囲気は西洋風だけど、こんな場所、地球上に存在したっけ...」
「お前でもわからないってどういうことだよ...」
「あなた、スマホ持ってない?」
「あ、あぁ... 持ってる、って。ダメだ、圏外になってる。これじゃあ地図アプリも使えねぇ」
「私のスマホもさっきから圏外。私のスマホ、海外でも変わらず使える契約してたから、繋がるハズなんだけど、ダメみたい」
「それって...」
嫌な予感が、俺の脳裏をよぎる。
「うん。私たちは、あの男の何らかの能力によって『異世界』に飛ばされてしまったみたい」
「マジかよ...」
「さっきよりも驚くのね」
「それはそうだろ! 異世界だぞ?!」
「こればっかりは、私も驚いてる。まさかこんなことができるヤツがいたなんて」
あのルミナでも、動揺することがあるんだな。
ある意味、ルミナも普通の人間で、普通の少女ってことか。
─そんなことを考えていると事態は予期せぬ方向へと進む。
「ほら、あそこです! 変わった身なりをしてるあの2人組!」
「ん?」
俺は声のする方へ向くと。
ガタイのいい警官のような人が話しかけてくる。
「君たち。見慣れない顔だね? 他の国の人かな? 少しお話を伺ってもいいかな?」
「マズイ。私たち少し目立ち過ぎたみたい。逃げるよ!」
「お、おう!」
ルミナは俺を片腕で抱えて走り出す。
それはいつかの日のように。
「コラッ! 待ちなさい!!」
警官のようなヤツが追っては来るものの、ルミナのスピードには追いついて行けず、一瞬で隔離される。
「フッ。この感じ、懐かしいな」
「感謝しなさい! 2度も美少女に抱えられるなんて、生涯であるかないかってところだよ」
「絶対無いな」
─それから俺たちは彼方まで逃げ続け、ある薄暗い裏路地に身を置くことにした。
「ここまで来れば、もう大丈夫だろ」
「そうね」
もう逃げる必要は無いと判断したルミナは、俺をそっと地面に下ろす。
「あれ? 今回は『ポイッ』じゃないのな」
「...!? 今の無し。もう1回持たせて、やり直すから」
「やり直す必要は無いぞー?」
「ヤダっ。私が必要ある」
「何を言ってるんだ...」
コイツといると、毎回こういうコントのような会話になるな。
俺が生きてきた中で1番、話しててオモロいかもしれん。
いや違うか。
『1番、一緒にいて楽しい』かな。
いや、何言ってるんだ俺!
コイツと一緒にいて楽しい?バカを言うな。
コイツといたら、これから先、どうなるかわからん。
絶対危険に晒されるに決まってる...!
「逆か...」
「ん? どうしたの?」
「いや、何でも...」
もし、あの時。
黒服集団に追い込まれていた俺をルミナが助けてくれなかったら。
助けてくれた後、一生出会うことが無かったら。
俺は間違いなく、死んでいる。
こんな、ハラハラしてワクワクするような思いもしていない。
全て、ルミナのおかげなんだよな。
「なぁ、ルミナ」
「何、また質問? 私は何回質問されればいいの? 少しは自分で考え...」
「ありがとう、助けてくれて。一緒にいてくれて。本当にありがとう」
「え...?」
まさか、こんな言葉返ってくるとは思わなかったのか、ルミナは放心状態となる。
「ルミナ。お前はこれからも、俺のそばにいてくれるのか? それとも交代制で違う組員に変わるのか?」
「何言ってんの、急に」
「あぁ、すまん。変なこと言ったし、変なこと聞いたな。悪かった」
ほんと、何聞いてんだ、俺は。
これじゃあまるで、ずっといてくれって言っているようじゃないか。
誰がこんなヤツと...
「...多分、いるんじゃない? 上に命令されている限りは。でも、仮に護衛する者を変えろって言われたら納得はいかないかな。だって、それって私に対する侮辱じゃん? 私があなたを、これから守っていけないってって言われてるもんだもん」
「... 守っていく、か」
「何? 私じゃ不安?」
「いや、そんなことは断じてない。むしろお前といて楽し... あ...」
「楽しい...?」
「あぁっと、今のはだな? ええっと...」
「フッ。まあ、それは美少女と一緒にいるんだから、楽しいに決まってるよね。でも、嬉しいよ、そう言ってくれて。私が不安だったのは、あなたの... 天海の日常生活がめちゃくちゃになって、迷惑になっちゃうことだったから」
「まあ迷惑ではあるが、結局、お前が... ルミナがいてくれなかったら、もっと俺の人生はめちゃくちゃになってた、というか死んでたと思うから、本当に感謝してるよ」
「... なんか気まずいね」
「だな。俺たちらしく無かったな」
「まあ、気を取り直して。この異世界から脱出する手段を探さなきゃ。その為に、協力してくれる? 天海」
「あぁ、勿論だ。ルミナ」
そして、俺たちは手を取り合い、歩んでいく。
未知なる明日への希望へ───。
〜〜〜
『死ぬかと思ったら、美少女に助けられた。』
俺、天海誠也は、こうして『美少女・ルミナ』とタッグを組んだ。
最初は助けられまくっていた俺だが、この役は撤廃だ。
これからは逆に俺がルミナを助けて、
『死ぬかと思ったら、イケメンに助けられた。』
に変えてしまおう。
果たして、俺がこの美少女を助ける日は来るのだろうか。
それはまだ、わからない。
なぜなら、俺たち人間は、常に不確定な未来を歩んでいるから。
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〜あとがき〜
タイトルが長い。




