#4 俺と美少女が目を覚ますと、そこは異世界でした。
気のせいだな。
突っ伏していたせいで目がボヤけてよく見えなかった、ということにしておこう。
流石のルミナでも、「転校」という形で俺についてくるはずはないだろう。
それが、俺を護衛するためだとしても。
俺はもう一度、机に突っ伏す。
自己紹介を終えた美少女は、隣の席に座るために歩き出す。
やがて席に着くと、座る瞬間に俺に耳打ちする。
「よろしくね。天海くん」
「?!」
いきなり耳打ちされ驚いた俺は、ビクッと身体を起こす。
そして、彼女の方を見ると...
ニチャァっという憎たらしい顔をして見つめてくる。
「この野郎...!」
間違いない。こういうことをしてくる女は俺の知る限り1人しかいない。
休み時間に問いただしてやる...!
─数十分後。
「キーン、コーン、カーン、コーン」と、休み時間を知らせるチャイムが鳴る。
「それじゃあ、授業を終わります。号令は無しでいいぞー」
教師が教室から出た瞬間。
「おい、夜月 空。いーや違ったな。またなの名をルミナ! なぜお前が学校にいる?」
「え? 誰ですかあなた」
「冗談はよしてくれ。お前はどっからどう見てもルミナだ」
「あなたはどっからどう見ても、パッとしない顔の見知らぬ男だけど」
「他人のフリをして俺をディスるな。パッとしないとか言うな」
「じゃあ、どんな所がルミナっぽいの? 言ってみてよ」
「それは... ウザいところとかだな」
「は? あっそ」
なんなんだコイツは?!
なぜ他人のフリをして俺を試すような質問をしてる?
どんな所がルミナっぽい?ってなんだよ。
なんか、あの言葉を言わせようとしてないか?
コイツってあれで喜ぶタイプなのか?
「え、何? 私の事、そんな目で見てたの? 気持ち悪」とか言われそうなんだが...
クッソ。話を聞くためにも言うしかないか。
「んー... ルミナっぽい所なら、まだあったな。例えば、可愛くて、髪色は夜空と同じ紺色で、目は夜空に輝く星のような輝かしい黄色で... ってあれ? お前、目の色、黄色じゃなかったか?」
「え、さっきなんて言っ」
「夜月さーん」
突然、どこからか夜月を呼ぶ声が聞こえる。
すると...
「え」っと声を出してしまうほどに、周りには人がズラーと集まって来た。
「ねぇ、夜月さん! すっごく綺麗だね!」
「お肌のケアとかどうしてるの? 髪も綺麗だね!」
「夜月さん。今日、お茶しませんか」
その集団からあらゆる言葉が飛び交う。
これにも流石のルミナも、「あ、はは..」と困惑状態だった。
「ハハ、美少女は疲れるな...」
─昼休み。
「トントン」っと肩を叩かれる。
「ん?」
叩かれた方を向くとルミナがいて、手をグッとの形にし、親指を教室の外へ向ける。
こっちに来いということだろうか。
ルミナは歩き出し、廊下へ出る。
その間にもクラスメイトに声をかけられるが、それは全て断って。
「そういうことか」
意味がわかり、俺もルミナに続いて歩き出す。
周りから要らぬ誤解をされないように間隔を空けて。
歩き出して少しするとルミナが階段を上がる。
「ん? そっちは屋上だが...」
俺も続いて階段を上がると。
「え、なんで扉開いてる?」
屋上は生徒立ち入り禁止で、尚且つ、きちんと施錠されていたハズだが。
全く、あの美少女に常識は通用しないらしい。
呆れながらも屋上に着き、ルミナを見つける。
そんな彼女は、柵に肘をついて頬杖をつきながら、彼方を見つめクールに待っていた。
俺はルミナの隣に立ち質問をする。
「そろそろ聞いていいか? お前はルミナで間違いないな?」
ルミナは俺を一瞬だけ見つめた後、また彼方を眺める。
「ええ、私は私。でもここでは夜月 空」
「なんでここに転校して来たんだ? 理由はなんとなくわかるが」
「じゃあ、言ってみて」
「それは... 俺を護衛するためじゃないのか?」
「はい、違う。勘違いしないで、バカ」
「いや、酷すぎるだろ」
「フッ、冗談だよ。護衛するためっていうのは半分あってる。あの人から話は聞いてるでしょ? 今、あなたはある組織から命を狙われている。だから学校も安全な場所とは言えない。周辺に護衛の組員を配置してはいるけど校内まではカバーできない」
「だから転校して来たということか」
「そう。でも、あともう1つ理由がある」
「それは?」
場が一瞬、静まりルミナがまた口を開く。
「ここに、あなたの命を狙う組織の組員がいる可能性がある」
「... マジか」
「あんま驚かないのね」
「まあ、物騒なヤツらがいるのはわかったし、学校にいるのも不思議じゃないだろ。でも、学生が組織の組員ねぇ。そいつは、いわゆる能力者なのか?」
「わからない。でも、この学校に能力者は確かにいる。その人が敵かどうかはわからないけど」
「ん? その言い方だと、敵とは別に能力者がいるってことか?」
「えぇ、その人は今回の一連の騒動に関わってないのは確か」
「なんで、そう断定できる?」
「情報に優れた組員がいるの、私たちの組織に」
「へぇ。てか、そこまで調べられてるなら、その人の能力とかわかるのか?」
「うん。確か、未来視できる能力だとか」
「え? 最強じゃね? スカウトしろよ」
「断られたんだって、『こっちにもやらなきゃいけないことがある』とか言って」
「へぇ、世界を救うよりも大事なことねぇ」
「話は変わるけど、最近あなたに過度に接触して来てる怪しい人とかいない?」
「うーん、いないなぁ。お前くらいしか」
「しょうがないでしょ! 上の指示で学校に潜入しろって言われてるんだから」
ルミナが俺の方へ向き、キレ始める。
「制服、似合ってるぞ」
「クゥっー!!」
褒めたつもりが、火に油を注いでしまったようだ。
やれやれ、全くわからん美少女だ。
「いたいた。まさかこんな所にいるとは」
「「?!」」
突如、屋上の塔屋から声が聞こえる。
そこには、あぐらをかいて座る中年の男がいた。
「誰」
すかさず、ルミナが反応する。
「内心あんたもわかってんだろ? その認識で間違いないさ」
それを聞いたルミナは男に拳銃を向ける。
「お、撃つのか? ここで?」
「チッ」
「撃てねぇよなぁ。人間がうじゃうじゃいる、この場所では」
「舐められたものね。でも、その心配は要らない。音を出させずにあなたを殺す。勿論、断末魔も出す間もなく」
ルミナは右耳にいつの間にか装着していた通信機器で連絡をとろうとするが...
「屋上、至急来て。 ...あれ?」
「どうした、ルミナ?」
「応答が無い...」
「ハッ! それは応答する訳ないよなぁ。お前ら、まだ気づかないのか、この状況に」
どういうことだ?状況って...
は...?
学校周辺を見てみると、人々が全員止まっていた。
「嘘... でしょ...」
「半径200mくらいってところだな。俺の仲間に無理を言って作らせた空間だ。お前ら、組織の連中もいるんだろ? この周辺に。こんくらいあれば、連中の動きも全員止められる。あ、最初のブラフは少々セコかったな、すまん」
「まさか、時間を停めれるなんて...」
「まあ、この空間も時期に消失する。ここでやり合うのも、いささか分が悪い。だから場所を移そうか」
男は立ち上がり、何かをしようとしていた。
「周りに音が聞こえないなら...!」
それを察知したルミナはパァーンっと銃の引き金を引く。
それと同時に敵は、右手を上げスナップをし、パチンっと音を鳴らす。
次、瞬きしたその時には...
「は? ...ここはどこだ?」
今さっきまで屋上にいたはずだが...
道を行き交う人々。その人々たちから聞こえる声。
そこは、日本のような場所では無く、海外のような雰囲気で...
まるでそこは。
『異世界』だった───。
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〜あとがき〜
これって『異世界召喚』ってヤツ...?!




