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第11話 英雄とデレ

「――はぃ?」


英雄? 誰が? いや、聞き間違い、かな?

リリンカの口からまさか、そんな……って、リリンカの顔が真っ赤だ!

耳たぶも、ほっぺも、真っ赤っか。瞳なんて熱っぽく潤んでいる!

こ、これは……毒だな! きっとゾンビに噛まれた毒を貰ってしまったんだ!


「ちょ、ちょっと待ってて、今、毒消しを出すから!」


リリンカを下ろし、魔法の何でもバックを漁る。

確か……野生の毒消しを入れておいたはずだ。


「毒?」


リリンカがキョトンとして首を傾げる。……自覚症状がない?! これは重傷だ!


「真っ赤っか~」


からかうようにシルキーが言うと、どこから手鏡を出してリリンカに手渡した。


「なんの――」


手鏡に映る自分を見て、リリンカはぎょっとした。


「自覚症状のない毒なんて……普通の毒消しで治るからなぁ?」


「違う! これは、毒とか、どんなんじゃないから!」


シルキーに手鏡を返し、リリンカは慌てたように顔を手で覆い、それから、顔を洗うみたいに、ごしごしと手を動かした。真っ赤な顔が、摩擦熱でさらに赤くなる。


「毒じゃない?」


「いいの! とにかくあたしは平気だから!」


「そ、そう?」


元気いっぱいにそう否定されては納得するしかない。

元気なら、まあいい。……あっ、そうだ。


「置いてけぼり!」


「――あん? 何よ?」


「置いてけぼりなんて酷いじゃないか!」


言ってから、しまった~、と思った。

これではリリンカの思うつぼだ。

ターンエンドで、リリンカにターンを回してしまった。

きっと手痛い反撃が、


「悪かったわよ」


「――ふぇ?」


また、聞き間違いかな? リリンカが素直に謝ったように聞こえたんだけど。


「置いてけぼりにしたのは、その……悪かったわ」


ふんっ、と不機嫌に鼻を鳴らし、そっぽを向くリリンカ。

リリンカが素直に謝っている! 態度は悪いけど、あのリリンカが!


「……」


呆気にとられて、何も言えなくなる。


「何よ?」


リリンカにぎろりと睨まれる。この圧は、確かにリリンカのものだ。しかし、


「……本当に、リリンカ?」


「どういう意味よ?」


「だって――」


「うほっ!」

「ばぁう!」

「とるる!」


「――いけない。こうしちゃいられない!」


「なによ?」


「破壊音を聞きつけてゾンビが集まってきてる、って!」


「破壊音? さっきの……何したのよ?!」


「《蛮勇王の破城槌》だよ。《星屑》を貰ったから習得してみたんだ」


ゾンビからガンバルムンクを引き抜き、ざおーに手渡す。


「は? 何の話?」


「説明はあとあと。――ちゅるる!」


とるる~、とちゅるるがぼくの肩に止まる。


「お願いね」


「とるる~♪」


「《真価を示せ》!」


ぽんっ、とちゅるるは元の七羽根ハーピーに戻った。


「行くよ」


シルキーをおんぶしたまま、リリンカを小脇に抱えると、ざおーがぼくの左足に捕まり、さび丸がぼくの右足のズボンに噛みついた。

すかさず、ちゅるるが2本の鉤爪でぼくの方を掴み取る。

ばさっ、ばさっ、とちゅるるが何度か羽ばたくと、ぼくらは空の人となった。


「誰かが戦っているわ」


「――誰が?」


「ひぇ! し、知らないわよ! 近づかないで!」


まあ押しやられる。ちょっと頬が触れただけなのに……。

でも、リリンカの言うことは確かだ。誰か戦っている――誰か、というか団体さん?


大きな光に見えたのは、彼らが持っている数十本という松明の光だ。

相手は……まあゾンビだね。

松明に照らし出されただけで数十匹。

月明かりにチラリと見えた森の中には、まるで趣味の悪い置物であるかのようにゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、またゾンビが、順番待ちするみたいに立ち尽くしている。

その数は、松明に照らし出されたゾンビの比ではない。

もう森全体がゾンビの置き場となっていると言っても過言ではないかも……。


「……」

「……」


ぼくは、リリンカも、何も言えなくなる。

多分、考えていることは同じ。


「……行くの、よね?」


「も、もちろん!」


「どうするの? あんな大群……普通に死ねるわよ? あっ、さっきのをまた使えば――」


「あと1回しか使えませんが?」


ちなみに《鉄槌》の方は『★』がふたつになったのであと9回使える。

あの大群を全部ミンチに変えるには、全然足りないけど。


「どっちみちちゅるるの効果時間が切れる。そしたら、またゾンビだらけの森の中だ。なら、森に落ちるよりも彼らと合流した方がまだマシかもよ?」


「あんたに拾われた命だもの、あんたに任せるわ」


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