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192話目 両親と家族集結

聖家全員集合!

「ああもう……相も変わらぬ突貫娘め……あ、お帰り父さん、美鈴さん。いや、いきなり騒がしくしてごめん。おいガルミア、俺は言ったよな?行儀よくしろっつったよな?先ず、靴を脱げ」


「ママがここにいるのに……我慢するなんて無理!毎日会える訳じゃないんだから、大目に見て欲しい!」


ちょっとお怒りの聖剣さんから身を庇って貰おうと、最愛の母親を膝に座らせバックハグして甘ったれるガルミア。母と娘の体格も年齢も逆転しているので、事情を知らない者が見たら混乱すること受け合いである。実際、敏郎と美鈴はキョドキョドしている。


困惑している両親を前に、実鳥はガルミアとの関係性を説明することとなった。内心、どんなタイミングで紹介するか悩んでいたのに、なし崩し的になってしまって自嘲気味である。


「えっと……前世の記憶の話をしたときに出た、その頃育てていた私の義娘が……この子、ガルミアです。十四年も生き別れ……死に別れ?していた反動か、とても甘えん坊になっちゃって……ガルミア、私の両親よ。挨拶なさい」


突然、娘から娘よりも大きな義娘を紹介されてしまい、両親は全く現状認識が追い付いていない。敏郎も美鈴も世間ズレはしていても一般人、突飛な事態に咄嗟の対応が出来るほどの訓練もされていなければ経験も無いのである。


一方、母親からその両親を紹介されたおっきい娘はといえば、直情的な性格ではあれど様々な危険に晒されながら成長し、数多の戦いを生き抜いた熟練の戦士である。故に、瞬時の状況判断能力は常人とは比べ物にならない速さである。


「つまり、ガルミアのグランパとグランマですね?初めましてママの娘のガルミアです!」


ガルミアは出会いから秒単位で、敏郎と美鈴を祖父・祖母として認識したのだった。しかし、まだ三十代半ばである美鈴は勿論、五十の敏郎にしても長子である光と同世代な外見の成人女性に祖父扱いされてしまっては……動揺しっぱなしであった。


「ちょ、ちょ~っと待って!説明!説明求む!そりゃ確かに年末には孫が生まれてお祖父ちゃんになるって心構えはしていましたよ!でもね、現実に孫からそう呼ばれるのは二年は後だと思ってたんだよ、それは間違いじゃないよね?それがだね……二十をちょいと過ぎた娘と同年代の、それも……なんだろう……ファンタジー世界の住人さんにそう呼ばれちゃうとか想定外が過ぎるんだが?」


「いや、実鳥が説明したそのままなんだが?まあ、厳密に言えばって訳でもないけど、ガルミアは俺にとっても孫みたいなもんなんだけどな」


「余計に意味が分からなくなったぞ!?」


「ん?そっちの説明ってまだだったか?いや、実鳥の前世のヴェルティエは、俺の前世の娘みたいなもんだから。そう考えると……父さんにとっては曾孫でもある訳だな」


「なんなのそのややこしい関係性は?前世からの関係性を引きずってるのが当たり前みたいな感覚、全然判んないよ!」


困惑して喚き散らす敏郎を、微風程度に平然と受け流す剣。そんな剣の泰然とした態度に敏郎は更に焦りを募らせヒートアップして剣に食って掛かる。そうしている内に、剣と一緒に帰ってきたメンバーもリビングへと様子を伺いにやってきた。


「何やら父様が喧々囂々しておりますな?」


「ま、ひさぶりに帰ってきたら家が異界化しているのだから気持ちは分からなくもない」


「だからと云えども、息子に当たり散らすのは大人げなくもある」


桜と翼と希、聞きなれている愛娘三人の声に敏郎が振り返る。三人とも帰ったばかりで着替えていないので軽装鎧姿である。普通の親なら娘がそんな姿をしていたら驚くとこだが、敏郎は驚かない。何故なら娘達のコスプレ趣味を認知しているから!これが聖家の日常風景であるのだから!


……三人揃って腰に差している刀剣が、銃刀法違反確実の業物であることを知れば、おったまげるであろうが。


「おお!我が愛しのドーターズよ!剣が色々酷いんだよ!前世とかあって当然みたいに説明されても納得出来ないよ!そう思うでしょう!?」


同意を懇願するような敏郎の問い掛けに、三人は示し会わせたように、プイッと顔を逸らした。


「私と希、前世の記憶あるし。元々一人だったのが、転生したら分裂してたりしたし」


「しかも、高度に発達した文明の改造人造人間兵器だったりしましたけど、なにか?」


「ボクも前世の記憶は少々あるのです。日本のショボい一般ピーポーでありましたが……」


開いた口が塞がらない敏郎パパ。十人いる子供の内、半分が前世の記憶を持っていたのだから。


敏郎は縋るような目で光を見つめた。「ねぇ、家の子達どうなってんの!?常識とかポイ捨てしちゃってる感じなんですけど?光ちゃんもそれでいいの!?」みたいな感じで。全くもって威厳がない。


光は困った顔で溜め息を吐くと、


「剣。ガルミアさんをお招きするなんて聞いてなかったわよ?お陰でおもてなしの準備をしそびれちゃったじゃない」


「論点がズレてるよ光ちゃんも!」


「いや、狩猟の帰りに獲物の御裾分けに寄ったんだけど、父さん達が帰って来るの思い出して、紹介しとこうと思って家来るか?って聞いたら「行くー!」って言うから連れてきた」


「なんなのその放課後の学生ノリは!?」


「……父さん、俺は高校生なんだが?」


「そうだけれども!って、今狩猟って言った?一体何を狩ってんの?危険なことしてんじゃないだろうね?」


「いざって時にちゃんと動ける奴等しか連れてってないから大丈夫だって。桜はずっと俺が鍛えているし、翼と希は前世でかなりの戦闘経験があんだから。それに……」


剣はリビングの出入り口で半身を隠し、様子を伺っているネフェに目配せした。あまりにワイワイと賑やかになっている雰囲気に、入室するタイミングを逸してしまったようである。一応、居候の身分であることを弁えていて、この家の主人である敏郎とその妻である美鈴との初対面に緊張もしていたのであった。


「えと……失礼、します……」


剣からの合図を幸いにと、ネフェはおずおずと姿を現した。その淑やかな所作に、敏郎も美鈴も目を奪われた。純白の肌に輝く銀髪。透き通る蒼眼。妖精だと言われても信じてしまいそうになる神秘的な美しさの少女が、そこにいたのだから。


「初めまして……ネフェ=ロルハイトと申します。お兄さんと、お姉さん達には大変良くして頂いております……その、父上殿と母上殿には突然の事で困惑なさっていると思いますが……どうか、ネフェをこの家に居させて下さりますよう、切にお願い致したいのです」


拙くも、丁寧な言葉使いでの懇願。浮世離れした美貌の少女が見せる震えるような緊張の面持ち。その儚げで庇護欲をくすぐる外見に、敏郎と美鈴は……疑いを抱く隙もなく魅了されてしまったのであった!


「ま、まあ家は広いし……子供達と仲良くやれてるなら……しばらく住んでもらっても問題ないんじゃないか?なあ美鈴」


「そ、そうね。一度預かってしまったのだし……燕も随分となついている様子だったし……しばらく様子見……しましょうか?」


二人とも焦りの表情でしどろもどろな口調になりながら、取り敢えず居候を受け入れる事に答えを纏めたのであった。


「……グランパとグランマ、私とネフェで随分と態度が違う気がするんだけど……」


拗ねるガルミアに抱き締められながら、実鳥は優しく嗜めた。


「そりゃあね、怯えもせずに元気一杯に突撃してきた成人女性と小動物的に緊張している美少女では印象が違って当然でしょ。それにね、前に言ったでしょ?こっちの世界には魔族みたいな肌の色した人はいないって。驚くし怖がられても当然の反応かもしれないって」


「……そうなんだ。ママの両親だから、平気なんだと思ってた……なんか、悲しいかも……」


ガルミアは意気消沈し、実鳥を抱き締める腕から力が抜けた。解放された実鳥はガルミアの隣に座ると、自分の胸にガルミアを抱き寄せて慰めた。


「大丈夫よガルミア。お義父さんもお母さんも、初めて魔族を見たから少し驚いただけよ。これから何度だって会えるんだから直に慣れちゃうわよ。それが出来る時間を、私達は取り戻せたんだから、ね」


実鳥のその姿は、紛れもなく娘を慈しむ母の姿であった。


「……どりりんのママみが半端ない」


「うん。ハッキリ言って、お父さんよりよっぽど立派に〝親〟やってるよね。厳しいときは厳しいし」


「非常にとぅとぅいのであります!それに比べて……ま、すっかり騙されているのはいい気味ではありますが」


桜がニヤリと口を歪めると、それを認めた翼と希も薄ら嗤いを浮かべた。


「そうだネフェちゃん。おとーさん達に今日の収穫ご馳走しないとだよ!」


「お近づきお近づき!無料飯食いじゃないこと証明しなきゃ!お肉をキッチンに運んでくれる?」


「はい!お料理もお手伝いするのです!」


それからほんの数秒後。敏郎と美鈴は本日何度目かの驚きで言葉を失っていた。今度は、もうちょっとでガルミアと同じ人種と思われそうな顔面蒼白で。


「光お姉さん、調理台に置けばいいですか?」


「あら……今日は一際大きいわね。ええ、それでいいわよ」


「はい!それじゃ、潰して壊さないようにゆっくりと……」


ネフェは肉の詰まった麻袋をキッチンの調理台へと慎重におろした。その麻袋の大きさ……否、巨大さたるや……。


「美鈴……目の錯覚かな?ネフェちゃんが軽々と持ち上げていた袋なんだけど……私には関取ぐらいに見えるんだが……?」


「多分、錯覚じゃないわ。私にも、ネフェちゃんの数倍体積があるように見えるもの……」


体重三十キロに満たない外見の少女が、みっちり肉の詰まった袋を涼しい顔で背負わず頭の上に持ち上げて軽々と運んで行く。もしや、中身は軽いのか?そう疑いの目を向ける敏郎であったが、光が鋏で袋を切り開き、布に包まれた肉を重そうに持ち上げたのを見て、直ぐにその考えを放棄したのであった。


「これはちょっと……食べきれないし冷蔵庫にも入りきらないわね。……ガルミアさん!お仲間に差し入れ作るから、明日持って帰ってくれる?」


「いいの!?皆、ヒカリの料理が大好きだから喜ぶよ!そうだ、初めて作ってくれた……肉団子!あれなんかチビ達がまた食いたいって言ってた!」


「判ったわ。これだけお肉があったら千個でも作れそうね……ミンチにするのも時間が掛かりそう……」


「……さて、狩りの汗を流すでありますか」


「返り血も浴びたし、隅から隅まで洗いっこしよう希」


「そうそう、臭いが染み着いたら大変!」


尤もらしい理由をつけて、手伝いから逃れようとする双子と桜であったが、お姉ちゃんは逃さない!


「そうねぇ~。料理は清潔な状態でやらないと駄目だってこと判ってくれててお姉ちゃん嬉しいわ~。お風呂は夕飯までじっくり入ってていいからね~。その後、その腰の飾りじゃない刃物でお肉を、叩いて、叩いて、叩いてくれるのよねぇ~?」


「「「……ら、了解(らじゃ)」」」


普段料理をしない三人であったが、光の笑顔の圧からは逃れられなかった。滅多に怒らない人間が笑顔で掛けてくる圧力は、日常的に怒りを撒き散らす者の怒号より、余程恐ろしいのである。そして、怒った光はもっと恐ろしい……。


「素直で宜しい。自分で狩ってきた獲物ぐらい、自分で料理できなきゃね~。万にひとつ、剣とはぐれる可能性だってあるんだもの、簡単な料理ぐらい覚えて貰わないと!」


光にも、そんな考えがあってのことであった。本当は狩りなんて危険なことをさせたくもないのだが……桜達三人が実戦で動けていたのを光は見ていた。それが、紙一重で剣の命を救ったのも。


(ならば、強くなろうとするのを止められる訳がない)


だから、光は妹達が自ら危険な世界に挑むことを否定していない。本音を言えば止めさせたいが、それをしない以上、自分なりの鍛え方で、妹達を強くしようと決心したのである。


そして、いつも通りに実鳥と小町が料理の手伝いに加わり、実鳥の手伝いにガルミアも加わり、美鈴も久々に娘達との料理を楽しみ、料理をさせてもらえない敏郎と梓がその光景を尊そうに眺めてながら燕の子守りをしている中、聖家最後の一人が帰宅した。


「ただいま~って、なんか騒がしいな……母さん達が帰って来たからか……?あれ?ガルミア!」


「ハルカ!」


顔を会わせた瞬間にハイタッチ。からのハグ。


「なんだよ~。ガルミアが来てるって知ってたら急いで帰って来たのにさ~」


「こっちじゃ親しい仲でサプライズ?するのが普通なんだろう?ハルカのその顔が見たかったんだ!」


とっても仲良しで気さくな様子であるが、それは両親にも見せない笑顔だったのである。敏郎も美鈴も知る限り、遥に友達は一人もいなかった。なのに、巫山戯あえる相手が出来ていたことに、なんとも言えない安堵を感じざるを得なかった。


「……まあ、訳が判らない事ばかりだったけど、娘が皆元気なんだし、我が家にとっては、悪くなかったと思おうか……」


そして、自分がいない間に子供達が精神的に一気に成長していたことに、一抹の寂しさを感じる敏郎なのであった……。





次話で両親の帰国編は終了します。その次は……連載序盤からの伏線回収……夏のイベント編に入ろうと思います。一体、何人がコスプレすることになるのか?そして、どんなコスをするのか……

はよ、リアルイベント開催してほしぃなあ。

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