↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/241

183話目 プールで遊んだけど

今回でプール編終了。

「南子さん!しっかりして下さい!」


「……あれ?綺羅ちゃん?ここは……プール?いけません、暑さにやられて幻でも見てしまったみたいね。会長があんな……男子を誘惑するのが目的とでもいわんばかりの頭の悪いギャルみたいな水着を着ている訳が……」


「それはギャルに対する偏見じゃないかしら?大体、ロリコンだったら寧ろスクール水着な貴女の方に欲情するわよ」


「会長!?現実ぅ!?」


南子驚愕!誰にも分け隔てなく優しく、成績優秀な優等生(一部教師に対して水面下で反抗的)で、校則違反とは無縁で清廉潔白な生徒会長様が、一緒にプールに来た誰よりも……露出度の高い水着姿で堂々と腕組して、胸元を強調しているかの様に立っていたのだから!


「……私がビキニを着てるのがそんなに不満かしら?そりゃ、こうまでしても見る価値もない貧相な胸ですけど!」


中学生三人組は心の声で突っ込みを入れた。


(それで貧相とか言ったら光さんが泣くよ!)


(余裕で私より膨らんでるって!)


(小学生としては、いい発育しとるんけどなぁ)


小町は身長こそ140㎝程ではあるものの、小学六年生女子の平均値以上に胸は出ているし、腰も細く括れている。つまり、スタイルは大人の女性にもひけをとらないのである。しかも、普段は三つ編みにしている後ろ髪を解き、シュシュで後頭部に纏めているので、ウェーブがかった長い黒髪がアダルトな雰囲気まで醸し出していた。


「何を言ってるんですか会長!会長の麗しさは全人類に知らしめるべき価値があります!いえ!見るだけでも同等の対価を支払うべきです!そして、そんな対価はこの世に存在しないので誰にも見せるべきではありません!」


「……どっちなのよ?」


南子の中で、小町の美しさを全世界が褒め称えて当然だとする敬愛の念と、邪なケダモノから守る為に存在を隠さなければならないと相反する二つの思いがせめぎ会う!


「ま、どーでもいいわ。それよりさっさと水に浸かりましょう。プールサイドで駄弁ってばかりじゃ、それこそナンパされるの目的に来ているみたいに見られそうだし」


熱弁を奮う南子を横目に、小町は悠々と水の流れる環状プールへと歩を進めた。


「あ、会長待って下さい!私も一緒に」


綺羅が小町を追い駆け、一行が続々と行列を成す。


「小町ちゃんの言う通りだな。ま、私なんかが攻略対象として見られるとは思えね~んだけど」


「せっちゃんは普通に可愛いって!それに、ナンパなんかされたって良いことないよ……?」


「そういやみっちゃん。先月お姉さん達と海行ったとき、小町ちゃんとナンパ男に声掛けられて散々やったゆうとったっけ?」


「何ですって!?実鳥さん、詳しく!」


主に散々だったのは小町と実鳥ではなく、ナンパ男達の方であったが。


南子が強く食いつき、夏彩と星和も改めて聞きたいとせがむので、流れるプールを漂いながらの話題は実鳥がメインとなり、小町が補足を入れる形で海での一夏の思い出語りとなっていた。


「イケメン兄さん、容赦ねぇ……」


「ウイング様とホープ様のおみ足に挟まれて昇天なんて、天誅やのうて天恵としか思えんけどなぁ。その男、一生御二人の脚の感触忘れられへんやろなぁ」


「砂浜とはいえ、脳天を叩きつけられてるんですよね?痛くて最悪だとしか思えないんですが!?」


「南子さん、ピュアですぅ」


「……綺羅が思ってた程幼くなかった……」


「あはは……まあ今日は私達だけだし、なるべく皆で行動して、それでも絡まれたら一目散に逃げなきゃだけどね」


「「みっちゃん、それフラグ」」


「いや……綺羅ちゃんに南子ちゃんもいるし、小学生連れをナンパするような頭の弱い人……いないと信じたいなぁ」


他人を魅了してやまない聖家遺伝子の猛威を幾度も目の当たりにしている実鳥は、自身の発言が虚しい気休めに過ぎないと薄々感じながらも、口にせずにはいられなかった。


「……ちょっと、虫除けしとこうかな」


実鳥はそう呟くなり、頭までプールに潜った。そして浮上すると水浸しになった前髪をかきあげ、額を露にした。


「「あ……」」


思わず驚きの声を漏らしたのは南子と綺羅。実鳥の額の左側、常に前髪で隠されていたそこには、完治はしているものの、痛ましい出来事があったのだと確信させる傷痕があったから。


「あ、ごめんね?驚かせちゃったかな?小さかった頃……ちょっとね」


笑顔で誤魔化そうとする実鳥であったが、事前説明無しに、自分達とそう歳の離れていない少女の、それも顔に遺る痣を見せつけられる格好となったのだから、動揺を隠せる筈もなかった。


「実鳥義姉さん、軽率」


「いや、いきなりはビビって当然」


「せやでみっちゃん。額の左に痣があるなんて逆に羨ましい限りやん」


「なっちゃん。コレ火傷の痕じゃないって説明したよね?」


若干一名ズレた感想であったが、それも場の空気を和ませようとした気配りの結果だと解釈して頂きたい。決して、ヲタの業故に漏れ出してしまった本音だと思わないで頂きたい……!


「あの……会長、実鳥さんの痣って……」


夏彩のボケから実鳥のやんわりとした突っ込みが入ることで中学生がトリオ漫才的なやり取りを始めた中、南子と綺羅は小町に囁くように説明を求めた。痣のある本人が平然としてはいるものの、痣があるのは額の端とはいえ女の子の顔である。デリケートな問題なので直接訊ねられる程、二人は図々しい性格をしてはいなかったのである。


「あれね……元・父親の暴力らしいわ。実鳥義姉さんはもう過去として乗り越えちゃったみたいだから、訊けば詳しく答えてもくれるでしょうけど……正直モヤるだけだから聞かない方がいいと思うわよ」


実際、小町(聖家姉妹)は異世界からの帰還後、実鳥の口から直接、前世と今生の過去にあった出来事を聞いて、行き場のない怒りにうち震えたのである。翼と希が電子機器を駆使したり、剣が日本中に独自の情報網を持つ裏組織に依頼して実鳥の元・父親の居場所を特定しようとしているのは小町の預かり知らぬところである。


「そうか……実鳥さんが臆病だったの、そんな理由があったんですね。中学に入って何があったのか、ホントに印象変わりましたよね……」


「私はそれよりも、会長と実鳥さんが本当の姉妹じゃなかったのが驚きでした。二人とも、余所余所しい感じがなかったから」


「綺羅は知らなかったんだ?隠してるつもりはなかったんだけど……学年が二つも違えばそんなものなのかしら?噂にもならなかったの?」


「噂ではありませんけど、美少女姉妹だって評判は凄かったですよ?ハッキリした物言いで凜としている会長に、控え目で小動物的に儚げなお姉さん。みたいな評価で」


「面と向かって言われると、どんな顔すればいいか困るわね……」


「照れてる表情……素敵です会長!眼福です!」


「……みなみなはどうして、照れずにそんな台詞が言えるのかしら?おだてても何も出ないわよ?」


「見返りはいりません!私は只々心のままに、会長の素晴らしさを称えなければいられないだけですので!」


「あ、そう……」


とびきりの恍惚スマイルで力説する南子に、小町は何も言い返す気力が沸かなかった。


「生徒会内部で不祥事案件発生の可能性……私が何とかしないと!」


自分の恋愛に興味ない生徒会長に、その会長に過剰な敬愛を捧げる先輩。歯車が一つズレたら、どうはまってしまうか解らない現状を目にして、「生徒会の風紀は私が守らないと!」と生徒会最年少の綺羅ちゃんは決意を固めたのであった。




六人が流れるプールから上がり、別のプールへ移動していると、


「あれ?小町ちゃん。あれ、晃馬くんじゃない?」


実鳥が指差す先には、キョロキョロしながらプールサイドを歩く少年がいた。


「確かにウチの副会長ね。本当に来たんだ」


「会長……かなり酷いこと言ってますよ」


「いや……女子六人に男子一人よ?小六のくせに、どんな鋼のメンタルしてるのよ……それとも、考えなしなの?ここで同級生に目撃でもされたら、女タラシの烙印を押されるわよアイツ」


だからこそ、小町は晃馬をハブろうとしたのである。それは小町なりの気遣いであったのだが……


「へぇ~、あの子が副会長くん?ほぅほぅ中々の美少年じゃん。けっこうお姉様方の熱視線を集めてんじゃん?」


「せっちゃん、そんな値踏みするような真似はみっともな……アレ?なっちゃんは?あれぇ!?」


一緒に歩いていた筈の夏彩が忽然と姿を消していたことに気付き、辺りを見回した一瞬、その姿を見付けた実鳥は驚嘆の声を上げた。実鳥の視界に、晃馬の背後に忍び寄る夏彩の姿があったから!


「あの馬鹿!男子にセクハラしたらマジ案件だぞ!」


「ど、どうしよう……晃馬くんが叫んじゃったら、洒落で済まされないよね?」


小町と星和の脳裏に、痴女行為で補導されてしまう夏彩の姿が過る。そして、同行者として行為を阻止出来なかった責任を問われる自分達の姿も……


「仕方ないな……実鳥義姉さん、ボールを上に放って。それと……肩借りるね!」


「え!?ほ、放ればいいの?」


実鳥は小町に言われた通り、抱えていたビーチボールを放り上げた。刹那――肩に衝撃的な重量感を覚える。


「え!?」


「嘘っ!」


「……エクセレントですっ!」


ボンッ!と、爆発を思わせるような轟音が辺りに響く。そして――


「ぶふぉお!?」


バンッ!と、激しい衝突音と、呻き声が迸った。


「あや?これはみっちゃんのビーチボール?お~い。ダイジョブかぁ?少年~?」


転がるビーチボールを拾い上げ、夏彩はビーチボールに顔面を強襲されて倒れ付した少年――晃馬を心配するように覗きこんだ。


「い……つつ……一体、何が……?」


取り敢えず、気を失っている訳でもなく、大丈夫なようだ。


「なっちゃんじゃなくて、何の罪もない少年を狙うとか……小町ちゃんえげつねぇ……」


晃馬を襲ったビーチボールは、小町が蹴り当てたのである。


実鳥の肩を借りて前宙しながら身体を捻り、元祖スポコンサッカー漫画の主人公さながらのオーバーヘッドキックで……全身を弓のように撓らせ、高位置から蹴り落とされたビーチボールは、夏彩が悪戯をする間も与えぬ速度で狙い誤らず、晃馬をヘッドショットしたのであった。そして……


「実鳥義姉さんの友達を、傷物にする訳にはいかなかったので」


恐ろしいことに、しれっとそう答えたのである。更に……


「山上ごっめ~ん!手元が狂ったわ~!」


晃馬にそう呼び掛け、平然と誤魔化したのである。手元なんて狂ってないのに!超正確な足元だったのに!朗らかな笑顔で加害者が被害者に近づいて行く!


「小町ちゃんパねぇ。あんな雑技団みたいな動きが出来て、どうして自己評価が低いんだよ?」


「それは比較(以下略)だからだよ。困った事に、実のお姉さんであんな動きが出来ないのは梓さんだけだから……」


「それより……副会長が気の毒です……。悪いことしてないのに」


綺羅が極めて常識的に晃馬に同情すると、南子は「それは違う」と言わんばかりに冷めた目で晃馬を見据えていた。


「それは……どうでしょうか?絶対、下心はある筈です!あれは、懲罰の前倒しをしたに過ぎません!」


何故か確信めいた断言をする南子。実鳥・星和・綺羅の三人は、訝しそうにしながら、言葉の真意を確かめんと、晃馬と小町のやり取りを注視し始めた。


「え……ひ、聖か?」


「は?学校じゃ毎日のように顔を付き合わせてるのに、他の誰に見えるってのよ?」


「いや……だ、だって……」


晃馬は顔を真っ赤にしている。ビーチボールの直撃を受けた所為もあるかもしれないが……小町から目を離せないでいるのが最も大きな要因である!


「な、何よジロジロ見て……お前みたいな貧相な身体で、身の程知らずな水着を選ぶなとでも言いたい訳?」


「そ、そんなこと思ってないよ!大胆だな……とは思ったけど」


「大胆なのはアンタの方じゃない?まさか、友達の一人も連れて来ないとはね。そんなに女子を独り占めにしたかった?」


「いや……その……」



口ごもる晃馬に、怪訝な表情を浮かべる小町。


「もう我慢出来ません!これ以上、二人きりになんてさせてられません」


端からは甘酸っぱく見える会話に耐えられず、南子は突撃していった。


それを見ている外野達は……


「あれなぁ、他の男(同級生)に、小町ちゃんの水着姿を見せたくないゆう態度やんなぁ?」


「そう思いますよね!副会長って、会長によく雑な扱いされてるのに、会長を優しく見守っている感じがするんです!これって恋ですよね!?」


「……うん。晃馬くんは絶対小町ちゃんに好意があるよね。でも、小町ちゃんは全然気付いてなさそう……剣さん以上に鈍感なのかも」


「みっちゃんも大概なんだけど……っと、にしても小町ちゃんが鈍感なのは確かか。三角形だよ。トライアングラーだよ。双方向に揺れてるのがいない歪な三角関係だよ」


この日、小町の気持ちを優先してあげたい実鳥と、生徒会の安寧を維持したい綺羅の方針が合致して、小町と晃馬が二人きりになるようなシチュエーションは尽く阻止された。


その過程で美少年(晃馬)を存分に観察(おさわり込み)し、大量にスケッチも出来て夏彩はホクホクとなり……晃馬は何か大切な物を失ったような暗い顔をしたりしていたが……その理由を小町が全然察してくれなかったので、更に暗くなったりしていた。


それを「ざまぁ」と見下す南子を見ていた綺羅は……


「ホントに私がしっかりしないと!こうなったら……来年度の生徒会長に、私はなる!」


みたいな決意をしたのであった。




実鳥の額の痣ですが、投稿を始めた二年前には鬼滅が現在の様なビッグタイトルになるとは予想しておらず、全然意識していませんでした……

今回はジャ○プネタ多目だったかな……

次回は、同時間軸での異世界サイドの話を……

桜、冒険者になる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。