181話目 プールへ行こう
脱線して一話で終わらなかった……
八月初頭、気温が体温以上に上昇している猛暑日に、実鳥は友人の星和と夏彩。そして義妹の小町に、小町の生徒会メンバーである五年生のみなみなこと南子ちゃんと、四年生の綺羅ちゃんの六人で屋外型のレジャープールへ行く事となった。
発端は夏彩からの電話であった。
「みっちゃん……細マッチョなイケメンと、スレンダーな小麦肌ギャルの裸体が見たいんや。合法的に」
「つまり、プールに行って作品作りの取材がしたいんだね?」
「流石はみっちゃん。ウチの言葉の裏をよお汲んでくれはるわ。そこで是非!ウチが入場代持つから、お姉さんや剣お兄さんも連れてきて欲しいんやけども……」
「それは無理かなあ。剣さんは朝からエルヴィアスに行っちゃてるから。今日は桜ちゃんとネフェちゃんも一緒に。お姉ちゃんはバイト休みなんだけど……一人でどっかに行っちゃった」
「なんやて!?あわよくばと思ったんやけど一足遅かったんか……他に誰か暇しておらん?あ、でも光お姉さんと双子のお姉さんはパスで」
「どうしてなのかな?」
「ハードル高いわ。ウチ、一応中一やもん。露骨にロリ巨乳描くんも羞恥心がなぁ……妊婦萌えはウチが狙とる層には受けん思うし」
「うん。何を言ってるのか全く解りません」
「ケモ耳には一定の需要があるので、みっちゃんが前世モードで水着になってくれるんは大歓迎やけど」
「いや、あの姿でプールとかないから!目立つし騒ぎになるし……そもそもサイズの合う水着がないから!」
「せやな。お尻に尻尾穴が空いとる水着なんて売っとらん……因みに、こないだは和装やったから判らんかったけど、どんなスタイルしてらっしゃるん?」
「なっちゃん。このセクハラはいつまで続くのでしょうか?基本受身で我慢強い私ですが、限界はあるのですけど……」
「つい調子のってもうてごめんなぁ。ほな本題に戻ろか?妹ちゃんは暇しとらんの?」
「燕はこれから光さんと買い物に出ちゃうからなぁ……小町ちゃんは一応家にいるけど……どうしてもって言うなら説得はしてみるけど、期待し」
「どうしても!」
「ないで……早いよ!」
「ほな、どちらにせよ集合は午後一時に駅のバス乗り場でよろしゅう~。また後で~」
通話を終えた実鳥は、自室を出るとリビングルームへ赴き、ドアの隙間からこっそり中の様子を伺った。
「だからね、低学年向きに判りやすくはしながらも、あまり幼稚だったりパクりなデザインにはしたくないのよ」
「やっぱり……全校生徒に公募してみましょうか?」
「私達で一時審査してからアンケートで決定の流れにします?」
聖家のリビングでは開礼小学校生徒会メンバーが集まり会議をしていた。内容は二学期末に行われる学校祭について。現在の議題は学校祭にマスコットキャラを取り入れるかどうからしい。
学校祭が終ると直ぐに、次期生徒会長選挙となる。つまり、学校祭が実質的に現生徒会が執行する最後の一大イベントで集大成でもある。なので少しでも盛り上げようと、細部にまで拘り、皆で知恵を絞っているのであった。
「……小町ちゃ~ん。議論が白熱しているみたいだけど、ちょっといいかな?」
実鳥は申し訳なさそうにドアに半身を隠して遠慮がちに小町へ問い掛けた。
「実鳥義姉さん?どうしたの?」
「友達からプールに行こうって誘われたんだけど、小町ちゃんもどうかなって……」
「その友達って、こないだ会った二人だよね?う~ん……」
眉毛をへの字に曲げて思案する小町。あまり乗り気でないのは、実鳥の友達である夏彩と星和と既に顔見知りとなっているからである。特に、夏彩には桜に類似している趣味を感じているので、少なからず……大半、やましい目的があるように思えて仕方ないからであった。そしてその予想は当たっている。
小町が黙り込んでしまった為、会議は中断されて沈黙が場を包む。姉妹の会話に無遠慮に口出しする訳にもゆかず、生徒会メンバーは少々居心地の悪さにもどかしそうにしている。
それを、人目を気にする事に長けている実鳥が気付かない筈がなかった。
「会議の邪魔しちゃってごめんね?その、良かったら皆も一緒にどうかな?プールの入場料なら、お姉さん達が出してあげられるんだけど……」
正確には夏彩持ちである。が、見ず知らずのお姉さんが金銭的負担をしてくれるだなんて美味しい話、裏があると思われても仕方ないと判断した実鳥の方便であった。
「えっと……私は、会長が嫌でなければ、お伴させて頂きたいのですけれど」
発言の機会を得て、南子が参加の意思を示した。続いて、綺羅もおずおずと小さく挙手し、
「その……私も、たまには生徒会の仕事抜きで、会長達と遊んでみたいかなって……」
部下で後輩な二人の意見が纏まっているなら、小町にそれを無下にする正当な理由は……実鳥の友人が特殊な趣味人とゆう事だけである。しかし、それをここで説明するのは実鳥の友人を蔑む真似をするように思え、小町には出来なかった。
なので、何があろうとも後輩達は自分が守る!そう決意と覚悟をして了承したのであった。
「気分転換も必要かもね。それじゃ一旦解散して、各自支度して集合……と、但し女子のみ」
「いや、一人だけハブられるとか意味が解らない!」
声を荒げて抗議するのは、副会長の晃馬。生徒会メンバー唯一の男子。ここまで台詞はありませんが、ちゃんといました。
「いや……逆に聞きたいんだけど、来たいの?」
「一人だけ除け者にするって、軽くイジメじゃないのかな!?生徒会長がそれでいいの!?」
「イジメどころか、アンタに気遣ってあげたつもりなんだけど……だって、女子六人の中に男子一人って……気不味くない?しかもプールなのよ?」
「なればこそ!大切な生徒会の仲間を不埒者から守らねばならないじゃないか!女子だけで行かせられるか!」
使命感に燃えている晃馬を前に、小町は深く……それはもう深い溜め息を吐いた。小町は晃馬の人柄をそこそこ周知しているつもりである。故に言葉に裏が在る訳でなく、ほぼほぼ純粋に自分達を心配してくれているのだろうとは思う。
だからこそ、同行させることに前向きになれず、一抹の不安を感じているのだが……
「分かったわよ。そこまで言うなら、勝手に現地合流すればいいわ」
小町の同意を得られて、晃馬は満足そうに爽やかな美少年スマイルを浮かべて応えた。その裏で、小町は冷淡な表情で南子と綺羅に目配せし、
「私、一応止めたわよね?」
どうゆう意味か判らず、南子と綺羅は怪訝な顔をしながらも黙って頷いた。その意味が解ったのは数時間後のことである。
待ち合わせ場所のバス乗り場に小町と実鳥が到着すると、既に星和と夏彩が待っていた。
「あ、みっちゃ~ん。小町ちゃんも来てくれてありがとさん~」
星和は半袖の白いトップスにハーフボトムの青いジーンズにサンダルと、カジュアルで涼しげな装いであったが、夏彩は……その名に反して涼やかさの欠片もない小豆色のジャージズボンに、白地のTシャツに様々な傷痕や手術痕に鮮やかな血痕がプリントされている〝痛そうなシャツ〟を着ていた。
「……一緒に行動したくない……」
「なっちゃん。その痛シャツは意味が違う……」
「だよね。どうしても妙な変化球投げたがるんだよコイツは」
フレンズとその義妹による突っ込みの嵐。しかし夏彩は炎天下に涼しく惚けた顔で答えた。
「いや、コレを痛シャツとして売っとる店とデザイナーのセンスに脱帽してもうてな。多くの人の目に触れる機会を逃しては、今後着てあげられるチャンスがないかとなぁ?」
「多分、将来のアンタは今の自分のセンスを疑うだろうけどな。私のスマホのメモリーには、なっちゃんが将来躍起になって葬りたくなりそうなデータが既にてんこ盛りだよ」
「そうか……つまりウチが黒歴史を封印するには、生き証人である親友をスマホごと闇に葬らんとあかんねんな。……悲しいことや」
「いや、恥を抱えて強く生きてよ。いくら親友の為でも、羞恥心や自尊心の代償に命はやれんわ」
「そうだよなっちゃん。恥と引き換えにしていいほど、大事な人の命って軽くないからね」
「実鳥義姉さんが言うと、重みが違ってくるよ」
義娘を守る為に、いっぺん死んでる人の言うことなので、誰も茶化せずに場が鎮まってしまった。
「えと……そんな深刻にならないでよ!ねえ!」
「「「無理!」」」
三人見事に声が揃った。実鳥は世間一般的な意見を述べただけのつもりだったのだが「ズレてるの私の方なのかな?」みたいに感じ、若干肩身の狭い思いをしたのだった。
「しかし……なっちゃんは身なりを少しは気にするべきじゃないかと私は思うな。みっちゃん達のファッションを見習えよ。これから行く場所はリア充だらけだぞ。せめて水着はマトモなんだろうな?」
実鳥の心情を察し、星和が話題転換を測った。実鳥は清楚な薄い黄緑系ノースリーブのワンピース。小町は黒のタンクトップに濃紺のホットパンツと活動的なスタイルのファッションである。二人とも軽くではあるがメイクをしてアクセサリーも身に着けているので、星和にはガールズファッション雑誌にモデルとして載っていても違和感が無いように思え、対極的存在な夏彩のコーデとは言い難い服装に文句の一つも出てしまうのであった。
「水着はまぁ、見てのお楽しみやん?大丈夫やて、学校指定の水着なんて手抜きはしとらんから」
「いや、なっちゃんの貧相な水着姿は誰も楽しみにはしてない」
割と酷い事を言っているが、気心の知れた者同士の普段と変わらぬ会話である。
「なんか……漫才見てる気分」
「とても仲良しでいいよねぇ」
そうこうしていると、南子と綺羅も到着した。
「な……なんですか会長!その格好は!?」
「え?みなみなどうしたのよ?」
「露出度が高いです!大胆過ぎます!」
南子が驚くのも無理はなかった。普段の小町は生徒会長としてのイメージを優先して品行方正な服装で通学しているので、夏でも上は半袖。スカートは膝下まで丈のある物を着用している。腕と脚が完全に露出している現在の姿は、露出度的に学校指定の水着となんら変わらないのである。
「そうかな?プライベートなんだしよくない?」
「いえ!会長の美しい素肌を無償で衆目に晒すなんて勿体無い!特に、男になんて見せたら駄目です!奴等はケダモノです!」
「「「「「ん?」」」」」
五人が同時に首を傾げた。
「ちょい、集合」
夏彩の号令で、南子を除く五人が円陣を組んだ。
「ねえ小町ちゃん。綺羅ちゃん。南子ちゃんって、ああゆう感じだったけ?」
「小町会長のこと、とても尊敬しているのはヒシヒシと感じていましたけど……」
「素直……とゆうか、従順だなあって気にはしてたんだけど」
「果たして、自覚があるのかどうか……小町ちゃん「御姉様」とか呼ばれたら本物だからな?」
「小五にして百合っ気あるかぁ……末恐ろしい娘やんなぁ。……実にオモロイ取材になりそうや」
こうして、一筋縄ではいきそうにない夏彩のプール取材は始まるのであった。
プールに行くまでのお話しでした。
次回は水着回(但しJCとJSのみのロリ水着回)!
晃馬くんは、憐れな贄となってしまうのか?
みなみなちゃんは、小町の義妹になってしまうのか?
そしてプールは夏彩の鼻血で紅く染まる?
……みたいな感じになるかもしれません。




