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171話目 燕のバースデー 二次会へ行こう

主に移動中のグダグタ会話です。

水族館の見学を終え、一行は電車で次の目的地へと移動していた。


「昨夜からの寝不足に加えて、真夏日の熱気。そりゃ、幼児の無尽蔵な体力でも尽きるってもんだよねぇ」


「都合よく寝入ってくれたもんだ。お陰で非常手段を使わずに済んだからな」


燕は現在、剣の背中でスヤスヤおやすみタイムである。きっと、夢の中でペンギンさん達と遊んでいるに違いない。


「……兄さん、非常手段って」


「……魔法で眠らせる、とか?」


剣は小町から視線どころか顔を反らした。気分は刑事に取り調べされる容疑者である。


「こないだガルミアさんにやったやつ?魔法が兄さんにとって使えて当然なものだってのは判るけど……頼り過ぎはいくないと思う」


「まあ、使わずに済んだんだから、そう責めるなよ…それに、あん時のガルミアは精神的に揺さぶりまくった後だったから簡単に効いたけど、燕に上手く効くかどうか、ぶっつけ本番になるとこだったし、俺もやらずにすんで良かったと思ってんだよ。少量の魔力なら問題無いけど、本来の魔力を操作する加減が掴みきれていないからなぁ」


「それって……もし下手してたら、どうなってたの?」


「そうだなぁ……対象範囲が拡大して、他のお客や動物にも効果が及んだりしたかもな。泳いでたペンギンなんかも眠ってそのまま沈んだり、水槽の上から餌を撒いてた飼育員が転落したり……」


地獄絵図な惨劇が起きていたかもしれない。


「それやってたら、燕は一生兄さんを許さなかったでしょうね。マジで」


「だから良かったって言ったろ?正直、燕に嫌われたら生きる気力を失うからなぁ……」


「またナチュラルにシスコン発言するし。ま、気持ちは判るけど。そんな羽目になったら、私だって落ち込むだろうし」


燕の寝顔を眺めつつ、小町は慈愛に満ちた笑みを浮かべた。


「満足そうに眠ってるなぁ……でも、まさか本当にペンギン以外見ずに終わっちゃうとは思わなかったけど。後で文句言ったりしないかな?」


「ん~……言うとしたら多分、他のを見れなかった事より、もっとペンギンを見ていたかったとかじゃねぇかな?」


「次の機会には、水族館の普通の楽しみ方を教育する必要があるね。もっと、色んな魚を一緒に楽しみたかったよ……」


「その点、ネフェたんは初めての水族館を堪能してたよね。今も純真で純朴なお子様みたいに、車窓からの眺めを楽しんでるし」


梓の言葉通り、ネフェは電車の座席に、窓側を向いて正座で座って流れ行く景色を物珍しそうに眺めていた。とても御行儀よく、ちゃんと履き物は脱いで床に揃えている。


ネフェの両サイドには翼と希が座り、ネフェの質問や疑問に楽しそうに答えていた。


「なりゆきってのもあるけど、翼と希が率先して面倒見てくれてるのは意外だな。まあ、ペットを可愛がってるのと似たような感覚なのかもしれないが」


実を言えば、剣自身ネフェに対する感情はペットに対するそれに近い気がしていた。言葉にしてしまえば「え?兄さん何を言ってんの?最低なんですけど?」とか小町に言われてしまいそうなので空気を読んで口にはしなかったが。


一応、ネフェを可愛らしくは思っている。好感を抱いているかを問われれば否定しない。だが、なりゆき上の浅い付き合いであるので姉妹と同列にまで想えないのは否めず、かと言って友人かと考えるには明確な上下関係が既に構築されてしまい……


結論、愛犬(こだち)や家のにゃんこ達と同等以下。現状それがネフェに対する剣の位置づけなのであった。


「ペット……まぁ、無関心よりかはマシだけど。それから、今は夏休みだからいいとして、九月になったらどうするか考えてるの?学校とか通わすの?」


九月になれば当然、二学期が始まるので、誰もネフェの世話をしていられない。無論、その頃には敏郎と美鈴も帰って来てはいるだろうが、その世話を押し付けるのかと、小町は暗に問うたのであった。


「これから一月で、どれだけ常識を学べるかによるなぁ。本人に行ってみたい気持ちがあるなら、保護者の義務として教育を受ける権利を侵害する訳にはいかないし」


「いや、常識的な模範解答されても……そもそも戸籍も国籍もなければ基本的人権すら怪しいのに。どうやって入学手続きするってのよ?」


「あ、その辺りの証明書類とかは伝を頼ってなんとかなってるから」


「なんとかなってる!?ど、どうやって?」


「財力と権力を持ってる知り合いに、少々。まあ、深く考えるな。阿○博士がコ○ン君や灰○さんの入学手続きをどうやったかなんて作中で全然説明されていないし、読者だってそこを突いて作品の善し悪しを語りはしないだろ?作中の登場人物にさえ怪しまれなければ問題ないんだ。よって、現実でも他人にバレなければ問題ない!」


「作中でも平○君が突っ込むぺき問題だと思うけどね!」


「ま、暗黙の了解って奴さ。細かい設定の矛盾なんて気にしていたら、作品の本質は楽しめないって話」


「……言い訳染みてるなぁ」


言い訳ですが、なにか?


「ま、いいよ。それは置いといて……次に何処行くかまだ聞いてないんだけど?光姉さんに聞いてもはぐらかされるし……」


因みに光は少し離れた優先席に座り、隣に桜を座らせている。メイドに徹していたとはいえ、三時間近く屋外で立ちっぱなしだったので、強制的に休憩させているのだ。傍目には上品な若奥様とメイドの構図である。そんなに混んではいない車内であるが、美しすぎる女主人と侍従は、ネフェ&双子組と同様にまばらな乗客の興味を大いに引いていた。


さておき、釈然としない様子の小町に、乾いた微笑みを浮かべた実鳥が声をかけた。


「小町ちゃん、まだ気付いてないんだ……」


「え?実鳥義姉さんは知ってるの?」


「私も教えて貰った訳じゃないけど……察した。多分、小町ちゃんは初めて行くお店だと思う……」


「なんで鬱な顔になるの!?変なお店じゃないよね!?中学生が入店してもおかしくないお店なんだよね!?」


「うん……お店は…楽しいし、料理の味もいいよ。お店はね……」


問題は、店員なのです……


「は、激しく不安になってきたんですけど……一体、何が待ち構えているってゆうの?」


「こまたん、その反応からして、お姉ちゃんの目論見の内なんだよ。今回の計画は全てお姉ちゃんの企画・原案だからね。お姉ちゃん以外に今日のスケジュールを把握しているのはけんちゃんだけで、私達は察しただけ。明言はされてないんだよ」


「そして、光さんが教えてくれない以上、私達の間で光さんの計画に支障を来す発言は控えなければならない。つまり、これが暗黙の了解なんだよ……」


「今、お約束的な状況なの!?ってゆか、私だけが解ってないの!?めっちゃ悔しいんですけど!」


姉の誰もが光の企てに気付いている状況で、自分だけ理解が追い付いていない……まるで、自分の感性や洞察力を鈍いと指摘されているように感じられ、小町は意地でも答を訊く訳にはいかなくなったのであった。


「……全く、姉さんはここぞで大きな悪戯するよなぁ」


「それを止めない私達も大概だけどねぇ」


「こうゆう悪戯、他人にされたら洒落じゃ済まないんですけどね……光さんにしか出来ないし、許されませんよ……」




「おかえりなさ――」


その時、ドアから入ってきた集団を認めた瞬間、猫耳美少女メイドのとびきり素敵な笑顔と思考が凍りついた。萌え萌えなポーズをしたまま、語尾に「にゃん☆」を着けるのも忘れて時の流れから置き去りにされた。


「あ、はは……なるよね。こう、なるよね……」


集団の中にいる、その猫耳美少女の実妹が憐れむように瞳からツイーッと涙を流していた。


「そのまま。一枚失礼致します」


フィギュアと化した美少女メイドを、シャッターチャンスとばかりに撮影したのは、猫耳美少女メイドに負けず劣らずの正統派美少女メイドであった。


「ん、これは確かに絶好の機会!」


「ね!横に並んでこうこう……」


もて余していそうな大きな胸を揺らす双子の美少女に耳打ちされ、白い輝きを放つ妖精のような神秘的美少女が、てくてくと歩いて凍りついた猫耳美少女メイドの横に並び、左右対称に萌え萌えなポーズをしてみせた。


「……これでいいですか?」


そう言って、はにかみ笑顔を浮かべるとカメラのシャッター音が万雷の拍手のように鳴り響いた。


「いいわ!実にいいわネフェちゃん!ハルにゃんも素晴らしい笑顔よ!」


集団で最も長身の美女が、最も年長であろうその美女が、誰よりも大人気なく嬉しそうにはしゃいで撮影していた。


「あ~……おまわりさん。犯人はお姉ちゃんです。ごめんなさい」


言葉ばかりの反省を口にし、首謀者を暴露したのは猫耳美少女メイドと同い年の少女である。美は付かない。集団の水準的に美は付かない。大事なことなので二回繰り返した。


「まぁ、その……燕が「るかねぇのおしごとしてるすがたがみたい!」って言うものだから。そしたら姉さんが「それなら抜き打ちで見に行かないと意味無いわよね!」って言い出したものだから……」


美幼女をお姫様抱っこしている美青年が、淡々と〝どうしてこうなった?〟のかを説明したが、猫耳美少女メイドの聴覚に届いているかは、かなり怪しい。


「るかねぇかぁいいの!おみみとしっぽ、とてもにあってる!」


猫耳美少女メイドがフリーズすることになった原因。その無邪気な末妹の声に正気を取り戻した遥――ハルにゃんであったが、相手は本当に悪気の無い幼女であるので、やり場の無い怒りと羞恥が入り混じった感情に、身を震わせるしかなかった……


だが、最後に駄目押しが待っていた。


「遥義姉さん……バイトで、そこまでやってたんだ……プロ意識高過ぎですよ貴女……私には、とても出来ない……尊敬しますよ。とても、真似は出来ないし、したくないけど……」


見てられないとばかりに、顔を反らし憐れみと羞恥心で表情を歪めて身震いする義妹の小町。


ハルにゃんは、がっくりと膝から崩れ落ちた!今すぐにでも、吐血して救急車で病院に搬送されてしまいたい気分になった!


だが、そんな感情とは裏腹に、ハルにゃんの鍛え抜かれた精神力は、肉体的にダメージが及ぶ前に、驚異的な回復力で持ち直してしまうのであった!


ハルにゃんは辛うじて立ち上がる気力を取り戻すと、普段の勤務中のようなキレのある動作とは比べるべくもない、潤滑油の切れた機械のようなぎこちない動きで〝29Q〟定番の御迎えポーズを取り直した。


「お…おかえりなさいませ……にゃん☆」


突然の姉妹全員(+2)の来店に、愛と怒りと悲しみの感情をない交ぜにした文句の一つも言いたいのを堪え、ハルにゃんはプロ根性で務めを果たしたのであった。


その姿に、家族から惜しみ無い拍手と、実鳥と小町からは同情の涙が手向けられた。ハルにゃんは、しとしと流れる涙を隠せなかった……






終盤、やたら美少女とゆう単語を乱用し、稚拙な文章になってしまったことをお詫びします。

大事なことなのでもう一度、梓は美少女と表現するにはいささかなのです。決して醜くはありませんが、普通に可愛くは見えるレベルです。他の姉妹がレベル高いだけなのです。

それにしても、身元証明不能な子供を小学校に入れるにはどんな手段があるのだろうか?謎


次回は二次会本番!の、ちょっと前の時間から、ハルにゃんサイドの出来事も少しやります。


そろそろ、この小説始めて二年、なのか……

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