166話目 バンド練習の休憩中
GWの連投で少し燃え尽きてました。
予告通り双子メインで、雑談回です。
開始前に、神保町方面に向かって土下座します。
「やっば……どうしちゃったのよアンタ達?」
「凄く……震えた……!」
とある音楽スタジオの一室。インディーズロックバンド〝トリオス・ジェミニィ〟が、練習を始めたところであった。
今は、慣らしに一曲を通し終えたばかり。そう、バンドのメンバー達は、異世界から帰還した翼と希の歌を、初めて聴いたのである。
「圧倒されたぞ……危うく演奏を止めてしまいそうだった」
「俺、ピックを落としかけたわ……かっこわりぃ……」
メンバーからの惜しみ無い称賛に、バンドの後発メンバーであり、年齢的にも妹な立場である翼と希は、謙遜することもなく得意気に胸を張っていた!ぽよぽよっと。
「特訓の成果です!」
「大自然で猛獣を相手に!」
「……それ、格闘家がする奴とちがう?」
双子の冗談だと思い、呆れ顔の雪華姐さんであったが、嘘偽りなき事実である。
先日、ネフェを聖家で預かる事が決まり、ロルハイト族と平和的に和解(ボコして屈服)が成立した後、双子は積極的に竜人の女性達と言葉を交わしたのである(え?男?そんなのいましたっけ?)。
そして、送別会的な盛り上がりとなり、双子は歌と踊りを披露したのである。当初、歌にのせて放出される魔力によって、容易く感受性を刺激出来ると思っていた双子であったが、角を折られたばかりで、且つ子供であったネフェと異なり、大人の竜人達は魔力耐性が高く、想定していた程は盛り上らなかった。
※あくまで双子の想定は、である。熱狂する程ではないが、皆で手拍子してくれるぐらいには盛り上がった。
想定以下の反応。これが、ウイング&ホープのプライドに火を着けてしまった。遊びから、ガチになってしまったのである!
二人が心を一つに。激しくダンスをしながらの、魔力放出を意識しつつの全力熱唱!シンクロした二人の可憐な歌声は共鳴して増幅しあい、小さな身体から放たれたとは思えない程の声量となって大気を震わせ、竜人達の魔力耐性を突き抜けて、その魂に響き渡らせた……!
結果、フィーバーし過ぎたドラゴン達を、大人しくさせる為におに~ちゃんが鉄拳制裁したのは御愛敬。
そんな喜劇染みた野外コンサートを経て、双子は歌唱による魔力放出のコツを掴んでしまったのである。既に、魔力放出方向の設定。効果範囲の限定化。物質透過のオンオフ。消費魔力の調整等がほぼ自在になっているのであった。
『あれ?俺が転生してからマトモに魔法が使えるようになるまで、どんぐらいかかったっけ……?』
とか、剣さんが思わず呟いてしまったのも御愛敬である。
以上が、密閉されたスタジオ内でありながら、バンドメンバーへの歌唱による魔力効果の影響が少なかった理由である。流石に、音が反響しやすく狭い環境であるが故、うっかり演奏を忘れさせかける程度には魔力をコントロールしきれなかったようではあったが。
「特訓の真偽は兎も角……二人の本気が感じられて……嬉しい。私も……もっと、頑張る!」
「そうですね。二人がバンドの顔であるとはいえ、妹分にばかり目立たせては先輩としては格好つきませんからね。そこの紅いのみたいに」
「あ!蒼、テメ!……いーぜ、さっきは思わず油断しちまったがよ……ウイングとホープの歌を聴いて、今の俺はバリバリ全開だっつーの!俺史上最高のギターを聴かせてやろうじゃねぇか!」
「クリムぅ~、今の、見た目二枚目中身三枚目のテンプレ熱血お馬鹿みたいな台詞だったよぉ~?いやいや、引き立て役の鏡だぞ!おねーさん笑笑だわ!」
「ちょ……雪先輩ひでーっすわ!メンバーがやる気出してんのに、茶化すとかリーダーとしてどーなんっすか!?」
「その抗議の仕方……実にいい!小者感が滲み溢れ出ている!でもステージでそのキャラ出さないでよね?一応イケメン兄弟で売ってんだからさ~」
「一応て!その路線決めたのアンタでしょうが!つか、キャラで言ったら、アンタが一番目立ってねぇからな!」
「それを言うか!人が気にしとる事を……表に出ろや坊主!」
バチバチと火花を散らすクリムとスノウ。些細な失言のやりとりから、バンド存続の危機に発展したかの雰囲気の中、
「いやあ、雪姐と紅さんのつまらない原因での口喧嘩……平和ですなあ」
「ん。これがないと練習に来た気がしない。毎度ながら、見ていてほっこり」
「毎回、本当に飽きないよな」
「似た者同士、とっても仲良し」
全然慌てる様子も、仲裁するような素振りすら見せずに、水分補給をしたり、楽器の調整をしたりして傍観していた。
クリムとスノウの喧嘩は〝トリオス・ジェミニィ〟の練習にとって毎回恒例の行事化しているのであった。
大体、スノウがクリムをからかって始まるのが恒であった。スノウがリーダーとして、場の雰囲気を和ませる為に、一番弄りやすいキャラクターをしているのがクリムであったので、いつの間にか恒例化してしまったのだが……クリムだけがそれに気付いていない行事なのである。
「まぁ、あっちの二人はほっといて……ウイングとホープ、日焼けが際どい。とゆうか、あざとエロい。よくよく見たら、ニーソじゃなくて生足じゃないの……」
「ふふ、気付かれましたかスノウ姐様!」
「我々、この夏は思いきって攻めました!」
双子のミニスカートからチラチラ覗く太股には、白と黒のコントラストが美しい絶対領域が。しかし、そこにはおみ足を覆い隠す無粋な布地は存在しない!
海に遊びに行って以来、双子は太股の日焼け痕を維持し続けていたのであった。そう……エルヴィアスでビキニアーマーを着用している時も!そうして小麦色の肌はより濃くなり、二色の肌の境界線はくっきりと……天然の美白肌をより強調して魅せているのである!
「攻め方の方向性に異常性が垣間見える……少なくとも、清純なJKには実行する勇気は無いと思う。私も無い。ほら、蒼ちゃんが直視出来なくなっちゃった……」
女性陣に背を向け、壁に向かってベースの弦を弾くブルーさん。メンバー内では口数が少なく、冷静な彼ではあるが、男子なのだから恥ずかしくなっても仕方ないじゃない!
「蒼さんのその反応、イイと思います!」
「それでこそ正常な男子!素晴らしい!」
蒼司は何を褒められているのか解らないので怪訝な表情をした。まさか、美醜感覚の異なる別世界のドラゴン達と比べられているとは夢にも思うまい。
しかし、蒼司としては心のデリケートな部分を嫐られているようで堪らない。年下の女子相手と云えど、抗議せずにはいられなかった。
「あのな……気のない男に性的な意味で見られて喜ぶなんて、世間一般じゃ痴女とかビッチだからな?」
然れど、逆効果。
「人気に繋がるのであれば、ビッチと思われようとアリ!」
「思うだけなら、人は何をしたって自由なのです!だから蒼さんが私達を晩のオカズにしていても咎めないよ?」
「す、するかアホッ!」
「いやいや、私達中学の同級生男子全員に妄想で犯されてると確信しておりますから!」
「この胸をチラ見・ガン見しない男子なんて、ほぼいなかったので。まぁ、生徒に限らずだったけどね!」
「だからといって、私達は同級生を、教師を、蔑むつもりなんて全く無い!」
「何故なら、魅力的な女子に欲情するのは男子として自然だから!本能だから!」
「そう、妄想するだけなら、その妄想を個人として楽しむ為に文章化したり絵にしたり、アイコラするのは許容範囲!」
「だけど教室で男子が集まって「なぁ、このクラスの女子なら誰とヤりたい?」みたいな下衆な会話をするのはNG!」
「それはクラス内の不特定多数の女子を不快にさせるから当然だけどね!実害出したら妄想じゃないからね!」
「まぁ、そういった男子がいたら、即座に逆襲するんだけどね!」
「大きな声で『腐の呼吸 捌百壱ノ型 暴威呪乱舞』を放ったりね!暴言には虚言で対抗!」
「いや……やり返したくなる気持ちは解るが……えげつない……」
クラス全体に聞こえるように、創作BLの主人公にされてしまった男子が一体どうなってしまったのか……蒼司は改めて双子の恐ろしさを実感したのであった。
「またまた~。蒼さんだって、ファンの腐女子に紅さんとの兄弟BL妄想のネタにされてるくらい覚悟の上でしょ?」
「いや待て……俺はアイドルでもアニメキャラでもないんだぞ?そんな覚悟をする必要は……」
「甘い!男子はそこに女子が複数いれば、自分を中心としたハーレム妄想に耽るものだが……女子は男子複数寄れば、そこに自分の存在など不要!腐海は果てしなく広がり、深淵に限りなし!」
「意味が解らん……」
解らない、と言うよりは解りたくないが蒼司の本音であった。翼と希じゃあるまいし、兄弟で、双子で、ディープに愛しあってなんぞいないのである!
……そう、声を大にして言いたかったが、どうあっても双子に口撃で勝てる気はしなかった……なので、大人しく嵐が過ぎ去る迄遣り過ごそうと決めたのだが、
「う~ん……蒼×紅か紅×蒼か、それが問題なのよね。私としては、紅ちゃんのヘタレ受けが一推しかしら?」
「月先輩!?ここで乗っかるんですか?」
「貴腐人ですので。こうゆうお話は大好物なのよ?ライブを見に来てくれる友達と、よくこの話題で盛り上がってるもの」
「知りたくなかった現実っ!」
「それで、楽しくも激しいカップリング論争が繰り広げられているのだけれど、最近主流派になりつつあるのが……剣くんも絡めた三角関係!」
「それ完全に飛び火!悪意しか感じない!」
風原姉妹の友人にとっては、剣が翼と希の兄であることは周知の事実。つまり〝トリオス・ジェミニィ〟の関係者として認識されているのである。僅かにでも接点があれば、貴腐人達の妄想はアメーバ状に際限なく、何もかもを侵食する!
「それは興味深い。月姐、そこんとこくわしく」
「その友人の中に、薄い本の作家はいる?」
「……いや待て!お前ら実の兄をネタにされた18禁のBL同人誌なんて欲しいのか!?同じバンドのメンバーとのだぞ?発想がヤバすぎて引くぞ……」
「?フィクションだからこその美しさ、あるでしょ?現実とは別物として、創作芸術は評価したい!」
「あくまでフィクションとして楽しむだけ……というか、現実の蒼さんと紅さんの性癖や恋愛観に興味ないし」
「そ、そうか……」
紅士が双子に気があったのを知っているだけあって、蒼司の胸中は複雑であった。分かっていたとはいえ、当人の口から含みなく漏れた一言であったが故に。取り敢えず、箸にも棒にも引っ掛かっていなかった紅士を想い、心の中で……泣いた。
「そ、蒼司~助けてくれ!雪先輩の言葉の暴力に心が屈しそ……って!?なんか俺よりゲッソリしてる?」
「紅士……俺は……音楽に生きるよ。音楽は、余計な事を考えずに応えてくれるから……」
紅士が雪華にやり込められている間、一人で残りの女子メンバー三人の会話相手を務めていたことで、蒼司の精神キャパは限界を迎えていた。腐快に耐えてよく頑張った!誰も感動してないけれど!
「あ、そうだ。雪姐、来月のコミ○行く?私達、桜に頼まれてファン○ルするんだけど」
「……任せて!代わりに、企業ブースの物販は頼める?」
「承知!流石は雪姐。一を聞いて十を知る感じ、最高です」
双子と月華が交わした密約が如何なるものか、賢明なる読者様にはお分かり頂けているだろう。
18歳以下のヲタが真似しない事を切に願う。
「ちょっとぉ~三人で何の秘密話してんのさ?私も交ぜれ~」
因みに、雪華さんは性癖ノーマルな清純さんであったりする。
次月、有明の逆ピラミッドに雪華の姿がなかった事から、この後雪華さんがどうなったか察して頂きたい。
時流に乗っかりました。許して下さい!
今が、今が旬だったんだよ~!
さて、話の内容としては、ブルーくんのSAN値がゴリゴリ削られてしまいました。彼は何も悪いことしていないのに……
女子三人で姦しいと言いますが、腐女子三人だと……何かいい表現ないだろうか?
腐姦しい……腐かしまし……腐華子増し!無いか……
えと、次回は雰囲気を明るく変えまして、末っ子燕ちゃんの誕生日と、ネフェちゃんの歓迎パーティー的なお話を始めようと思います。
ようやく、7月のラストエピソードだ……




