↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/241

164話目 葛乃葉さんの豪邸 前編

少し遅くなってしまいました!そして一話完結出来ませんでした!本日中にもう一回更新します!

まるで、高級クラブの一室であるかのような豪華な車内。その後部座席の、高級な革製シートに深々と腰を下ろしているのは、アロハシャツ姿の剣である。まるで、趣味の悪い金持ちのボンボンのようにふんぞりかえっている。


その隣には放明中学校指定の夏用セーラー服姿の実鳥が座り……恐縮しているように縮こまっている。


そして、二人と対面するように座っている黒スーツの女性は、葛乃葉さんちの尋姫おねーさん。剣が京都で知り合った陰陽師で剣士である。腕組みして足も組んで……とってもイライラしているようである。


「ふかふかー!むふぅー!」


「うわうわ!?外からは真っ黒だったのに透き通ってます!似てるのが外をいっぱい動いています!何ですコレ?面白ーい!」


柔らかく厚みのある毛皮が使用されたチャイルドシートに身体を沈め、その心地好さに御満悦の燕と、地球に来て初めてのお出掛けにわくわくが止まらないネフェ。余所様の車の中であるのに、遠慮も緊張も皆無である。


燕は白黒のゴスロリ風半袖ワンピース。ネフェはノースリーブの水色セーラーミニスカワンピースを着用(共に梓のコーディネート)していて、夏に相応しい涼しげで可愛らしい装いである。


美幼女と美少女が元気にはしゃいでいる微笑ましい車内であるのに、尋姫さんはその二人には目もくれず、瞑目しながら己の二の腕を人差し指でトントントントントントントントン……


イライラを募らせていた。


そこへ、剣が大欠伸をしたものだから……プチッとした。


「……言うべきこと、無いのかしら?」


「着くまで寝てていいですか?」


迷わぬ即答に、更にプチプチッ!


「貴方ねえ……陰陽師サイド(こっち)をどれだけ焦らせたと思ってんのよ!?」


修学旅行以降、聖家は葛乃葉一門によって監視&護衛対象となっていた。清央高校では、既に双子の小間使いと化している後輩三人娘もその任に就いており。桜と実鳥が通う放明中学。小町が通う開礼小にも、二学期から葛乃葉の陰陽師が生徒として転校。教員として赴任することにもなっていた。遥のバイト先である〝29Q〟の常連客として溶け込んでいる者もいる。


緊急時、聖家に五分で駆けつけられる範囲に数ヵ所、彼女達(ここテストに出ます!)は既に移り住んでもいたのである。


正に隙のない警備体制が構築された!……と思っていたら、剣と姉妹全員が異世界召喚されちゃったのである。


「嘘でしょ!?」な事態に現場は大混乱。剣達が何処に消えたのかも解らないまま、あまり友好的とは言えない組織に対して剣達が消えたことを悟らせないよう奔走し……ていたら、翌日には帰ってきたのである。


そして拍子抜けしながらも、何が起きたかこれで判明する……筈であったのに、剣からの事情説明が無かったのである。


「どうしてすぐ、連絡を寄越さなかったのかしら?」


「……優先順位的な問題?」


剣からすれば、陰陽師には特筆すべき出来事があった場合、報告する義理はあっても義務なんてないのである。それよりも先に、エルヴィアス各国の動向調査や、その為の拠点確保が優先であったのだ。


そのつもりであったのに、のっけからエルヴィアスの伝説にも残っていない希少種族(笑)なんかと関わり、少女を一人ホームステイさせる流れになってしまったりして……


更にその翌日。聖家の非常時連絡優先第一位である、叔母の響に前世から現在に到るまでの必要最低限を報告。納得も理解もしてもらえたが、猛烈に説教されたあげく、後半は酒も入ってネチネチと管を巻かれた。陰陽師への連絡をしたのはその後である。


そんな訳で、剣は精神的に疲弊したままなのであった。決して、尋姫を、陰陽師を蔑ろにしている訳ではない!


「……そうね。君にとって私達(陰陽師)ってその程度の認識でしかないのでしょうね……取るに足らない存在でしかないわよね……でもね、こっちだって苦労してんのよ……」


だが、尋姫からは剣の態度が自分を愚弄しているようにしか見えない。本当に、剣は疲れているだけなのだが……


「つ……剣さん。少し、気遣ってあげても……」


豪華すぎる車内の装丁に、座り心地の良すぎるシート。そこにストレスが駄々漏れの見知らぬエージェント的なお姉さん……自分が剣に何故同行させられているのか、簡単な説明しかされていない実鳥は、蔑ろにはされてなくとも、剣に振り回されている感のあるお姉さんに同情せざるを得なかった……


「ん……だるい。後でじいさんに説明すんだから二度手間だし」


「……ですよね~……」


基本的に無駄を省きまくる剣の性格を熟知しているので、実鳥にはそれ以上言葉を挟める余地がなかった……


それからしばらくして、葛乃葉家の別宅に到着した。


「うわ……広……」


リムジンごと門を潜った先、降車した実鳥が思わず声を漏らすほどに、広大な日本庭園が広がっていた。


(まるで、仁義なき稼業の御宅みたい……)


実鳥がそんな感想を抱くのも当然か、家屋も純和風な木造建築で、庭園に面した縁側が途方もない長さであった。


まるで公園のような庭園に、燕とネフェは大はしゃぎで、池を見つけると一目散に駆け寄っていった。


「あ!おい、ネフェ!」


「なんですか~?お兄さん」


「その池にいる魚や動物、食べるのも殺すのも禁止!池にも入っちゃ駄目!」


「剣君?貴方何を言って……」


「え~?水浴び駄目なんですか?綺麗な水ですよぉ?」


「……はい?」


予想外の返答に、尋姫のサングラスがカクンとずれた。


「水浴びはまた今度、別の場所でな~。それより、先に用事を済ませんぞ~。燕もこっちこ~い」


剣に呼ばれ、燕とネフェは渋々従い、屋敷へと入るのであった。


「……どうゆう娘なのかしら……?当事者……って話だけど……」




屋敷に入ると、玄関で着流し姿の楼明が待っていた。


「お爺様!?わざわざ出迎えられるなんて……」


「カカッ!剣殿相手に偉ぶったってどうしようもないわい!今日は招きに応じてくれて済まんの、剣殿」


「ま、今日は俺からも頼みたい事があったからな。京都から東京に来てくれただけ誠意を感じるよ」


「京都まで足を運ばせる訳にもいかんだろうしの。さて、早速話を聞かせて貰わんとだが……」


楼明は剣の連れ――実鳥達と視線を合わせた。


「お……おはようございます。義妹の実鳥です」


「ネフェです。どうも」


最後に、ぐっと視線を下げると――


「ひじりつばめです!おはようございます!」


ペッコリ九十度。元気に御辞儀をした燕に、値踏みをするような表情だった楼明の表情が……デレッと崩れた。


「そうかい。上手に挨拶出来て偉いの~。じいちゃんの名前は楼明とゆうんじゃ。よろしくの~」


「はい!よろしくです!」


一瞬で仲良しになってしまった。


「お爺様のあんな顔……孫の私でも見た覚えが……?」


尋姫が狼狽えるのを余所に、剣はさも同然と、


「ふっ……流石は燕。俺の妹の可愛さならば当然だ」


「その発言はどうかと……でも、燕って、敵意の無い相手には人見知りしないんですよね……」


「燕は可愛い。ネフェも大好き!」


姉と居候にも太鼓判を捺される愛想の良さと無邪気な魅力。これが計算ではないのだから……末恐ろしい幼女である。


そして、応接間に通され、剣は異世界召喚に纏わる彼是を説明したのだが……その間、楼明は燕を膝から降ろそうとはしなかった。


「成る程のう……実鳥ちゃんが異世界の〝勇者〟で、そっちの新顔の嬢ちゃんが〝竜〟であると……そして、剣殿は魂の片割れと融合して本来の力を取り戻し……他の姉妹も規格外の能力を……あのな剣殿よ。少年漫画の主人公だって、もう幾等か段階踏んで強くなると思うんじゃが……ぱーてーまで強化されすぎておらんか?」


「……全部意図して得た力じゃねぇんだよ。だからだ、そんな力があったからって、世界に対してアクション起こす気は無いから安心してくれ。俺は今の生活が気に入っているからよ。少なくとも、何かされない限りはな」


「それでは、儂等との関係は現状維持……でよいかの?」


「そうだな。基本的には……と、頼みたい事があったんだ。ネフェの戸籍とか身元証明関係の書類……でっちあげ頼める?」


「剣さん!?」


さらっと犯罪行為を示唆しちゃった剣に、実鳥ちゃん思わずビックリ。


「ん、ええよ」


「お爺様!?」


二つ返事の祖父に、尋姫さんビックリ。


「なんじゃい尋姫。別に金が動く訳でもなし、これで剣殿に恩が売れるなら安いもんじゃろ」


「それはそうですが……こんな簡単に戸籍偽造していい……訳ないんだけどなぁ……」


陰陽師としての活動には、表の法ではどうにもならない事もある。それは尋姫も理解している(本人自身おもいっきり銃刀法違反している)。しかしながら、本来部外者である剣の頼みを易々と了承してしまうのには、流石に抵抗を感じてしまうのだった。


「ま、その件は数日でなんとかなろう。いやしかし……燕ちゃんはめんこいの~」


「……あまり、撫でまわし過ぎんじゃねぇぞ。じいさん」


お菓子を与えられているので、燕は楼明の膝の上で大人しくしている。正直、剣は少し面白くない。


「なんじゃい?ケチケチしなくてもよかろうが。……しかし、連れてきたとゆうことは、この子も()()()なんじゃろう?」


「……正直、分からねえんだよ。それで念の為に連れてきたんだ。もしかしたら……俺や実鳥よりも()()()()なのかもしれないから、面通しくらいは……と思ってな」


ムスッとした顔で頭を掻く剣。煮え切らない様子である。


「あの……剣さん。私、それ聞いてないんですけど……」


「ん~……俺も確証なくてな。それに直で聞いた訳でもないし」


無垢な表情でお菓子を頬張る燕を見て、剣は半信半疑であった。


「正直、単なる誉め言葉……表現……比喩の類いって可能性もあるし、そうであってほしいんだが……」


意を決し、剣はそこはかとなく不安に思っていたことを口にした。


「女神様が言ってたらしいんだよ。燕の事を……〝天使〟って」








久々に登場しました陰陽師の孫と祖父。

そして……撒いておいた伏線に踏み込みました。

これから、どうなるかな~……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。