163話目 義姉妹漫才
光&梓回!
「うん。大丈夫。母子共に安定している状態ですって」
産婦人科での診察終了後、光は早速最愛の未来の夫、明良に電話で報告していた。
『それは良かったぁ……いや、大丈夫だろうとは思っていても、診察の報告受けるのって、どうしても不安になってしまって……すみません。今日は一緒に行けなくて』
「気にしてくれて、ありがとう。でも、今日は梓が付き添ってくれてるから心配いらないわ。あの子、本当に頼りになるもの。正直、私よりも家族の事が見えてるんじゃないかって思うくらいに」
『僕には、梓ちゃんってよく解らないんですよね。剣君の事が大好きなのは誰にだって判るぐらいなのに、本当に剣君がお嫁さん増やしても平気なのかなぁ……って』
「平気だと思うわよ?実際増えたもの」
※明良、受話器の向こうでずっこける。
『な……なんですそれ?光さんも公認?』
「あ、ごめんなさい明良くん。一昨日の事なんだけど、報告忘れてたわ」
『一昨日って……燕ちゃんと一泊して帰った日?異世界から帰った翌日じゃないですか……何がありました?』
「それがねぇ……剣がその異世界にまた行って、なんやかや……なんやかやについては、直接会ったら説明するわ。それで、女の子を一人預かる事になったとゆうか、嫁として引き取らざるを得なくなったとゆうか……」
『うん。全く意味が分かりません』
「まあ、その子は小町よりも幼いし、剣も全くその気はないみたいなんだけどね。兎に角、家に居候してるわ。それが……信じられないぐらいの西欧系の美少女なの!皆すっかり受け入れちゃったわ」
『軽っ!女の子一人預かるのに軽っ!』
「おまけに、その子ドラゴンに変身するわ」
『おまけのレベルじゃない!本当に大丈夫ですか!?』
「平気平気!色々あって剣には絶対服従だし、翼と希に凄く懐いているもの。梓なんて先輩嫁として……と、待たせちゃってるからそろそろ……ね」
『はは……もう、驚きの連続で何が何だか……本当に、気をつけて下さいね』
「うん。じゃあまたね明良くん。愛してます!」
『ぼっ……僕もです!愛して……ます!そ、それじゃ!』
顔を真っ赤にして幸せを噛み締めながら、明良は決意を新にした。
(聖家の受容力パねーよ!適応力ヤベェよ!でも……負けるか!負けて堪るか!光さんは、誰にも讓らーん!)
明良くんの精神耐性が、徐々に鍛えられているようであった。
「あーずさっ!お待たせ!」
「そんなに待ってないよ?それよりぃ、あっきー義兄さんと電話してたんじゃない?も少し話してたって良かったのにぃ」
「見透かされてる!……恋愛先輩には敵わないわねぇ」
病院の喫茶コーナーで待っていた梓。待ってないとか言いながら、コーヒーカップは空となっている。
(けっこう、気ぃ遣いなのよねぇ……)
「それじゃ、帰りましょうか?付き添ってくれたお礼に、昼食は梓のリクエストに応えちゃおうかな?」
「おねぇちゃん。それなんだけど……さっき、さっちゃんから連絡あってね、こまたんとデートしてくるって。今、家に誰もいないんだって」
「あら……二人分だけ作るってのも……そうね。梓と二人きりなのも久し振りだし、私達もデートしましょうか?」
「おや奥さん。今夜、お持ち帰りしちゃっていいのかな?」
「ふふ……貴女こそ、旦那への言い訳は考えてあるのかしら?」
光と梓は口説き文句をぶつけ合い……
「「ぶふっ!」」
互いに破顔し吹き出した。
「いや、同じ家に帰るし!」
「旦那の姉(しかも妊婦)と浮気する言い訳って!?ないわ~そんなアブノーマルなシチュ知らんわ~!」
気心知れた義姉妹ジョークであったが、周りの人には真に受けたりして、顔を赤らめたりする女性もいた。
それは、光が御姉様属性なお姉ちゃんだから!
中高生時代、女子にモテモテ(不本意)だった男前な綺麗系美女(美少女扱いされたかった)であったから!
「あはは……と、冗談はこのくらいにして、遊びには行きましょう、梓。最近、ばたついてたし。二人でちゃんと、現状確認もしておきたいし」
「それもいいねぇ。夏休み入ってから、毎日目まぐるしかったもんね。適当に買い物したり、ゆったりお茶したり、映画観るのもいいかもね~」
「それじゃ、取り敢えず駅に行きましょうか?どうせこの時期、何処に行っても混んでるでしょうし……移動しながら考えるのもいいでしょ?」
「そうかもね。私は今日一日おねぇちゃんの付き添いですから。おねぇちゃんのやりたいようにしていいよ」
そして二人は、行き先も目的も定めない適当デートを始めたのであった。先ずは最寄の駅まで歩き、環状線に乗車した。
既に通勤ラッシュは終わっているので、車内は然程混雑しておらず、座席も乗客同士が密接せずに間隔を空けて座ったり、スペースに余裕があるので悠々と立っている……みたいな感じであった。
「ふ……妊婦さんが一緒だと、罪悪感なく優先席に座れる……正に優越感だね!」
少し悪い顔をしている梓がいた。
「……それでも座るのは勇気がいるわよ。まだ五ヶ月だし。そらゃあ少しは目立ってるけど……」
「おねぇちゃん。優先席は世知辛い社会が与えてくれた享受していい権利なんだよ。それにね、おねぇちゃんが楽をすることは、お腹の子も楽してるって事なんだよ。それは少子高齢化社会にとっても有益なんだから遠慮しちゃ駄目!そして……一番楽をしているのは私!」
「無駄に理論武装!」
「楽ができる時に楽しておかないと~。世界や社会は突然急変するんだから!今この時も、別の世界では新型ウイルスが流行して、娯楽施設が休業を余儀無くされているかもしれない!そして倒産するかもしれない!遊べるときに遊ぶのは正しい!あの時行っておけばと後悔するのは自分なんだよ!」
「そ……そうね。あ、私達……異世界から未知のウイルス持ち込んでないかしら……?逆に持ってってないかしら?」
「……不可抗力です!その時は……世界に滅んで貰いましょう!」
「そんなに無責任でいいのかしら……?」
「異世界召喚から守ってくれなかった世界に、果たすべき責任なんて、ありません!」
※神様ゲートには通過者から異世界ウイルスを除去する機能があります。昨今現実世界で発生している事態を鑑み追加した機能です。今後とも快適で安全な異世界間移動に御利用ください。
みんな大好き 女神ちゃんより!
「……変な電波を受信した気が……」
「正に神レベルのアフターサービス!?」
笑うがいい!罵るがいい!これが御都合主義だ!
「……話題を変えよう!」
「そ……そうね。そう言えば、また剣には驚かされたわね……リムジンがお迎えに来るなんて……」
午前中、遥がバイトに出掛けた後の事である。まるで、ドラマの中でしか見ないような、黒塗りのでっかいリムジンが家の前までやってきたのである。そして直接出迎えに来たのは黒いスーツにサングラスのM○Bのエージェントを思わせる若い女性であった。
「剣から、人と会う約束があるとは聞いていたけど……あの子の交友関係が計り知れない……実鳥ちゃんとネフェちゃん。それに燕も連れてったし……陰陽師とか言ってたけど」
「なんか、修学旅行で知り合ったらしいよ。なんでも、政府の表にも裏にも大きな影響力があるとか……」
「大物フィクサー!?そんな人が剣に何を……と、思う方がどうかしてるのか……どーして私は弟の異常性に気付きもしなかったのか……」
それは、剣が光や敏郎に前世を教える事で、無駄に心労を抱かせたり、家族間に不和を生み出す切っ掛けにならないかと恐れたからである。それに加え、翼と希が能力を惜しみ無く発揮して目立っていたこと。桜が幼い頃から趣味全開でいたことも剣にとっては隠れ蓑となっていたからだった。
「まあ、けんちゃんも悪気があって隠してた訳じゃないんだから気にしない!てかね……今になってだから言えるけど……けんちゃん修学旅行の裏で、悪魔とか狂信者相手に戦ってたりして……危うく死にかけてたりして……って、ヒナみんにゲロさせました!……時効?」
「時効じゃないでしょ!……もう!どうしてそんな無茶したのか……悪魔が実在するとか悪夢なんですけど……修学旅行で倒れたのって、それだったのね……」
「でも、もう大丈夫!その時の悪魔程度だったら、腹パン一発で倒せるようになったって、けんちゃん言ってたから!」
「戦ってすらほしくない……胎教に悪い。オブラートに包んで」
尤もな御意見であった。
「……で、ここでいいのおねぇちゃん?」
「うん。お祖母様が一度行ってみたいって言ってたし……下見的な感じでね」
二人が降車した駅は〝巣鴨〟であった。俗に、おばあちゃんの原宿と呼ばれている町である。
「まあ、嫌いじゃないからいいけど」
「とげぬき地蔵は、駅を出て右の方ね。左はあまり観光地っぽくは……!?ねぇ、梓。私あそこでお昼食べたい」
光が指差した左手方向。そこにあったのは○○家。
「え……あそこ?いや、別に巣鴨で食べる意味なくない?都内なら似たようなお店が何処にでも……」
「お願い!つわりでずっと食べれなかったの!お姉ちゃん一人だと入りにくいの!」
「いや、あっきー義兄さんと行きなさいよ」
「食べてる姿を見られるのが恥ずかしい……」
「乙女かよ!もっと恥ずかしい姿見せてんでしょ!」
「梓ちゃんってば、はしたない……」
「都合よくキャラをブレさせないで!それ、どっちかというと私の持ちネタ!」
「……駄目なの?」
「上目遣い反則!……判ったわよ。てゆうか……ラーメン食べる姿が恥ずかしいとか偏見だからね!」
「だって……家系だし。豚骨をがっつくのは流石に」
「豚骨差別反対!女がこってりガッツリして何が悪い!そんな女に限って言うのよ「甘い物は別腹」って!」
「あ!帰りに商店街で大福をお土産に買わないとね!塩?豆?やっぱり両方?」
「ボケ倒されてる!?私が突っ込まされてる!?キャラ崩壊してるの私!?」
「ラーメンは当然MAX盛りよね?」
「女友達とは、しょっちゅう食べてやがったなこの女!」
「やぁねぇ、スープに豆板醤を入れて、ごはんになんてかけないわよ?」
「本物だ!本物の家系女子!」
仲良し義姉妹の即興漫才は、特にオチもなく入店するまで続いたのであった。
「で、今私が気になっていることなんだけど……」
ちゅるちゅる~
「私達って、スキルとか使えるようになったでしょ?」
「ええ。私の場合、料理に関するものみたいだけど。今も、卓上の調味料を見るだけで、自分の好みの味にする為の最適な量とか入れるべきタイミングなんかが解っちゃうのよね」
ズズ~ッ
「それで、そもそもスキルに目覚めた切っ掛けって、意図せぬ異世界召喚に巻き込まれた場合の保険だとかって、女神ちゃん言ってたじゃない?」
もきゅもきゅ
「そう言えば言ってたような……小町と燕には何もしてない……みたいなことも」
「それもなんだけど……私が気になってるのは、そっち」
梓が指差したのは、光のお腹。
「その子……スキル持ってるかも」
「……その可能性、考えてなかったわぁ……」
「生まれながらに、スキルを持っている子の育て方……そんな本、あっちで売っているのかなぁ?」
「是非とも欲しいHow to本ね……」
光は、新たに生じているかもしれない問題を、明良に報告すべきか、しばらく悩むことになったのであった。
コロナを……どうにかしてくれ~……神にも縋りたい気持ちを込めてしまいました。不謹慎に感じさせてしまったのならごめんなさい。そもそもが不謹慎な内容の小説ではありますが。
前回に続いて姉妹の珍しい組合せをしてみましたが……あまりの仲好しに作者が驚き。
で、次回は今回の話でも触れてますが、剣さんが実鳥と燕とネフェを引き連れ、陰陽師のじいさんに会いに行く話です。




