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157話目 ドラゴン娘の生活環境

前回のあらすじ

ドラゴン娘が仲間になりたそうに?こちらを見ている!

「運が良いのか悪いのか……まぁ、少なくとも最悪じゃねぇけど、災難だったなネフェ……ちゃん?剣がドラゴン肉を食いたい気分だったら、挨拶も無しに首チョンパだったろうからなぁ」


双子とネフェが自己紹介した辺り迄の件を聞いての、遥が漏らした感想であった。


対して剣は明後日の方向に目を背けて黙々とカレーを食べている。中辛カレーを素揚げポテトに満遍なく絡め、ウスターソースをかけた昭和のライスカレー風にしたカレーを、我関せずと食べている。


……否定する根拠が一切なかったから。


「ふーん。ガルミアさんにしたことで、皆に白い目で見られていたのが薬になっていたのかな?少しは自分を省みていたんだね、兄さん?」


ニヤリ笑顔な小町の辛辣な御意見が耳に痛いのか、剣は酸味の強いラッキョウを口にして表情の変化を誤魔化した。何だかこのところ失敗続きなのである。特に、小町からの評価点が下降しているのが辛くて泣きたくなるのであった。


「そ、それにしても!エルヴィアスに竜人なんていたんですね……私、聖剣さんと辺境とか山林、辺鄙な所を沢山旅しましたけど、見たこともなかったから驚きました!」


フォローしようとしてくれる実鳥の優しさが心に沁みる……剣はカレーを皿ごと持ち上げて、表情を隠してかっ込んだのであった。


一方、カレー初体験のネフェちゃんは……口の周りどころか頬までカレーでベトベトにしながら、瞳をキラキラさせながら一心不乱に「カレーは飲み物!」みたいな勢いで、甘口カレーをグー握りしたスプーンで口に運び続けていた。既におかわり五杯目である!


「そこまで食べっぷりがいいと嬉しくなっちゃうわね~。少しお行儀がアレなのが気になるけど」


「仕方ない。食器を使う文化でなかったから」


「学習する意欲はある。問題ない」


ネフェちゃん、最初は本場インドスタイル的に、躊躇なく手掴みで食べ始めたのである。熱々のカレーとライスを、素手で。これには聖家一同軽くカルチャーショックだったのであるが、翼と希がスプーンの使い方を教えると、不器用ながらにちゃんと使ってくれたのであった。


「ネフェねぇ、ばめよりスプーンがへたっぴ!こうするの!くちのなかにいれたら、ながしこむようにして、くちびるではさんでぬくの!」


得意気にスプーンの使い方を講義する燕であるが、そこはまだ幼児である。口の周りはカレーで汚れている。正に、ドングリの背比べである。


「ヤバス……純粋幼児と純粋野生女子のコラボ……幸せで死んでしまいそうな萌えがここにあるのであります……」


「……常々思うけど、さっちゃんはよくこの家で生きてられるよね?さっちゃんが家で萌えないのって、パパりんだけなんじゃないのかな?」


桜は度を越えすぎているが、姉妹の誰もがネフェを客人として抵抗なく受け入れていた。誰もが異世界召喚なんて稀有な経験をしたからか、見た目や種族の違い程度、受け入れない理由になんてならなくなってしまったのである。


……絶対、日本の一般感覚とは大きくズレているけれど。


「それで、話の続きだけれど……ネフェちゃんの集落には行ったの?こうしてネフェちゃんを家に連れて来たってことは……穏やかな結果には……ならなかったのかしら?」


「う……まぁ、どうなんだろうなぁ……」




「お……美味しいっ!?なんなのコレ?これが、焼いただけの魚なの!?信じられない!」


「おいおい……本当に軽く塩を振って焼いただけなんだが……そんなに感動する程か?」


泉の魚の腹を裂いて内蔵を取り除いて臭み消しに塩を振り、その辺の木の枝から作った串を打ち、地属性魔法で作った即席の竈門で焼いただけの代物である。炎属性魔法で火力を調節しながら遠火でじっくり火を通すだけの手間は掛けたが、剣的には本当に焼いただけの素人アウトドアクッキングであったのだが……何故かネフェはやたらと感動している。


その目には既に剣に対する恐怖の色はなく、尊敬の眼差しすら向けている……


「確かにパサつかずしっとりと焼けて、程よく脂も感じられるけども……」


「ネフェちゃん、普段どんな料理を食べてるの?」


ネフェちゃん、言葉の意味が判らないと首を傾げた。


「リョーリ?それ、何ですか?」


判明。竜人に料理の概念は、存在していなかった!


「食べ物って……焼く以外に手間をかけるものなんですか?」


判明。竜人は生で食べれる物しか食べない。動物の毛皮なんかを剥ぐ手間を省きたい時だけ、表面だけを焼いて焦がして取り除いて食べるらしい……


聖兄妹、集合!


「おい……相当文明と隔絶した生活してるぞ?」


「異文化どころじゃない。これもう文明発生前との遭遇」


「翻訳アクセが有効だから、言葉はエルヴィアスの共通語なんだろうけど……」


そこから、ネフェに対して聖兄妹の怒濤の質問タイムが始まった!


「なぁ、ネフェ。お前……服は?俺の所為でなくなっちまったんなら、そのマントはお前にやるが……」


現在ネフェは剣のマントを羽織っただけの、全裸マント状態である。あまりに平然としているので、服を着る習慣が無いのだろうかとの疑問であるが……


「あ……こんな肌触りの良い物なんて畏れ多くて受け取れませんよ!ほら、私の服でしたら……えっと……アレです!ありました」


ネフェが見つけて持って来たのは、一枚の茶色い毛皮。ネフェはそれを肩掛けにして体の前後に垂らすと、その辺りの木に巻き付いていた蔦を引き千切って紐として扱い、腰の辺りで縛って戻ってきた。


「……竜人族は、そんな……その格好が普通なのか?」


「?……可笑しいですか?巨竜に変身すると邪魔ですし、人族みたいな服だと破れちゃうから……この方が便利でしょう?」


「……そうか、種族の特性なんだな……」


竜人族の衣類は、機能性重視な結果……ただの毛皮だった。


「ネフェちゃん。住んでるとこって……」


「普通の洞窟ですけど?巨竜の姿を好んで生活している者もいるので、かなり大きく広いのです!」


「家を建てたりは……しない?」


「雨風凌げればいいので、必要ありませんね。私達、丈夫ですので」


竜人族にとって住居は、寝床でしかない。そもそも野生に竜人を害せる天敵が存在しないので、木材や石材で建築された住居で身を護る必要がなく、人族や魔族――魔法を使える相手に対しては役に立たない、そうゆうことであるらしかった。


竜人族の衣食住は、殆どギャー○ルズであった。


「それで、掟なんだけど……異種族に集落の場所を教えられないのは、無用な争いを避けたいからなのかな?」


「……はい。竜人族は種族としては最強なのですが、とても数が少ないらしいのです。人族と魔族……勇者と魔王の争いに関わるのは、種の存続に直結する問題になるらしくて……こうして、竜人族の存在を知られることすら、禁じられていて……」


「情報を漏らすくらいなら……死ねと?」


ネフェの身体がビクンと震えた。


「そう……でも、その掟……形骸化してない?」


「ど……どうゆうことですか?」


「真剣に種の存続を考えているにしては、ネフェちゃんもそうだったけど、危機感が足りてない。種族の未来を担う子供を……それも女の子の単独行動を許している時点で、種族的に強さに驕っていると考えられる」


「うん。きっと異種族と徹底して隔絶した生活をしていた所為で、今生きている世代から犠牲が出ていないと思われる。何故なら……竜人族の存在を、おに~ちゃんが知らなかったから!」


だよね?と、双子は確信に満ちた眼差しで剣に問うた。


「……そだなぁ~。少なくとも俺が今まで何千年か、死んだドラゴンが人の姿になったなんて見たことも、噂すら聞いた覚えがないな。あ……そういや、へし折った角がそのままの大きさだけど……竜の姿で死んだら、人の姿になったりしないのか?それじゃあ気付く訳もないか……普通のドラゴンだと思うよなぁ」


淡々と事実を、そして不思議だな~と思っていた事を語る剣に、またしても「ん?」と首を傾げるネフェちゃん。


「何千年……?何を……言っているのです?私の集落の長老だってそんなには……そんな若い姿で、人族が生きてられる訳が……」


「あ~……その辺りの事情は説明すると長くなるし、ややこしいから気にすんな。で?実際どうなんだ?ここ何年かでもネフェの集落で死んだり行方不明な奴っているのか?」


「……いません。少なくとも、私が生まれてからは誰も」


「因みにネフェちゃんのお歳は?」


「十……くらいだったかな?多分、そのくらいです」


竜人族に年齢を数える習慣はなく、正式な暦まで存在していなかった。ネフェちゃんは推定十歳だった。


種族的に、とてもおおらか(大雑把)な生態をしているらしい。


「ま、どんな連中か大体解ったな。じゃあそろそろ、集落に案内してくれるかネフェ?長老だか酋長だか、偉い奴と話をつけてやっからよ」


「で、でも……異種族の人を案内するのは……」


「掟違反か?安心しろ。俺達は異種族どころか異世界人だからな。この世界で争っている種族じゃないから大丈夫だ!」


限りなくグレーゾーンだけどな~。とは言わない!


「異世界……?なんなのでしょうかそれは?」


当然、ネフェに別の世界なんて概念はないので、とても不思議そうな顔をしている。


「ネフェちゃん、難しい事は考えなくていい。私達はエルヴィアスの戦争に関わってないし関わるつもりもない。そして、竜人族の存続や滅亡にも興味がない」


「なので、私達は〝集落に案内しちゃいけない〟に該当しない。ネフェちゃんが追放されず、野垂れ死にする心配さえなくなれば速やかに去る。それだけのこと」


「で、でも……大人達は、許してくれるのでしょうか?」


ネフェがとても、純真で純粋で素直な性格であることは、ここまでの会話で剣も双子も察していた。だから、ネフェが何を恐れているのかも既に判っていた。


仲間に、家族に直接追放されるのが、拒絶されるのを恐怖しているのだと。


それに、もし誰かが庇ってくれたとして、それが原因となって集落が分裂する事態になってしまったら……そうなるぐらいなら、一人、人知れずに姿を消した方がずっと……その前提で、剣はネフェに提案した。


「じゃあ、こんな作戦はどうだ?」


剣が作戦の説明を続けると、ネフェの表情は不安そうな困惑から、唖然、呆然と、最後には青褪めた表情で奥歯をガチガチ鳴らしていた。


双子は……お腹を抱えて、吹き出し笑いこけていたが。


「さすおに。えげつなし」


「ドラゴンさん達がお利口であることを、切に願わん……」


「あああ……本当に、それで大丈夫なのでしょうか?正直、どうなってしまうのか、不安しかないのですが……」


「さ~てっと。それじゃあドラゴン村に出発すんぞ!」


剣は背中に革ビキニのロリ巨乳×2。さらにその背中に原始ファッションの半裸少女を乗せている自分の姿に葛藤しつつも、ネフェを棲家へ送り届けるべく飛び立ったのであった。




話があまり進まず……ネフェちゃんの人となりの説明回でした。そして……カレー最高!

聖家のカレーはトロ~リしていますが、私は汁っぽくて辛口なのも、キーマカレーもタイカレーも欧風も全部好きです!ライスでなくてナンも好きです。様々な世界のカレーを食せる日本に生まれてよかった……

さて、次回は食文化の欠片もないドラゴン村に訪問します!

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