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155話目 魔法のある日常

前話のあらすじ


ドラゴンさんにフランケンシュタイナーして気絶させたら、なんか美少女だったみたい。

「それじゃお姉ちゃん。もう一回、いくよ?」


「お、おぉ……やってくれ!」


夕刻、場所は聖家の遥と実鳥の部屋にて、部屋の住人である遥と実鳥は、両手を繋いで輪を作って向き合っていた。


実鳥は右手から遥の左手に微弱な魔力を流し込み、遥の右手から自身の左手へと魔力を受け取り、二人の体内を循環させる。


「ん……くぅっ……」


遥の口から呻きが漏れる。今日一日、休憩を挟みながら同様の行為を重ねること既に十回目。


初回では全身に痛みと痺れが走ったが、その効果は実に覿面であり、回を重ねる毎に耳と尻尾は縮んでいった。そして、十回目にして遂に!遥の身体は人間に戻ったのである!


「……よかったぁ……本当、どうなることかと……」


遥は頭と、尾骶骨周りを擦りながら、安堵の言葉を口にした。


「しかし……耳の分伸びた髪の毛はそのままか……尻尾の毛は抜け落ちて、パンツの中毛だらけだし……」


遥の地毛は焦茶色であるので、獣化して伸びた分の毛色は、当然地毛の色である。その為、猫耳のあった部分だけ伸びた髪が、金髪の中に大きく焦茶の部分が出来てしまっていた。


尻尾の方は、元々の身体になかった部分であったので、縮む程に毛穴もなくなるので本人談の通り、自然と抜け落ちたのだが。


「まあ、それは仕様だからどうにもならないかなぁ……でも、これで体内を流れる魔力を意識的に感じられるようになったでしょ?もう、無意識に魔法を発動しちゃったりはしないと思うよ?」


「そりゃまぁ……なんとなくだけどな。なんか、上手く説明しにくい感覚だけどよ……」


「ゾワゾワするような、身体の中の血流を自分で操るような……慣れないと不思議な感覚だよね。それにしても……お姉ちゃんの魔力総量、エルヴィアスの人の平均値よりかなり多いよ。ほっといたら、一週間ぐらい、元に戻らなかったかも」


「うぁ……一生知らずに済んでれば幸せだった情報……でもま、あると分かったならそれはそれで……魔力をコントロールするトレーニングはやっておくか……」


自分が普通の人間から逸脱してゆく感じが否めない現実に、遥は疲れの表情を浮かべながらも、前向きであった。もし、次があったとしたら……これで備えておかずに、またしても無力に嘆き、誰かに頼るしかない事態に陥ってしまっては、遥は自分自身を許せないからであった。


「それはそれとして、どうすっかな髪……この機会に、染めるの止めちまおっかな……?」


遥が金髪に染めていたのは、実鳥を守る為に、周囲を威嚇する為であった。しかし、義姉妹と確かな絆を築き、実鳥自身も心身共に成長した今、既に髪を染める意義も必要性もなくなっていたのである。


「もう、ずっと金髪だったからね。愛着とか……ないの?」


「ん~……バイトで色んなウイッグ被ってっから、どんな髪の色にも抵抗ねぇんだよな。ま、夏休み中は魔法の練習で髪伸びるし、染めるかどうかは焦らず考えるさ」


「そうだね。まあ、お姉ちゃん(素顔)がいいから、地毛に戻しても可愛いと思うよ。きっと」


「……可愛いとか、バイトでも言われっけど、そっちは慣れねえんだよな……つーかさ?アネさん、やたら可愛い笑顔になって帰ってきたよな?」


「旦那さんに、しっかり甘えてきたんだろうね……長女だからって私達の前では気丈に振る舞っているけど、光さんだって女の子だもん。っと、そろそろ手伝いに行ってくるね?」


実鳥は夕食の準備を手伝うべく、部屋を出ていった。


「もうそんな時間だったか……アタシもシャワー浴びたら手伝うかな……」


遥は、シャワーを浴びに行く前に、排水溝を詰まらせないように尻尾の毛をしっかりと纏めながら……「アタシは、一体何をしているのだろうか?」と、やるせない疑問を抱くのであった。




実鳥が一階に下りると、キッチンでは光が上機嫌で料理に勤しみ。リビングでは桜と燕がテレビゲームで遊んでいた。


「いけっむげんほー!これでばめのかちっ!」


「ぬああっ?プロテクトシェードが貫かれたのです!くっ!やってくれたでありますな燕たま!次は負けぬであります!」


二人は〝ブレイブVSブレイブ〟とゆうロボットバトルゲームで白熱したバトルを繰り広げていた。その戦いを目撃した実鳥は、驚きと共に燕を称賛した。


「燕が勝ったの?凄いなぁ……私、このゲームで桜ちゃんに勝ったこと、殆ど無いのに」


「ばめは、まけてもなんどでもたちあがる!」


まるで、熱血主人公のような返事であった。


「ナイスガッツであります燕たま!それでこそ、ボクの妹なのであります!」


桜の瞳に、炎が宿っていた。二人は……ガチな真剣勝負をしていたのである!


中学生に、未就学児が格ゲーで対等に渡り合う姿。


「……ほ、程々にね二人とも~」


燕の意味不明なスペックの高さに、実鳥は戦慄を覚えずにはいられなかったりした……


「光さん、お手伝いに来ました~」


「ありがと実鳥ちゃん。それじゃ、付け合わせの野菜、下拵えしてくれるかしら?」


「は~い!今日はカレーなんてすね。いい香り……」


本日の夕食メニューのメインは割とシンプルなポークカレーであった。具材は3㎝角にカットされた豚バラ肉がゴロゴロと、それと同じぐらいの大きさの人参……だけである!


だが、それは目に見える具材だけの話。


豚バラは鍋に投入される前にニンニクと共に炒められており、カレーのベースとして飴色になるまで炒められた玉葱と、湯剥き後にペースト状に潰されたトマトは完全に溶けきっているのだ。


野菜の甘味と酸味をたっぷり含んだトロッとしたカレーには、鰹出汁も使われていて、日本人の味覚に合った味わいに仕上がっているのであった。


更に、トッピングとして野菜の素揚げ等を沢山用意するのである。そうする事で、各々好みに合ったカレーを完成させるのが本日のコンセプトなのであった。


「そういえば実鳥ちゃん。遥の猫耳は治ったのかしら?」


「あ、はい。ちゃんと元通りのお姉ちゃんになりました!」


「それはよかったわぁ。でも、あのままでも可愛いかったから戻らなくてもよかったけどね」


「可愛いって意見には同意しますけど……お姉ちゃん、泣きますよ?光さんを尊敬しているから余計に」


「うふふ……でもまぁ、また見せてもらえる機会はあるでしょうしね」


実鳥と談笑しながらも、光は全然手を休めずに料理を続けていた。右手に握った包丁一本。


キャベツ丸ごと一個が、あっと言う間に山盛りの千切りとなったかと思えば。まな板に三本並べられたキュウリが小気味良いリズムで厚さ1㎜に均等な輪切りに刻まれ。軽く宙に舞い上がったトマトが瞬時に八等分、ゆで玉子が四等分の半月型にカットされ、それらがレタスの敷き詰められた器に盛られて、サラダを完成させてゆく……


「あ、鮮やか……光さん、手際が……おかしなことになってませんか!?」


「どうしてかしらね?なんだか……エルヴィアスで料理をしてからなんだけど、イメージした通りに……違うわね。自分に可能な調理が、イメージに明確に浮かび上がるようになった……みたいなの。これも、女神様が言っていた〝スキル〟の恩恵なのかしらね?」


「そうですね……光さんは元々料理の経験がたっぷりありましたから、スキルが目覚めたと同時に、一気に経験がスキルに加算されちゃったんじゃないかと思います。梓さんの裁縫がトンデモになっちゃったのも、同様の理屈じゃないかと……」


思案顔の光に、実鳥はエルヴィアスで定説とされているスキルの成長についての説明をした。


「スキルは生まれつき持っている場合と、後天的に努力なんかで習得する事が出来るんですけど。前者の方が同じスキルであっても成長に必要な経験が少なくて済むんです。だから……信じ難くもあるのですけど、光さん達は()()()()()()()()()()()扱いになってるんじゃないかと」


「我ながら不可思議な調理技能の向上だったけど……これまでの自分の人生が評価された結果のボーナス……才能が花開いた、みたいな感じなのかしらね?まあ、突然扱い方も解らないような能力を持たされるよりは、有り難くはあるのだけれどね」


「お姉ちゃんなんて、なんでか猫の獣人に変身しちゃう魔法でしたからね……」


「でも、あれもバイトで猫耳メイドをしてきた積み重ねの結果なんじゃないかしら?こう、可愛らしいポーズをして、語尾ににゃあ付けすることが、莫大な経験値になっていたのよ!きっと!」


光さん、嬉しそうに断言した。義妹が可愛らしくなった事実は、何にせよウェルカムなのである!それに、今の光さんはとってもご機嫌なのだから!


(明良さんの家にお泊まりしてきたんだもの、ストレスフリーでリフレッシュしているのは聞くまでもないなぁ)


実鳥は事情を察して、機嫌の良さそうな理由は問い質さなかった。何故なら惚気られるだけだから。聞かなくてもその内自発的に惚気られるだけなのだから……


甘々な報告を想像しながら、実鳥は苦笑い気味にリビングへと顔を反らした。そこでは相も変わらず、姉妹が熱き戦いを繰り広げていた。


「げむ・ぎる・がん・ごー・ぐふぉ・うぃーたっ!」


「受けて立つっ!真っ向唐竹割りぃ!」


「……あ、中の人同じ対戦だ」


超☆ハイテンションで必殺技を激突させていた。




夕食前の時間となり、リビングには異世界冒険に行っている剣と双子以外、聖家姉妹が勢揃いしていた。


「「ただいま~」」


()()からの双子の帰宅の挨拶。


「不思議な感じねぇ」


「これ、お客さん来てたら不振に思うこと受け合いですね」


まさか、異世界から帰ってきたとは、聖家の九姉妹+1しか思うまい。光と実鳥は困ったように顔を見合わせ、愛想笑いを浮かべたのであった。


「帰ってくるまでしんどかったけど……なんだかなぁ」


「ご近所感覚だよね。私は行きたくないけど」


「ボクは準備を整え次第、兄様に連れてって戴く所存であります!」


「さて、けんちゃん達をお出迎えね!さてさて、どんな冒険をしてきたのかしら?」


リビングのドアが開かれ、黒マント姿の剣が入ってきた。


「にぃたん!おかえ……ん?」


何か、剣の表情に疑問を抱いたのか、首を傾げる燕。


「けんちゃん……その顔……やらかした感じ?」


続いて梓が、旦那の微妙な表情の変化を見逃さなかった。剣は黙って頷いた。


そして、そのやらかしは……剣に続いて入室した、双子の背後に身を隠すようにして、脅えた様子で姉妹達を窺っていた。


「あ……ひぅ……は、はじめ……ま……て」


双子の背後から少しずつ姿を現したのは……


白銀のウェーブ掛かった長髪に透き通るような白い肌。大きく潤んだ蒼い瞳。まるで、妖精か精霊と見紛いそうな神秘的な美しさでありながら、纏っている衣服はまるで、原始時代的な動物の毛皮を紐で縛っただけのもの。


「て……天然。天然自然の、神秘的原始美少女様降臨!であります!」


「ひぃっ!?」


思わず本音を大声で発した桜に対し、少女は驚き涙ながらに怯えて身を縮こまらせた。


「こ……こんなに人……怖い……人族怖い……」


「桜!自重しなさい!……それで剣……説明を!」


「え~と、今日からコイツ、ここに住むから」


「「「「「「はあっ!?」」」」」」


「?」


異世界冒険一日目にして、剣は美少女を拾って帰って来たのであった。





ブレイブVSブレイブ あったらいいなぁと思った妄想ゲーム。当然登場作品は勇者シリーズ+α ゲージが溜まると合体(ボタン操作で分岐合体可能)したり。

一戦目はパワーダ○オン対ガオ○イガー

二戦目はジェネシック○オガイガー対グレート○イトガイン

でした!

桜の英才教育によって、燕は既にガチャプレイを卒業済み……末恐ろしい幼女ゲーマーだ。


次回は、ドラゴン少女が居候する理由について説明するお話です。

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