154話目 異世界冒険開始!
お気楽異世界編スタート!
「どわあ~~!」
叫び声を上げながら、ダイビングヘッドの格好で顔面スライディングの不様を曝しているのは、この作品の主人公な剣お兄さんである。
そして、彼の腰の両サイドにへばり着いているのが、同じ両親から生まれた実の妹にして双子である、ロリで巨乳が特徴的過ぎる翼と希である。しかも、革のビキニアーマー姿で。二人ともちゃっかり剣に身体を載せているので、その美肌を一ミリ足りとも地面に擦らせてはいなかった。
剣が次元ゲートを潜ろうとしていた正にその時、双子が不意打ちで同行しようとした結果、剣はクリティカルヒットを受けてしまい、芸術的なスッ転びを披露してしまったのであった。
「……お前らなぁ~!」
「おに~ちゃん、私達に警戒心なさすぎ~」
「私達が洗脳されてたら、容易く暗殺されちゃうよ~?」
兄バカが極まっている剣への、双子からの冗談混じりの警告であったが、剣は軽くそれをあしらった。
「いや、妹に殺されるかもと疑うくらいなら、大人しく殺されてやる方がマシだっての」
「それは……殺し文句」
「だからおに~ちゃん……好きっ」
想定内の返答ではあったが、お兄ちゃんからの愛情溢れるお言葉に翼と希は感激し、剣の腰から背中に移動すると、より密着して親愛の情を示したのであった。
「それより、はよどいて……」
説明するまでもないが、剣は地べたに伏しているのである。そんな姿を、魔族の皆さんに見られて晒し者になっているのである……
そこへ、屋敷の二階の窓から舞い降りる影が一つ。宙で身体を翻し、スタッと軽快な接地音と共に剣の眼前へと着地した。
「いらっしゃい聖剣さん!……あれ?……ママは?」
「よ、ガルミア。期待させて悪いが……今回は俺達だけだ」
「……そーですか……御自由にお過ごし下さい……」
ガルミアは、トボトボと屋敷の中へ戻っていった。
「とても自分に正直な子だねぇ」
「そのママ想いに好感度アップ」
「完全に姪っ子を見る目してるなお前ら……」
ガルミアと入れ違いに、屋敷からバルテが歩み出てきた。その表情は、少々申し訳無さげである。
「あの……またガルミアがなにか無礼をしました?」
「いや、そんな事はないよ。実鳥が来なかったんで、一寸ガッカリしてるだけだろ」
「もう……態度が露骨で、本当にスミマセン……」
(バルちゃん、オカン?)
(苦労が滲み出てるよねぇ)
「ま、期待させちまった俺にも責任はあるしな。本当は何日か身体を休めてから実鳥も連れてこようと思ってたんだが……急用が出来ちまってな……」
剣は今回の来訪目的が、翼と希の魔法練習場所探しであること。併せてエルヴィアスの世界情勢調査であることをバルテに伝えた。
「何せ、二十年も前の知識だからな。今、何処が安定している国かなんて判らないからさ……情報ある?」
「その……私達はリーイースの魔族奴隷奪還を目的としていた集まりでしたので……正直、人族の他国の情勢にまでは然程……精々隣国の情報程度しか……」
「それだけ有るなら充分さ。何も一朝一夕に終わらせられるなんて思っちゃいなかったし。後は、自分の足で情報を集めるよ」
リーイースに隣接している国は三つ。リーイース同様に人族の守護を担う大国が二つ。北には屈強な騎士団を中心とした戦力を要し、武国と称されるシャメロアが。南には様々な金属・鉱物の鉱脈を有し、それ等の豊富な資源による産業が発達した、錬金国家と呼ばれるアルケミオンが存在している。
どちらも人口の大半を占めるのは正人族ではあるが、双方共にリーイース程、他種族に対する差別は露骨ではなく、奴隷も(表向きには)禁止されている。当然、魔族に対しては全面的に敵対しているが。
そして、西には広大な湿地帯を水源として利用し、農業を国家事業の中心として大国に食糧支援をしているクルグニフが、三つの大国に隣接している。
大国間には魔族に対抗する為に武力衝突を禁止とする条約が存在しており、三大国は隣接しているクルグニフに対しても侵攻しないことを暗黙の了解として国交を結んでいた。
そうした背景からリーイースは国境を接する三国と、表面上は安定した関係を続けていた……のだが!
「……が、私共が知る基本的なリーイースを取り巻く周辺国家の現状でありましたが……近日中に北と南から支援と称して少なくない兵力が事実関係の調査を兼ねてリーイースに入ってくることでしょう……先ず間違いなく、各々の国内も慌ただしくなるでしょうね……」
だよなぁ~……と。混迷極める状況を作り出した元凶さんは、無言でバルテから目を逸らした。
相槌すら打たずに自分のした事から逃避している兄に代わって、双子が応えた。
「当然。人族側にしてみれば防衛網に穴を空けてはおけない。多少無理してでも、支援しないなんて有り得ない」
「それに、リーイースに恩を売るなり、支援とゆう大義名分で事実上の支配をするなり、長い目で見て損ないし~」
「アレな王様の事、小国のクルグニフに対して高圧的な外交していたのは想像に難くない。クルグニフにとって今の状況を端的に表現すると……ざまあ」
「魔族のお国と接していない小国には、恐らく大国ほどの危機感は無い筈だしね。この機に有利な条約を結び直すとか考えそうかも」
「いや……ここはもっと狡猾にいこう!リーイースを囲む三国で密約交わしたりしてさ」
「成る程。大国間では武力衝突が禁止でも、大国に侵攻した第三国を撃退する為に援軍を送るのは、人道的に合法!」
「結果、シャメロアとアルケミオンはリーイースの領土を手に入れ、クルグニフはリーイースと国境を接しなくなり支援する必要がなくなる……なんてシナリオもアリ」
「或いはシャメロアとアルケミオンが何もしなかったら、リーイースでは王権を巡り内乱が勃発する。話し合いで決められるような国であったら、あんな馬鹿王とっくに玉座から引きずり下ろされてる」
「実際に内乱が各地で頻発すれば、それこそ鎮圧とゆう大義名分で……地方の馬鹿貴族を焚き付けるだけでいいから、三国で密約するよりよっぽどお手軽」
「うんうん。どの国も自国にとって都合のいい人をリーイースの次期国王に推す程度の工作は最低限するだろうしね」
「バルちゃん達以外の魔族さん集団がいるなら、これを好機と略奪・殺戮・テロリズム~!不満の溜まった平民さんも、反乱・革命・下剋上~!」
今後起こりそうな事態を、悪意を込めて予想しながら愉しげに会話を交わす双子を見て、バルテさんは表情をとても引き攣らせていた。
「次から次へと……この子達、なんて悪辣な発想を……」
「翼と希は、俺よりも敵に対して容赦しないからなぁ」
双子からすれば、剣が〝常闇之刃皇〟としてリーイース王都を瓦礫の荒野とした事ですら、痛快ではあるにせよ生温く、報復としては慈悲に満ち溢れた処置であったと感じていたのだ。
もし、双子に剣と同等以上の能力があったのなら、一切の無差別に無慈悲に、避難勧告すらもなしに、王都の全てを灰塵と化していただろう。それこそ、世界中の人間に〝怒り〟以外の感情を感じさせないように、リーイース王都は真実を知る者なく忽然と消滅したであろう。
それが〝神罰〟であるかのように。
「普段は飄々としてるけど、あれで、家族や仲間と認めた相手には、情が深いんだよな。ま、敵と認識される方が悪いんだが」
剣のその言葉に、バルテは背筋が凍りつくような思いがした。
「私達の命、首の皮一枚だったなぁ……」
剣達に敵として認識されなかった幸運と悪運の強さに、バルテは胸を撫で下ろしたのであった。
「さてと、それじゃ取り敢えず……西に行ってみるか。大国よりかは、今回の事態にも緊張感もたないだろうしな」
剣は最初の目的地をクルグニフと決めた。言葉通り大国の緊張感を警戒したのもあるが、それ以上にクルグニフで行われている農業に興味を持ったからである。前世では必要がなかったので欠片も興味がなかったのだが、地球での農業スローライフを目指す今となっては、エルヴィアスの農法や農作物にも興味津々なのであった。
重力魔法で身体を浮かせた瞬間、剣は両肩をガシッとされた。
「……何のつもりだ?翼、希」
「何?とは心外」
「異世界見物以外になにか?」
双子は、とても不思議そうな顔で答えた。キョトンとしている表情は、普通の男子であったら思わず二度見すること間違いなしの、凶悪な可愛さである!
「いや……それなりの町や村に着いたらゲートを開けてやるから待ってろよ」
「空から異世界見てみたい」
「おに~ちゃん航空で、快適な空の旅」
「いや、目立つわ。それにお前らその格好……半裸の少女を二人背負って飛ぶとか……別の伝説生まれちまうわ。どうしてビキニアーマーなんだよ!?」
「……巨乳キャラの、異世界定番だから?」
「最近、みどりんにサービスシーン持ってかれてるから?」
「ヒロイン的な危機感!?つか、定番って……エルヴィアスを何だと思ってやがる!異世界物では定番でも、ここで流行ってるとは限らないだろ!……だよな!?」
お兄さんは、バルテさんに助けを求めた!そんな流行りはないと言ってくれ!と……
「あ……その……目立ちたがりの女冒険者の中には、いるらしいですね、小数ですが……」
「いるのかよ!?」
嘘がバレると後が恐いので、バルテさんはとても正直に答えた。剣さんは、重力魔法で自身を押し潰しそうな程に絶望した!なにしろ、双子ちゃんはとっても目立ちたがり屋さんなのだから!
剣は仕方なく観念すると、双子を背負って飛び立ったのであった。
「おぉ~……大自然!」
「見渡す限りの山!森!草原!日本の空では見られない……」
それなりに感動している双子を背に、剣は地図を見ながら人族の集落上空を避けて西を目指す。
「おに~ちゃん、もっと早く飛べない?」
「景色がぐんぐん、過ぎ去ってく感じで」
「無茶言うな。俺一人だったら音速も突破できるけどな……お前らが死ぬだろうが。色々調節して、安全飛行ギリギリの速度で飛んでるっての」
剣は重力魔法に加えて、風属性魔法で自分達を空気の膜で包んで飛んでいるのである。これで風の抵抗や体感温度の低下から身を守りつつ出せる時速は200㎞程度。三人を包める空気の膜を維持しつつ飛ぶには、今の剣であってもこれが限界なのであった。
「こんなんじゃ、今日中にクルグニフに着けないな……」
「まぁまぁおに~ちゃん。急ぐ旅でもあるまいし」
「そうそう。旅にアクシデントは付き物」
「アクシデントのお前らが言うな」
兄妹漫才みたいな会話を繰り広げつつ、一時間程飛行したところで見つけた小さな泉の畔に着地して、三人は休憩をすることにした。
翼の生えた純白のドラゴンが水浴びをしていたので、一応お声掛けしてから。
「あ、すいませ~ん。ちょこっと場所を使わせてもらいます」
剣はちゃんと、深々と御辞儀をして断ったのである。敵意ゼロパーセントのアピールである。
ドラゴンさん、三人の珍客に蒼い瞳をパチクリ。因みに、エルヴィアスの自然界でのドラゴンは、大抵のファンタジー異世界がそうであるように、食物連鎖の頂点である。魔法が使える熟練の冒険者であっても、四人以上のパーティーが万全の状態でなければ太刀打ち出来ないような、最強危険生物なのである!
その目前で、泉の脇の草むらに平然と腰を下ろす少年と、無邪気に水浴びを始める二人の少女という図。
逃げもせず。挑んでくる様子もない人間に、ドラゴンはどうするべきか少し悩んだ様子だったが……プライドを酷く傷つけられたように感じたのか、威嚇するように大きな咆哮をあげた!
「グルゥオォォォン!!」
それが、運の尽きであった。少女達は少し怯えた様子の顔をしていたが――
ドラゴンの視界から、少年の姿が消えていた。
「水浴びを邪魔して悪かったな。ま、獣相手に人の礼儀は通用しないのも道理だったか」
ドラゴンがその声の元に、頭上を見上げた瞬間。ゴキゴキッ!と二回、硬質的な物が砕ける鈍い音がした。
ドラゴンの頭の両側にある二本の角が、両方とも根本から砕かれていた。少年の、剣の握力で単純に握り砕かれたのだ!
剣はそのままドラゴンの首に跨がると……脚で挟んで身体を捻り、ドラゴンの全身を泉の水面へと打ち付けた!
「ま、襲われる前の未遂だし、命は助けておいてやるよ」
ひょいっと宙返りをして、剣は泉の端に着地した。先程まで腰を下ろしていた草むらであるが……見事にびしょ濡れである。
「おに~ちゃん、やりすぎ!」
「私達まで、ずぶ濡れ……」
「……元々水着みたいな格好なんだからいいじゃんかよ……あれ?」
ドラゴンの巨体によって水飛沫を巻き上げられた泉は、ほぼほぼ水を抜かれたような状態となっていた。その中心付近に、あるべき筈の純白ドラゴンの姿はなく、代わりに、長い白髪の――背格好的に小町と同世代だろうか?ぐらいの純白肌の少女が、一糸纏わぬ姿で俯せていた。
「また……俺が悪いパターンか?」
双子のジト目が、剣に突き刺さっていた。
新キャラ登場!ドラゴン娘もやはり定番!で、初対面で角ポッキリ。
身体が純白で瞳が蒼……モチーフは、某カードゲームの社長専用ドラゴン……って、誰でも判るよね~?パクリじゃないよ!リスペクト!
……すんません。出来心だったんでありまさぁ……




