特別編 海では飲酒が可能です
ドリームをブレイクされたくない方は、読まないで下さい。
自分、ランドもシーも大好きなんですが、突っ込まずにいられない事もありますので……
「っく~!太陽光が燦々と降り注ぐ晴天の下、ジューシーでスパイシーなソーセージを噛みしめ、そこにキンキンに冷えたビールを流し込む!……もっ最高!」
まるで、昼間からアルコール入っちゃってる休日のお父さんみたいな駄目発言しちゃっているのは、外見的には女子高生相当な美少女である女神ちゃんだ。ここは、波止場をイメージさせるような場所に設けられた休憩所であり、女神ちゃんはそこで骨付きソーセージを片手に、堂々と立ち呑みしているのであった。
「……コンプライアンス的に、映像化は不可能であります」
「見た目、完全に未成年だもんね。実年齢は……その何千倍かはあるんだろうけど……」
「ま、ここは飲酒オーケーなんだし。マナーを守る限りはとやかく言わないよ……」
女神に連れ回されてる三人娘は、絵面を全線気にしない女神様の奔放な行動を、達観の境地で受け流すのであった。
三人は新聞紙風の包装紙に包まれたホットドッグを早めの昼食としてパクついている。飲み物は当然、ノンアルコールのソフトドリンクだ。
「この辺りは……昔のアメリカをイメージしているエリアなんだよね?レトロな車とか電車が走ってて、感じ出てるよね」
「そうでしょ実鳥義姉さん!この周辺の建物は都会風なんだけど、奥に進むと田舎の港町や岬をイメージして作られてるの!あっちの客船前のステージではショーをやったりするんだよ!船の中にはレストランもあるんだよ!」
ディ○ニー初心者の実鳥と感動を分かち合いたく、小町は説明を怠らない。そして、年相応に無邪気で楽し気な笑顔全開である。
「レストランも……これで宿泊出来る部屋があれば、本当に豪華客船だね。あんな船でクルージングしたら、楽しいだろうなぁ……あれ?どうしたの小町ちゃん?私、何か変な事でも言ったのかな?」
何故か実鳥から視線を反らした小町。心なしか、笑顔がひきつり気味に……
「実鳥たま、あの船は……いや、立派でありますな!」
桜は言えなかった。小町が「夢を壊すな」と言わんばかりに、漆黒の瞳で睨みを効かせていたから。
言えなかった。船の形をしている建造物であり、しっかり地面に建てられていて、航海なんて出来やしないのだとは……しかし、
「実鳥ちゃ~ん。あれね、リゾートラインに乗って裏から見るとバレバレなんだけど、船じゃなくって建物だからね」
ここには、空気を読まない女神ちゃんがいた!
「え……船じゃ、ないの?」
「いいえ!船です!公式に名前の付いている船です!ミッ○ー達はあの船で航海してるんだもん!」
「と、ゆう設定」
女神ちゃんは、歪んでいない幻想さえもぶち壊す!
「大体さぁ、船の向こう側にはリゾートラインのレールもあれば道路だってあるんだよ?東京湾にも繋がってやしないんだから、あの船で大海原に出航するなんて無理でしょ~」
神秘的な存在が容赦なく、ありのままの現実をぶっ込む!
「こ、尽く現実を突きつけてぇ……いたいけな少女の夢や魔法を信じる心を弄んで楽しいかっ!」
「……神様、小町ちゃんが何を言っているのか分かりません」
「分かりなさいよ!可愛くファンタジーな存在の実在を……可能性を信じさせてよ!世界観に浸らせてよ!」
「小町ちゃん……そうだよ?奇跡も魔法もあるんだよ?具体的には、小町ちゃんのお家に」
小町が直視すべき現実は、テーマパークよりも自宅にあった!
リアル魔法使いなお兄ちゃんに、特殊能力者なお姉ちゃんズ。そして、何故か神様ですら手出しを躊躇う妹。ファンタジーを超越している日常が、小町にとっては現実だった……
「やめてー!思い出させないでー!辛い現実から目を逸らしていられる癒しと娯楽の空間で、常識を何処かにポイ捨てしちゃった家庭の話はせんといてー!」
手で耳を塞いでイヤイヤする小町。聖家で誰よりも常識人な彼女にとって、その常識を逸脱してしまった家庭環境は、劣悪ではないものの、心休まる場所でもなくなってしまったのである。
「小町たまは堅物でありますからなぁ。もっと順応性を身に付けて欲しいのであります」
「いや、桜ちゃんは順応性の化け物だと思うよ?私の前世とか平然と受け入れちゃってるし、しれっと女神様の下僕になっちゃってるし……」
「下僕!?……実鳥たまも中々手厳しい言葉を……ふむ、その響きも悪くありませぬな!」
「そこは、怒ってくれても良かったのに……それより、小町ちゃんを苦しめてる要因の一つではあるよね、私。ごめんね、本当に心苦しくはあるんだけど……」
剣と並び、聖家筆頭級の非常識存在である事が発覚した実鳥は、自分ではどうしようもないとはいえ、小町に対して本当に申し訳なく思っていたのだ。
「いえ、その……私の方こそ、実鳥義姉さんが悪い訳じゃないって分かってるんだけど、中々気持ちが整理できなくって、煮え切らない態度をしちゃって……そして自己嫌悪のループなんだよね。本当、簡単に割り切れなくて……」
「そうなんだ……私もよく、悪い考えばかりが頭の中でグルグルしちゃう事があるから、それが辛いって解るよ……悩んでも意味が無いって思っても、どうしても悩んじゃうんだよね……」
自嘲気味な笑顔で、実鳥は小町に理解を示した。強気と弱気、先導型と引っ込み思案、真逆な性格の二人であるが、それは共に感受性が強く、責任感が高いが為である。故に、共感する事が多いのであった。
「はいはい!深く考え込むのは知的生命体に許された特権とはいえ、遊ぶべき時には楽しむ事に集中するべきだと、女神様は思います!こんな場所で、ネガティブフェイスは御法度だぜ!」
いや、アンタが原因だから……実鳥と小町は、やりきれない顔で女神様に訴えた。
「さ~てっと!腹拵えも済ませたし、パーク巡りを再開するよっ!この後の予定ですが……」
この冒険とイマジネーションの海には、様々な人気アトラクションがある。例を挙げれば、呪われたホテルのエレベーターで落下と上昇を繰り返したりするのや、世界一アクティブな考古学者が調査しているトラップ満載の遺跡を探索するのとか、映画化もされた地底世界をドリル採掘車で爆走したりする……等、所謂絶叫系のアトラクションには、安定して長い待機列が形成されている。
当然、小町はそれ等の人気アトラクションを体験する事を期待して、女神を見詰めているのだが……
「あ!何か演奏始まったから見に行こ~」
気紛れな女神様は、パーク内で突発的に開始される、アトモスフィアと呼ばれるキャストによる楽団の演奏会を発見し、ノープランで観覧しに行ってしまった!桜も迷わず追随する。
「あ、あの……タ○テラとか、ジョー○ズじゃないの……?」
女神様の奔放で後先考えない行動に、期待を裏切られて呆然とするこまたん。だって……こまたんは小学生なんだもの!人気や最新のアトラクションを中心に楽しみたいお年頃なんだもの!
「え……と……、小町ちゃん?ほら!演奏も楽しそうだよ?私達も見に行こ?ね!」
「うん……それも悪くはない……悪くはないけど……まだ、一つもファストパスすら取ってないのに……ト○ストーリーマニア……ソア○ン……」
恨めしそうに行列の絶えないアトラクション名を呟く小町。
それでも、そこはガチなディ○ニー好きである。一流のパフォーマーによるエンタメ感溢れる演奏には満足し、誰よりもはしゃいで観覧したのであった。
「不機嫌そうだったのに、最後はノリノリでありましたな?小町たま」
「……思い通りにならなくたって、楽しいものは楽しいんだもの……ま、ああゆうパークスケジュールに載ってないアトモスフィアに遭遇するかは運次第な訳だし……さ、さあ!終わったんだし次に行きましょ!」
時間が勿体無いとばかりに、先を促す小町。パークに居られる貴重な時間を、一分一秒たりとも無駄にはしたくないのだ!
「まあ小町ちゃん、そんなに焦らないでよぉ~。神様、のんびり楽しみたいのです。もっとこうさぁ、アトラクションとかショーにばっかり執着せず、待ったり並んだりせずに、景観や空気感をじっくり味わってみなよ~」
兎に角、パークを営業時間内で詰め込めるだけ楽しみたい小町に対し、気の向くままに、リラックスしながらゆるゆるスケジュールで堪能したい女神様。お互い、パークを楽しんでいるのは間違いないのだが、同じ場所でありながら、楽しむベクトルが対極的であった。
「……じゃあ、女神様は、この後どうするつもりなんですか?」
「そだねぇ……のんびり歩きながら、適当に美味しそうな物を摘まみつつ、取り敢えず歩いて一周してみようかな?それで待ち時間の少ないアトラクションがあったら体験すればいいし、演ってるショーがあったら観ればいい。頑張ったりしないで、優雅に過ごしたいと思ってます!」
で、その結果。
「昼間っからラウンジって、どうなのよ……?」
大航海時代の偉人、マゼランの名を冠するラウンジにて、一行はゆ~ったり休息を嗜んでいた。
「ふふ……これが大人の愉しみ方なのだよ。覚えておきたまえ小町ちゃん。日常の忙しなさからの解放……それが、時間に追われて生きる者にとって、何よりの娯楽であるのだよ」
「……女神様に、忙しそうなイメージがありません!」
相変わらず、的確な突っ込みの小町ちゃんであった。
「あの……私、ここの雰囲気……逆に落ち着かないんですけど」
「少々、高級感溢れるインテリアでありますからなぁ」
前世が自然派生活勇者であり、現世で小市民以下な生活水準の幼少期を過ごした実鳥にとっては、シックでアダルトな雰囲気のラウンジは、場違いに思えて緊張が解せない空間であった。
「気にすんなっての実鳥ちゃん!こっちはお客様なんだから。対価はちゃんと払うんだし、迷惑かけなきゃ遠慮する必要なんてないんだからさ」
「そ……そうですよね?あ、いただきます……」
実鳥は女神様が適当に注文したカクテル(ノンアルコール)に口を着けた。しかし、緊張で味が、辛うじて甘いくらいしか解らない……
「さてと……こうして静かで落ち着いて腰を下ろした処で、やってみるとしましょうか?特別編恒例の……今後の展開に関わるネタバレ交えたトークタイムを!」
「待ってました!我が主よ!」
「あ……やっぱりやるんだ……」
「私に関する伏線は大部分回収されちゃったばかりだけど……」
「甘いぜ実鳥ちゃん!君にはこれから……魔法少女としての人生が待っているんだからね!」
「え!?私、何をやらされるの!?」
「それは当然、フリフリの衣装を装着して、夜な夜な悪党に正義の鉄槌を……っと、そろそろ尺が……」
「特別編、まだ続くの!?いや、まだパークを半周すらしていないけれども……」
「このペースだと、残りのテーマポート分……五話くらいでありましょうか?」
「長いよ!ってゆうか、本編でやろうよ!ちゃんと真っ当にアトラクションを楽しみつつ!」
「私、どんな衣装を着せられるんだろう……?」
「それじゃ~皆さん。次回はネタバレ全開、最初から最後までクライマックスなテンションでいくからね~チャオッ!」
ディズ○ーシーっぽい挨拶で締めたところで、次回に続きます!
作品に関係ないネタバレをしたことに反省……だが後悔はしていない!
あ、実鳥ちゃんの魔法少女化は確定事項です。




