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特別編 女神様、海へ!

連日の残業ぉぉぉ……

それはそれとして、恒例の特別編です。

お遊び回なので読まなくても支障はありませんが、今後のネタバレも含まれています。

ストーリー上で新鮮な驚きを味わいたい方には読むのをオススメ致しません。

ここは、東京湾に面した埋め立て地に在る、とあるテーマパークの一角。水の都と呼ばれるヴェネチアの街並みと運河をイメージして造られたエリア。その水路を往くゴンドラに乗れるアトラクションの待機列に、三人の学生服っぽい姿をした少女を従えた、同じ服を着たピンク髪のアイツが、いた。


「さて、今回の特別編は趣向を変えて、冒険とイマジネーションの海とやらから御届けするぜっ!主役は当然、みんな大好き超絶美少女な女神ちゃんだよ!そして今回のゲストは、桜ちゃんと実鳥ちゃんと小町ちゃんの、聖家の年子三連星だー!」


突然、テレビカメラもないのにレポートを始める女神ちゃん。しかし、その奇天烈な行動にリアクションを示すのは聖家三連星のみで、他の一般客やキャストは反応を示さない。


神様スキル〝都合の悪いことは認識させない〟によって、女神ちゃんの迷惑極まりないマナー違反な行動は、同行者の少女達にしか認識不能なのであった!


「あはは……これ、本当に私達にしか見えも聞こえもしてないんだね……」


「流石は我が忠義を捧げる麗しの女神様なのであります!」


「桜姉さんは心酔しすぎ!全く……他人にも知覚されていたら神様だとしてもハリセンしてるよ!」


「小町ちゃん、多分、ハリセンの持ち込みも立派に迷惑行為に当たるんじゃないかな……?」


「実鳥義姉さん、今その冷静な突っ込みはいらないから。正直、女神様と桜姉さん相手に溜め込み続けると精神に悪いからこまめに発散しないとなだけだから」


「あ~……あはは、確かに、桜ちゃんと女神様を放っておくと何をしでかすか解らないもんね。女神様の悪ノリにどんどん乗っかるのが目に見えるし……」


桜は完全に女神のイエスマンと化していて、女神の一挙手一投足を讃えて肯定するばかりである。


「桜ちゃ~ん、小腹が空いた」


「はっ!キャラメル・ストロベリー・ミルクティ……お好きなフレーバーのポップコーンをお選び下さいませ」


「ありがと~、それにしても、今日は暑くなったよねぇ」


「日傘を用意して御座います。携帯型のミストファンもお試し下さい」


……既に執事かメイドか。


「完全に主従関係出来上がってるわよね、アレ」


「お姫様と使用人そのものだよね。てゆうか……桜ちゃん、何時の間にパークアイテムをフル装備したんだろ?」


桜が何故、実鳥に気付かれずにアイテムを取り揃えられているのか?それは、桜が作中本編ではいまだに気付けていないスキル〝装備換装〟の賜物である。このスキルは装備品を亜空間に収納し、手にしている道具と入れ換える事が可能なのである。


あくまで〝手にしている道具と交換する〟スキルであるので無尽蔵に道具を取り出せる訳でもなく、収納可能な道具の数も、桜のスキル熟練度次第である。


桜自身が前回の特別編で希望していた通りの、そこそこ便利な能力ではあるのだが、昨今の異世界モノで定番となっている道具を収納する〝アイテムボックス〟や〝ストレージ〟等に比べると、見劣りしてしまう微妙なスキルでもあった。


それもまた、本編で使える事に気付くのが何時になるか、定かではないのであるが。


「……まぁ、何らかのスキルって奴じゃない?どーでもいいや私は。それより、夢だろうが幻だろうが、シーに来てるんだし折角だから楽しまないとね。なのに……何で朝一でゴンドラなのかな?私的には、落っこちるのとかスピード感あるのとかの方がオススメなんだけどなぁ……」


ディ○ニーリゾート大好きな小町ちゃんではあるが、小学生の身である為に、そうそう気楽にインパーク出来る身分ではないのである。だから、定番の攻め方として新規や人気のアトラクションを優先的に体験したい心情なのであった。


しかし、今回は女神様に(強制的に)連れてきてもらっているので、自分の思い通りのプランで行動する訳にもゆかず、少々愚痴ってしまったのだった。


「そうなんだ……確かに、テーマパークってそうゆうのを楽しむってイメージがあるよね。私はここに来たの初めてだから、もう雰囲気とか景色を見ているだけでもワクワクしちゃうんだけど……」


実鳥にとっては、高い入園料を払わなければならないテーマパークは、完全にテレビの中にしか存在しない世界に等しく、憧れではあっても、自分がそこで遊ぶだなんて想像しておらず、プランなんて組めやしないのであった。なので女神任せな現状にも、それほど不満がある訳ではなかった。……が、一つだけ、疑問に思っている事があった。


「それより、何なのかなこの格好?うちの中学校の制服じゃないし……修学旅行気分?」


白いシャツにネクタイ。水色のミニスカートと、シンプルなデザインの、女子学生の制服に充分見える服装である。実鳥には特に特徴があるとは思えない格好なのであるが、女神と桜がこの服装をごり押しした事に、少なからず違和感を覚えていたのであった。


その疑問を耳にして、桜は眼鏡を指でクイッと持ち上げ、特に意味もなくレンズをキラリ~ンさせたのであった!


「この姿が何か?と申されましたな実鳥たま。然らば説明致しましょう!この制服こそは――」


「キングダ○ハーツ2ってゲームでヒロインのカ○リちゃんが着ていたんだよ。キービジュアルやパッケージでも制服姿だったのに、作中ではピンクの私服でいるシーンの方が圧倒的に多かったとゆう曰く付きの……」


「解説全部持ってかれたのであります!」


桜のコスプレ魂をも上回る小町のディ○ニー愛。○ィズニー作品の知識を披露するチャンスは、実姉にだろうと譲らないのであった!


「それはそうとね、桜姉さん……」


小町は無表情プラス瞳孔の収縮した瞳で、すい~っと桜へと詰め寄った。


「リゾートの両パークでは、ハロウィンなんかの特定日を除いて、ホテルの魔法ブティックで衣装のレンタルとメイクを受けた子供だけしか公式キャラの全身コスプレが許可されてないんですからね?今回は髪型とか寄せてないし、たまたま似ている制服だと押し通せなくもないし、本編と実質関わりがないから目を瞑るけど……現実じゃあギリギリかもって解ってるのかな?」


「も……勿論なのであります。これでもコスプレイヤーの端くれ、ルールとマナーは弁えているのでありますよ……だから……その怖い瞳で見詰めるのを止めて下さりませ~」


小町に詰め寄られ、怖れながらも何処か嬉しそうにする桜。そんな微笑ましい?姉妹の触れ合いに女神様は目を細め……


「うんうん。美少女同士のイチャコラは見ていて和むねぇ……そこに〝学生服〟とゆうアイテムが加わる事で〝女子学生〟属性まで付加されてぷりちーポイントマシマシ!ま……正直言っちゃうと、この特別編の冒頭出オチなだけなんだけどね!」


「あはは……出オチの為だけのコスプレだったんだ……まぁ、突飛でも目立つ格好でもないし、デザイン的には普通に可愛い制服だと思うから文句はありませんけどね……」


そして、実鳥は思うのであった。初めて体験する冒険とイマジネーションの海は、普通だと思っちゃいけない楽しみ方をする事になるんだろうなぁ……と。




陽気な漕ぎ手(ゴンドリエ)のお兄さんが舟唄を口ずさみながらゴンドラは水路を進み、パークの中央に広がるハーバーへと向かう。ゴンドラから見上げる情景は陸から見るのとは違った新鮮さがあり、パーク初体験な実鳥は勿論、乗る前は不満を口にしていた小町も水上から見上げるホテルミ○コスタの景観に思わず溜め息を漏らす程に感動を覚えていた。


「どうだね小町ちゃん?スリリングなスピード感もフォールダウンも無ければ、動力が人力なゴンドラの感想は?最新技術が導入されてるアトラクションと比べてどう?」


扇子で口許を優雅に隠しながら、ニヤリとした視線を小町に向ける女神様。ガチ勢とはいえ、派手なアトラクションに目を奪われがちな小学生に対して、なんとも意地悪な女神様であった。


「ま……まぁ、流石はディ○ニーって感じですよね!こうして、のんびりと雰囲気を楽しむのも……たまにはアリ……かも」


やはり、ツンな反応で返してしまう小町ちゃん。実はゴンドラ初体験。普段はどうしてもファストパスが導入されている人気アトラクションを優先して行動してしまうので、落ち着いた楽しみ方を見逃してきた事に、若干自分を省みているのだが、それを女神様に気付かされたのが、とても悔しかったのだ!


「そうだね。こうして普通に舟に、手漕ぎのボートにだってそんなに乗る機会ってないもんね。あれ?どうしたの桜ちゃん」


素直に純粋にゴンドラを楽しんでいた実鳥であったが、桜が何故か腕組をしながら景色ではなく、漕ぎ手のお兄さんをジ~と眺めていたことに気が付いた。とても笑顔が素敵な、爽やかなお兄さんを、である。


「ど、どうしたのかな桜ちゃん?えっと……私の勘違いなのかもしれないけど、あのお兄さん……桜ちゃんの、タイプだったり?」


桜は実鳥に顔を向けると、なんとも優しげな表情を浮かべていた。


「……いえ、漕ぎ手のお兄様方の唄やトークは素晴らしいのでありますが、どうしても……惜しいと思ってしまう自分がいるのでありますよ……これは、業なのでありましょうなぁ」


「惜しい?何がなのかな?」


「桜姉さんの事だから、何か下らない事なんてしょ」


「それは心外ですぞ小町たま!下らなくなんてないのです!もし、ボクの考えが実現すれば……このゴンドラに、ボクは待ち時間が五時間になろうとも、毎回並んで乗ると誓えるのですぞ!?」


「……え?いや、どんなアイデアがあればそんな事に?小町ちゃん、どう思う?」


「いや、どんな工夫をしたって……ゴンドラからじゃないと見れないオブジェを設置するとか?それとも、漕ぎ手が全員ディズ○ニーのキャラ化するとか……それなら私はイケそう」


「小町たま、近い!そう……実際のヴェネチアでも漕ぎ手は男性のみであり、パークでもその設定に忠実であるが故に実現されない……そう!もしも漕ぎ手が女性であったなら……それが!水の三大妖精様であったなら予約半年待ちであっても納得出来るのでありますよ!」


さっちゃん熱弁!夢は未来の火星に再現された新たなヴェネチアである!


それに対して、小町は冷めた目をしながらも、珍しく少し理解を示していた。


「……うん。まぁ、嫌いじゃない作品だけどね」


「……あぁ!思い出したよ。私も読んだよソレ。ウンディーネだったっけ?優しくて、ちょっぴり切なかったり……素敵なお話しだったなぁ……」


実鳥もかつて、弱気で臆病であった頃に読んだ、桜が厳選した〝過激描写が皆無で心が暖まる作品〟その中にあった、未来の火星の物語を思い出していた。


「そうでありましょう!極上のヒーリングなのであります!特にアリ○ア様にガイドをして戴けたらと想像するだけで……魂が浄化されて真人間になってしまいそうなのです!」


「いや、それは無理でしょ」


「そうだね。桜ちゃんの魂からヲタが無くなることはないよね」


「ナイス、ダブル突っ込み!」


実妹と義妹、二人にスッパリと両断された桜。日本の漫画史上、最高クラスの癒し系美女のヒーリング力をもってしても、治療不能なヲタであると認知されていた。


実際、死んでも治らなかった訳で。


「あっはは!やっぱ剣ちゃんの妹達は見てて飽きないなあ。しかし……困ったな」


「如何致しましたか我が主よ?」


「……楽し過ぎて、尺が、ね?もう、普段の一話分の尺を使っちゃってるんだよ。あまり長くすると、読者様が疲れちゃうかもしれないかなーっと。てな訳で、今回の特別編はここまで……じゃあ誰も納得しないよね!いや、ゴンドラ乗るだけで終わりとか内容薄くね?だから……女神権限で、次回も特別編をつっづけるよー!」


「……強引に纏められちゃったね」


「……まぁ、遊び足りないのは事実だから、私に異論はないけど……」


「女神様の、仰せのままに!なのであります!」






特別編、続きます。

シーでゴンドラ見た瞬間、そう思ってしまってのですよ……だって、ゴンドラでヴェネチアですよ!?ヲタなら誰だって思うよね?

ディ○ニーリゾートって、何時行っても女子学生がいる気がする……ので、こんな導入にしてしまった。

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