↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/241

147話目 あずはる

年末年始の連続投稿で、少し燃えカスになっていました……

今回は、サブタイトル通りに梓と遥メインです。

ってか、殆ど二人でダベってるだけです。

「魔力のコントロールって……どうすりゃいいんだろ……?」


頭とネコミミを抱え、途方に暮れる遥。昼間に生えてしまった耳と尻尾は、依然として引っ込む気配がなかった……


「本当、夏休みなのが不幸中の幸いだよね。このまま戻らなくても、バイト以外で外出しなければ問題無いし。いや、異世界召喚に理解のある職場で良かった良かった」


「そんな理解を求めて選んだ職場じゃねぇ……本当に、ほっといて治るんだろうか……」


バイトからの帰宅後、遥は一人だと気が滅入ってしまいそうだったので、梓を相手に弱音を吐いていた。


「ま、それはそれとして……こまたんがねぇ……はるるんと違って、こっちはデリケートな問題なんだよ。はるるんと違って、繊細な子だからねぇ……」


「……アタシと違う、何故二回言った?アタシは確かにガサツかもしれねぇけど……大事で二回繰り返すとこか?」


「……特に大事ではないけど、二回言ってみたかっただけ」


「……今、軽く殺意沸いたわ……て、ええ?」


「爪が、鋭く伸びたねぇ……」


「も……ヤダ……魔力ってそんなに、感情に左右されちまうのか……?」


猫科動物のように、遥の左右の手の爪が鋭く伸びてしまった……サイズ的にチーターと比べて遜色なく、殺傷能力もそれと同格にはありそうである。


「あ~……これはもう弄れるレベルじゃなくなっちゃったね。でも、まぁ、こまたん程、深刻じゃないか、愚痴れるだけ」


「深刻だっての……まぁしかし、小町はそんなに……だったのか?」


「真面目な話……かなり。か~なり無気力になっちゃってねぇ……常識や価値観をズタボロにされちゃったんだから無理もないけど。でもま、これが普通なのかもねぇ……異世界で悪人とはいえ、人死にを目の当たりにして平気でいられる私達の方が頭のネジが弛んでいるのかもしれないし……」


「ヲイ、アタシまで頭ん中がお花畑みたいにゆーな。常識ボロボロになった側だぞアタシは……いや、梓に愚痴ったって意味ねぇのは解ってっけどさ……何だよ?やけに嬉しそうじゃねぇかよ?」


ムスッとしている遥に対し、梓は頬杖を突いてニヤニヤしていた。


「いやぁねえ、はるるんが私に愚痴ってくれるなんて、丸くなったもんだと思ってね……最近までトゲツンがデフォだったとは思えない変わり様……なんかさ、心を赦して貰えたみたいで、嬉しくも感じるってもんでしょ!」


「そ、そうかよ……別に、今更お前ら相手に意地張ったって意味無いからさ……いや、なんつーか……今回の件も含めてだけどさ……この家、悪くないなって思うし……」


「ふふふ……はるるんがデレた~。ま、散々な目にも遭った異世界召喚でしたけど……私達の絆を深めてはくれたかな?てな訳で、異世界召喚で最大の被害を被っちゃった、こまたんを回復させる為に、共に知恵を絞ってくんなまし!」


「……そりゃ構わねぇけどよ、最大の被害者は実鳥だったんじゃ?……いや、もう大丈夫そうだけどよ……」


穏やかな寝顔で剣に添い寝している実鳥を一瞥し、遥は微妙に顔をしかめた。二人の関係性については理解しつつも、昨日の今日で、こんなにも距離感(精神・物理両方)が縮まっているのを見ると、何だか納得し難いのであった。


「おや~?はるるんジェラシィかな?けんちゃんに?それともどりりんに?それとも両方?」


「ば……馬鹿なこと言ってんな!んな訳ねぇだろ!つか、話の腰を自分から折るなよ……あんな目に遭ったってのに、平常運転だよな、どいつもこいつも……あ」


「あっ……て、何か気付いた?」


「いや、疎外感……なんじゃないかと思ってさ」


「疎外感……なして?」


「だってよ……基本、元気だろ小町以外は。なんかこう、おいてけぼりみたいな気分なんじゃ……表面上は気にしてない素振りだったけどさ、スキルを得られなかったのもショックだったんじゃ……」


「あ~……なんか、無力感に苛まれている様子だったしなぁ……」


「それに、性格真面目だからさぁ……考えすぎてんだろうな。お前も言ったけど、剣が実際に人を殺したの見ちまったろ。アタシはさ、助けてもらった立場で……その行為の善悪をどうこう問う気はねぇけども、ちっとも動揺してねぇ訳じゃねえし。自分の兄貴が人殺しって考えると……まぁストレスだろ」


「だよね~茶化してどうこうなる問題じゃないよねぇ……むうぅ……」


唸りを上げて悩む梓に、遥は呆れたように疑問を投げ掛けた。


「いや、アタシ的には梓が平然としてんのが不思議でならねえんだけど……アネさんは人間出来てっからアレだけども、双子や桜と違って、剣の前世とかの話は知らなかったんだろ?よくもまぁ、あっさりと受け入れたもんだよな?」


「常々、包容力のある女性になりたいと心掛けておりますので。それに~、けんちゃん達が何か隠し事しているのには気付いてたしね~。ま、愛する夫や可愛い妹達の秘密に興味本意で首を突っ込まないのが、いい女ってもんでしょ!」


「いい女とか自分でゆーな。ついでにドヤ顔すんな。……そのいい女的には、悩める無気力シンドロームな少女相手に、どう対処すべきだと思ってるんだ?」


「……それが、難しい問題なんだよねぇ……心の傷って、基本的には時間をかけて癒やすしかないのかなぁ~って思うんだよね……でもね、差し迫っている問題もあるわけで……」


「……だよな。もう、物心もしっかりしてる感じだし、折角の誕生日に、不景気面してる奴がいたらツマンネーだろうしな」


間もなく、燕の三歳の誕生日なのである。自我が確立されてきたとはいえ、まだまだ毎日の日付迄は理解出来ていない……と、思われるので、サプライズで盛大にお祝いしてやろうと、お姉ちゃんズは目論んでいたのであった。


「ん~……流石にこまたんも、ばめたん相手にはやさぐれないと思うけど……こまたんの頭から、ばめたんの誕生日がすっぽぬけてる可能性が無いとは……否めないかな~?」


「それはま……有り得るか……アタシも帰ってくるまでは、実鳥の事でいっぱいいっぱいだったからな……」


「確かにね~。どりりんを抱き締めながら、けんちゃんに必死に助けを求めたはるるん……今思い出しても、ヒロイン度満点でした!」


「わ、忘れろ!ぐうぅ……非常時とはいえ、こうして思い返すと羞恥心がぁぁぁ……」


「録画に残せなくて、本当に残念!再生してどりりんに見せたら、感涙間違い無しなのに!いやはや、麗しい姉妹仲で羨ましい限りですよぉ~」


「だから茶化すな!いちいち実鳥に説明すんじゃねえぞ、こっぱずかしい……」


遥にとっては、実鳥だけが妹だった時間が長くあり、それは実鳥にとっても遥だけが姉だった時間でもある。十年近く、互いだけを姉妹として過ごした時間は、聖家の姉妹に加わった今でも、互いを特別な存在として意識させるに充分な理由であり、実際に実鳥が「お姉ちゃん」と呼ぶのは遥だけであった。


「まあ、何と言いますか……羨ましいのは本音なんだよね。私って、両親が同じ姉妹っていないからね~。いや、今の家族に不満なんて一切ありませんよ?でも、はるるんにとってのどりりんみたいな?私にそーゆー特別枠な姉妹はいないから、ちょびっと羨ましくはあるのよね~と」


「……なんか意外。梓にも、人を羨む心があったんだな~。どんだけ他人(女子)に妬まれても気にしてないから、そーゆー心は母親の腹の中に置き忘れちまったのかと思ってたぜ」


「そこまで鈍くはありませんって、はるさんや……私だって、人並みに物思いに更けることはあるのだよ。ただね、羨んだり妬んだりしてるだけじゃ、欲しいものは手に入らないって信条なだけなのさ……だから、表に出してないだけなんだよ」


「ふ~ん……やっぱさ、梓って普段は剣に依存していてお茶らけているように見えるけど、こうしてサシで話してみると、けっこう大人だよな。どーしたらそんなに精神を安定させていられるのか、秘訣があったら教えてもらいたいもんだぜ」


すると、梓はしたり顔で。


「秘訣?それは当然あ」


「愛の力、以外でな」


「……分かってんじゃんよぉ!秘訣ぅ!」


「ははっ、そりゃま、梓の行動原理の最優先が〝剣への愛〟なのは、火を見るより明らかだろうが?……しっかし、梓にこうやって、冗談飛ばす日が来るとはなぁ……」


「そだねぇ……てか、こうしてはるるんと二人っきりで話すのも初めてじゃない?いや……長かった……こんな関係を築くまでに、四年もかかったかぁ……」


「悪かったな、頑なな問題児で!……いや、本当に悪かったと思ってるんだよ……お前らの事、金持ちで苦労知らずなガキだとばっか思ってたからさ……正直、価値観合わねぇって決めつけてた……みたいな」


「確かに、お金で苦労した覚えは無いかなぁ~。だから、はるるんとどりりんの貧乏エピソードを聴かされる度、泣けてきちゃうんだよね~。まぁ……どりりんの不幸体質が前世からだったのには驚きでしたが……」


「……マジで、アタシもそれには驚いた。……てかさ、実鳥の精神世界で、その前世で死んだ時の記憶を疑似体験したんだけどよ……アレはヤバかった……痛いし、心が絶望で押し潰されるし、刃が胸を貫く感触とか……」


「はるるんも、大概に心がタフだよねぇ……」


「いやいや、冗談で済ませられないリアルな感覚だったんだぞ?あれはな……ガルミアが一緒に体験していてくれたからこそ、耐えられたんだって思うぜ……」


「流石はどりりんの娘と言うべきか、いい子だったよね彼女。なんて言うか、見た目は私達より大人なんだけど、かなり可愛らしい感じだったなあ。確か、実年齢は私達と同い年なんだっけ?」


「えっと……あっちとの暦がどんだけズレてるか分からねぇけど、そんぐらいかな?その内、こっちにも呼んでやりてぇな」


「だね!……その前に、パパりんと鈴ママに、今回の件を説明すべきか姉妹会議をしないとだけどね……」


「……そだな~。うわ、急に剣や双子が前世を黙ってた理由が理解出来ちまった……なんか、難しいわ~。いや、拒絶はされねぇと思うんだけども」


「その前に、はるるんは魔力の扱い方を覚えないとだけどね」


「……鬱だわ。最悪、あっちに移住しなきゃならねぇかな……」


「住んでみれば、異世界も多分いい世界なんじゃない?もしくは、バイト先に正式就職するとか?」


「真剣に魔法を教わる。今決めた!」


正に、真剣な眼差しで宣言した遥。その少々芝居がかった決意表明に、梓は思わず笑い声を溢した。


「いや、移住よりも就職が問題ですか!?」


「ある意味……あの店は異世界よりも異世界してるだろ?」


「かも……メイド長さん、絶対普通の人間じゃないし!」


「だろ!?きっと妖怪かなんかだろ?」


「激しく同意!あの猫耳と尻尾は、恐らく本物でしょ!」


梓と遥が和やかに談笑していると、そこへ散歩に出掛けていた小町が、こだちを伴ってリビングに入ってきた。


「ただいま~。あ、遥義姉さん、お帰りなさい」


「……お、おお!小町こそ、お帰り……」


「それじゃ私、シャワー浴びて寝ちゃうから、おやすみなさい」


小町はそのまま、特に変わった様子もなく、普通に歩いてリビングを出ていった。


「お、おやすみ~……なあ、梓……なんか、普通じゃね?」


「な……何があったんだろう?……さっきまて、定年前にリストラされて、無気力になった中年みたいな雰囲気だったのに……」


「そこまでか!?」


小町の気力が回復した理由。それは、汗ぐっちょりで、玄関からリビングまで這いずってきた双子からもたらされたのであった。






ボケ(梓)とツッコミ(遥)の、ついつい脱線してしまう会話劇でした。

会話の終盤、カルテットな異世界パロディーの主題歌をネタにさせて戴いてたり。二期がもうじき始まる!すっげえ楽しみです!

双子が疲弊している理由は、小町とこだちを抱えながら、オーディエンスを撒きながら疾走したからです。次回の話はこの直後から。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。