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141話目 復活

年末年始……一年経つのが早いな~

本日からしばらく毎日更新……を、目標に!

「まさか、こんな物が存在していたとはな……何千年生きたか覚えちゃいないが、まだまだエルヴィアスは広いなぁ……」


魔族の隠れ家に戻る途中、剣は空中を飛行しながら、指で摘まんだビー玉サイズの透き通った物体を、しげしげと眺めていた。これはネウグルの研究室から入手してきた希少な魔法道具である。


他にも、希少性の高い道具や、有効的に活用出来そうな研究書類も回収済みである。


「……ま、こんな物が有った所為で召喚されちまったとも言えるが……そう考えると、使う権利はこっちに在るよな、うん」


相手が極悪人とはいえ、盗人猛々しい言い分であった。まあ、前の所有者も、真っ当な方法で入手したかは怪しいのだが。


それはさておき、リーイース王都の魔法研究関連施設を根こそぎブチ壊し、回収しきれなかった魔法道具や研究資料も片っ端から処分し、紳士的に無条件降伏を勧告してあげたのに反抗的だったネウグルの弟子っぽい方々は三七五六四てきたので、後顧の憂いはなくなった。再び召喚を行うにしても、当面は魔法技術や召喚触媒の問題的に困難であると思われる。


(リーイース王都の惨状を見て、それでも召喚しようなんで馬鹿がいるとは思いたくないがなぁ)


落ち着いたら、他の国へも見せしめに行くべきか?なんて、剣さんは大変物騒な事を考え中でありました。


「ん?あれは……」


剣が隠れ家上空に到着すると、庭に実鳥とガルミアが出てきていた。二人は剣の姿を見つけると、表情をほころばせて剣を出迎えた。


「よ、ただいま」


「聖剣さん、おかえりなさいませ!」


「……おかえりなさい」


一転、実鳥はとても仏頂面となっていた。剣を見つけた瞬間には、とても安堵した表情を浮かべていたのだが……


「……どうした?なんか、不機嫌そうだけど……」


「……不機嫌にもなるよ!剣さん……私の事……おざなり過ぎでしょ!目覚めたら、私と碌に話もせずに出てっちゃうんだもの!私の扱い、雑だよね!?」


そうなのである。剣は実鳥と殆ど言葉を交わさずに、善は急げと王都を壊滅させに向かったのである!そりゃあ、沢山話をしたかった実鳥ちゃんからすれば、それが必要な事であったとしても……納得出来ずに腹も立って当然であった!


「いや……俺は実鳥の精神世界で幾らか話したし……他の皆が話終わってからでいいかな~と、断じて、雑に扱っているつもりは無いぞ?うん」


そう、決して雑に扱っているつもりはない。そもそもリーイースを壊滅させた最たる理由は、実鳥を再召喚させない為であるのだから。寧ろ、一国と天秤に……どころか、人族を守護する十二の一角を崩してしまったようなものである。これを機に魔族が侵攻してくる可能性もある訳で、一国どころかエルヴィアスの人族全ての命運と天秤に掛けたようなものですらある。


「直接的な扱いが雑なの!」


真っ赤になって憤慨し、ポカポカパンチを繰り出す実鳥。剣は「あ~……」と、苦笑いを浮かべながら、甘んじてパンチを胸で受け止めるのであった。


「もっとこう……あるでしょ!?生まれ変わっても再会出来て、私、とても嬉しかったんだよ!なのに素っ気ないし!そもそも、私の方が先に死んだ筈なのにとか!その辺り全然説明ないよね!?私……私は……」


「悪い、説明不足だったな。どうも、その辺りは直せなくてな」


「そうだよ!ガルザートの時も、勝手に自爆しちゃったりして!もっと相談してよ!私が……どれだけ……」


「いや、あの時は……」


お前が俺を手放したから……とは、流石に言える空気ではなかった。感情的になった女の子には、何を言い訳しても藪蛇である事は、剣でなくとも解る事である。だからと言って、昨夜のガルミアに対して行ったように魔法で大人しくさせてしまっては、余計にヘソを曲げられてしまうだけである。今後も一緒に生活する義妹相手に、そんな気不味くなるような真似をするのは、愚策でしかないだろう。


なので、剣はスイ~と視線をガルミアに向け、無言で訴えた。「キミのママさん、なんとかして!」みたいに。


いきなり無茶振りされたガルミアちゃんは、当然あたふたキョドった!ガルミアからしてみたら、生まれて初めての、自分が当事者ではない家庭内問題である!ガルミア視点だと、ママとおじーちゃんが揉めてるような感じである!家族喧嘩の仲裁なんて未経験だ。しかも、剣は絶対に怒らせられない……暴力沙汰になったら、剣の一人勝ちなのは明白。そうなったら、仲の修復は困難を極める……ガルミアは必死で辺りを見回し、何か話題を逸らせる物はないかと探し……見つけた。


「あ!……ママ、それに聖剣さん。お取り込み中悪いのだけれど……相談したい事が」


なるべく実鳥を刺激しないように、ガルミアはおずおずと声を掛けた。実鳥は一瞬、腫れた瞳でガルミアを睨んだが、直ぐに涙を拭って笑顔を繕った。こちらはちゃんと、感動の再会を果たした親子である。つまらない理由で仲違いをしたくないと思う程度には、実鳥は理性を保っていたようだ。


実鳥が聞く体勢になってくれた事に安心し、ガルミアは実鳥と剣を手招きし、喧嘩から話題を逸らすには重要過ぎると言わざるを得ない物、ヴェルティエの遺体を指差した。


「ママの遺体なんだけど……埋葬しないとだよね?」


「改めて見ると、私、本当に死んで転生したんだな~って思う。この結晶体って〝氷晶柩牢〟じゃないかな?これって、自然に溶けるか術者にしか解けない封印術だった筈じゃ……」


「そうだ。()が施した術だ」


剣の発した言葉に、実鳥がぎょっと目を見開いた。


「剣さん、今なんて……?」


「あ……なんつーか、分裂してた時間が長かったからか、自我が一つになりきれてないんだよな。素になる……とも違うか。基本の性格は俺なんだけど、不意に私が出てしまうと言うべきか」


実鳥はようやく、剣がガルザートに自爆特攻した際に魂が分裂した〝無銘の聖剣〟の片割れであると説明された。併せて、ヴェルティエが自ら胸に刺した、折れた聖剣に残されていた魂と再融合したことも。


「そんな訳だから、俺ならこの封印を解く事が出来る……実際、剣を抜いた部分の封印を修復もしたしな。取り敢えず……封印を解いてみるか?」


剣の提案に、実鳥は苦み走った表情で応えた。


「私としては、このまま埋めちゃってもいいかなって思う。保存しておく意味もないし……なんなら、一思いに砕いちゃおうか?」


〝氷晶柩牢〟は物理的に砕く事は可能である。その際、封印された内容物も、確実に粉々に砕けてしまうが。


「ママの身体が粉砕されるとか、一生悪夢にうなされるレベルのトラウマになりそう……それは、やめよ?」


「……そだね。じゃあ、普通に封印解いてもらって、火葬か土葬にでも……まさか、自分の埋葬方法を悩む時が来るなんて思わなかったよ……」


苦笑いするしかない……実鳥はそんな心境であった。


「埋葬……する必要無いかも。一寸、試させてくれるか?」


「「?」」


剣の言葉に、揃って首を傾げる母娘。そんな二人の目前にて、剣が手をかざすと、氷晶はキラキラ輝く粒子状に分解されて、ヴェルティエの身体が解放された。剣に抱き止められたヴェルティエの身体からは、全身に刻まれた大小の傷から、心臓を貫く刺傷から、生々しく血が垂れ流されている。正に、死後硬直すらしていない状態で保存されていたのであった。


ヴェルティエが既に死んで、実鳥に転生したのだと完全に理解はしていても、ガルミアにとって、その光景は耐えがたい程に痛々しく、思わず実鳥の腕を掴んで身を寄せてしまう程であった。実鳥もまた、それが自分自身の身体でなければ、とても正視に耐えうる物ではないと感じていた。それでも、自分の選択の末の結果から、目を逸らすまいとしていた。


「さて、試してみるか」


剣に抱き止められたヴェルティエの身体が、淡い黄色の光に包まれてゆく。すると、傷から流れ出る血が止まってゆき、傷口が塞がれ、青黒く変色していた痣も、元通りの素肌の色へと戻ってゆく。治癒魔法による治療によって、ヴェルティエの身体から彼女の命を奪った痕跡は消え失せたのだった。


「……ありがとう、剣さん。私の前の身体、綺麗にしてくれて……後は、埋葬する前に、化粧とかしてみようかな……前世じゃ、生きてる間にそんな事も考えてられな……にゃあ!?」


実鳥がしんみりと剣に話しかける傍ら、剣のとった行動は、とても信じられないものであった。ガルミアも同様。身体を震わせ動揺していた。剣が……ヴェルティエの服の左胸部分に開いた穴に、手を突っ込んで、直接触れたからである。


「…………………!剣さんっ!そーゆー趣味は駄目です!」


「いくらママが魅力的でも……抵抗出来ない死体相手とか……聖剣さんでも、駄目なものは駄目っ!」


至極真っ当。マトモな感性での親子突っ込みである。が、相手は剣さんである。やるべき事をやることに、一切迷いを抱かない男である!


「……ギリギリ……生きてるな」


その言葉に、二人は耳を疑った。疑うしか……なかった。


「本当に、魂が抜け落ちた直後の封印だったから、細胞レベルではもしかしたらと思っていたが……勇者の肉体ってのはとんでもないな。これなら……」


剣の手に伝わる、心臓の確かな鼓動。ヴェルティエの肉体は……勇者の強靭な肉体であるが故に、細胞が一切壊死していなかったが故に、治癒魔法で蘇生されたのであった。


そして、剣はビー玉サイズの物体をヴェルティエの額にあて、何やら唱え始めた。


「時の隔絶。久遠の未来へ。彼の者に安らぎを。命に加護を。約束されし目覚めに祝福を――」


すると、ビー玉が激しく輝き……ヴェルティエの肉体を吸い込んだのであった。


「……よし!上手くいったぞ!」


一人納得している剣を余所に、実鳥とガルミアは、目を真ん丸に見開いて……驚きの声すら上げられない程、驚いていた。


「実鳥、受け取れ」


差し出されるまま受け取ったビー玉。その中には、紛れもなくヴェルティエの身体が……


「こ……これって、封印用の魔法道具?いや、それより生きてるって……?」


「ああ、性格も趣味も行動も歪んじゃいたが、ネウグルの魔法に関する知識と技術と収集品は確かだったな。その魔石……生物を封印可能で、おまけに内部の時間負荷は一万分の一以下で、自然治癒機能付き。他の研究成果と組み合わせると……」


「組み合わせる、と?」


「実鳥は今の身体とヴェルティエの身体……どっちも自在に入れ換えて使えるようになる!」


剣の、その台詞に対して、実鳥の理解が追い付くまでに、少なくない時間が費やされ……そして実鳥ちゃんは、こう叫んだのでした。


「私……リアルに変身魔法少女になっちゃった!?」




実鳥ちゃん、変身魔法少女にクラスチェンジ!

今後、作中に謎の魔法少女が現れたら、十中八九その正体は……全然謎じゃねえ!

次回でエルヴィアス編は一端終わりです。

サブタイトルは【帰宅】となります。

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