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139話目 始末

ほのぼの?回です。

「ちょっとお!剣!どーゆーことよぉっ!?」


「姉さん、やめっ!?ぐ……ぐるじぃ……」


久々に狂乱している聖家のバーサーカー。光は剣の首根っこをふん掴まえて、ブンブン振り回している真っ最中だ。


「おねーちゃん……ほどほどに、ね?」


乾いた苦笑いを浮かべながら、一応止めに入る梓であったが、光は一切聞く耳を持たず……それも当然、誰もが「これで帰れる~♪」と思った瞬間に、剣が「そんなお願いしてませんけど?」発言し、女神様が地球と繋げたゲートを閉じてしまったのである。その結果、ケータイの画面からアンテナが消失したのであった。


姉妹の誰もが唖然呆然とする中、光がいち早く正気を取り戻し……或いは失い、怒髪天を衝く勢いで剣の首をガックンガックンさせているのである。


「……ママの想像した魔王様と互角以上な聖剣さんが……ヒカリ……何者?」


光のあまりの剣幕に、ガルミアさんは涙目でガタガタ震えてママに抱き着いている!……これでも、魔王と勇者がいないエルヴィアスでは、最強クラスの戦士さんである。


「剣ぃ!何とか言いなさい!」


剣さんの顔色が紫色に変化してきた……どうやら、満足に呼吸が出来ていないらしい……


「おねぇちゃん、気持ちは解るし、おにぃちゃんをフォローする気は無いんだけど……」


「そろそろ離したげて?そうしないと喋れない。と言うか、喋れなくなる。医学的にそう判断する状態になるから」


触らぬ神に祟り無し……それが信条な双子ではあるが、兄の命が風前の灯火であるが故に、荒ぶる姉君に対して、その怒りに火を注がぬように、細心の注意を払って説得した。決して、自分達に矛先が向かないように、冷静に。


「え!何!?……あら?」


ブンブン!グラグラ!ほんの少~し気が反れ、据わった視線を一瞬双子に向けた光さん。双子は既にバンザイしていて降参・無抵抗を意思表示していたので、直ぐ様視線を元に戻すと……そこには白眼を剥いて土気色の顔色をした弟の姿が……


「……………………きゃあ~!!?」


ばった~ん!光が自らのしでかしに恐怖した事で、ようやく解放された剣であったが……背中から派手に倒れて、口から泡を噴いていた……


※剣さんは双子の正しい医学的知識による蘇生処置と、梓の人工呼吸によって無事に意識を取り戻しました。




「で?剣ちゃんのお願いって、結局何なのかな?」


光による〝弟殺害一歩手前事件〟を、笑い転げながら見物していた女神様が、意識を取り戻したばかりの剣へ、開口一番の問い掛け。


「そ……そうよ剣。帰してもらうんじゃなければ、何をお願いするって言うのよ……?」


勢い余り過ぎて、危うく弟を抹殺しかけた後ろめたさからか、部屋の隅で縮こまっていた光からも、同様の疑問が投げ掛けられた。


因みに、怒った光の恐ろしさを本能に刻まれている小町と、骨身に染み込まされている桜は、身を寄せあって、今この瞬間もガクブルしている。実鳥もガクブルしているガルミアを優し~く宥めている。燕は遥の〝見ちゃダメ!〟ファインプレイによってトラウマを刻まれる事もなく、今はグッタリしている剣を心配してか、ほっぺたを突っついている。……遥は、光に憧れの眼差しを向けている!


「……言葉足らずだったのは認める……帰してくれとは願ってないけど、願いは帰る為に使うつもりだから……マジ、一寸待って……久し振りに世界の狭間を垣間見た気がする……」


「なら、どうして……?」


剣の発言の意図が理解出来ず、困惑する光を余所に、剣は翼と希、それに桜を手招きしてディスカッションを始めたのであった。


「やっぱさ、()()()()()に使うのは勿体ないかと……」


「ですな。願いを()()……そこを固定観念で縛られてはつまらぬのであります」


「最小限のコストでより大きなパフォーマンス、これ基本」


「おにぃちゃん、やっぱりそこまで考えてた。既に私達に草案がある」


あーだこーだと意見を出し合い、他者の意見を更なる閃きで洗練させ、より高性能・高品質へと、四人の知識と想像力を総動員させ、()()()()()の発注書として、剣はそれを、女神様へお願いとして提出した。


桜のスマホに入力された項目を、女神は吟味するように、じっくりと目を通し……


「ま、作れるけど……剣ちゃんにしちゃ欲張ったねぇ?機能てんこ盛りじゃないの!」


「用心ですよ、用心。二度あることは三度……でも、一度あったら二度目に備えておかなきゃ遅いし、後悔するでしょう?」


剣が願い事として要求したのは、一言で纏めると〝空間転移ゲート発生装置〟である。もっと砕いた表現に、品名にしてしまうと〝どこでも○ア〟である。猫型ロボットが使用している物と比べると多機能ではあったが。


その機能についての要求は以下の通りである。


1.ゲートの大きさは縦幅2メートル以上3メートル以下。横幅1メートル以上1.5メートル以下。


2.ゲートは聖家屋上をメインゲートとして固定。それ以外はサブゲートと呼称。


3.サブゲートはメインゲートに接続される。


4.メインゲート開門時、サブゲートを指定する事で空間を接続する。指定なき場合は直前に接続したサブゲートに接続する。


5.ゲート開閉は専用のカードキーにより、音声入力によって実行する。サブゲートはカードキーに記録される。


6.出口側の安全確認機能(ライブカメラに準ずる)有り。


7.カードキーには所有者登録機能有り。聖剣(ひじりつるぎ)所有のカードキーをマスターキーとし、それ以外のカードキーに対して利用制限を有効可能とするものである。


8.ゲート開閉・維持に必要とするエネルギーは魔力を使用。メインゲート及びサブゲート設置箇所より大気中の魔力を吸収し、蓄える機能を有する。所有者がカードキーに直接魔力をチャージする機能も付随する。納品時には二回分以上・五分以上のゲート維持を可能とする魔力をチャージしておく事とする。


9.ゲートに貯蔵可能な最大魔力容量は最低でも三回分とする。


……等々。実際にはカードキーの材質や大きさ・重量等への要望やスペアキーの数、上記の条件にも事細かな補足事項がある。これは女神の性格をよく知る剣と、科学的な空間転移技術の知識がある翼と希、異世界転移モノの知識を豊富に持つ桜が意見を擦り合わせた結果である。


「注文多いけど……解った!これで()()()()()として受理するよ。いやいや……揚げ足取られないように頑張ったね~。成長したなぁ剣ちゃん。どっかの慎重さんかと思っちゃったよ」


「貴女には、会う度に精神ガリガリされてますからね……それに、()()()()じゃあ問題の解決になりませんから」


何らかの決意を秘めた剣の返事に、女神は含み笑いを浮かべた。だが、それは剣をからかったが故ではなく、剣が何を決心し、その結果が導くであろう未来を想像し、僅かばかり祝福してあげたくなったからであった。


それでも、お気に入りをついつい弄りたくなってしまうのは、この女神様の悪癖にして美点である!


「さ~て、そんじゃあ御要望の品を作りますかね!集中したいから空き部屋借りるよ~。ま、三十分もあれば完成するから!あ、桜ちゃん手伝ってくれるかな?」


「イエス!マイ・ロード!」


とても良い二つ返事であった。


しかし、剣の目は死んだ!


「桜……神の下僕に身をやつしたか……」


大事な妹が女神に魅了されてしまい、お兄ちゃん的にはダメージが大きかったようで、少し落ち込んでしまった剣。


そんな剣を梓は黙って抱き寄せ、優しく頭を、髪を鋤くように撫でた。


「梓……娘に恋人が出来た親父の気持ちって、こんななのかな?」


「う~ん……それは飛躍し過ぎ……でもないのかなぁ?まぁ、異世界だし、どりりんの前世がケモミミで鬼っ娘出現に女神様だもの……お家に帰れる目処も立って全員無事で……安心したら、さっちゃんの趣味的に羽目外しても……ああなって普通じゃない?」


「……かもな。俺も、思わず眠っちまってたし……姉さんに抵抗する余力もなかったし」


剣に湿った目で見据えられ、光は肩身が狭そうに身を縮こまった。


「もう……意地悪しないでよぉ~。だって、帰れると思った途端に……まぁ、冷静に考えれば……剣が言った通り、帰るだけじゃあ……ハッピーエンドじゃないわよね……」


光が視線を注ぐ先には、実鳥とガルミアの姿が。偶然、光と目があってしまったガルミアが「ひぃっ!?」と身を竦ませてしまった為に、光は多大な精神的ショックを受けて涙目だ!


「……ま、そうっすね。アタシも、ガルミアとこれっきりってのは……ちょいとツマンネーと思ってましたから。頻繁には無理でも、また会える方が絶対いいっしょ!」


遥は満面の笑みで、実鳥とガルミアの背後から、肩を組むように二人を抱き締めた。


「ったく、心配させやがって……おまけに、こんな大きな姪ができちまうとか、どんだけだっての!折角家族が増えたんだ……これでさよならじゃなくて、本当に良かったよな!」


「お姉ちゃん……うん!」


「ハルカ……そうか、ハルカは私のおばさ」


「それはやめて。名前で呼んで」


数瞬の静寂の後、室内は笑い声で満たされた。


「ん、私達全員、おねぇちゃんの出産前に、伯母さんになってしまった……」


「おねぇちゃんだけでなく、みどりんにも先を越された梓ちゃん、お気持ちは?」


「してやられた!……てゆうかね?ある意味私、おばーちゃんなんじゃない?まだ十代なのに!」


「……あ、そっか。ヴェルティエさんが、兄さんの前世の娘なんだもんね。梓姉さんにとっては、旦那の養子の養子……紛れもなく孫だね!血は繋がってないけど。そもそも前世の兄さんには血も涙も無いけどね!」


「小町さんや……今の兄さんには血も涙もあるからね?昨日、大量出血してたの見てたよね?実の妹にブラックジョークのネタにされるとマジ泣きしたくなるからヤメテ……」


「にぃたん、いいこいいこ」


天使な末っ子にナデナデ慰めされ、ハートを癒された剣。妹とのコミュニケーションは、剣にとって最高の癒しなのである!


「さてと……んじゃ、ちょっくら出掛けてくるわ」


姉妹の笑顔で元気百倍!気力だけは完全回復した剣は、やり残しを片付ける為に、立ち上がった。


「剣、何処へ行く気なの?」


「リーイースの王都へ。後始末してくる」




非戦闘回で死にかける主人公でした。

光姉さんマジつよす!

秋アニメ、笑える良作多かったなぁ……慎重な勇者とかね。

次回は剣さんがリーイース王都へ。

サブタイトルは【壊滅】王都涙目。

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