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124話目 交流

今回は、誰も死なない健全?なお話です。

「それより皆様、みどりんが目覚める前に、考えておくべき問題があるのは御存知ですか?」


「それは……みどりんとお兄ちゃんの関係性が、どう変化してしまうか……覚悟しておくべきとゆう大問題!」


そう……剣と実鳥はごく普通の、恋愛感情の無い程よい距離感の義兄妹であったが、実鳥にヴェルティエの記憶がプラスされた場合、もしくは主人格がヴェルティエに上書きされた場合……その距離感は一気に縮まってしまうのである!


「かつてのお兄ちゃん……〝無銘の聖剣〟にとってのヴェルティエさんは、相棒であり、弟子であり、娘のような存在だったと、お兄ちゃん自身が申しておりました……」


「ですが、当時のお兄ちゃんは無機物であり、性別なんて物を持ち合わせておりませんでした……しかし!今は歴とした男!元々の愛情に男性的思考がプラスされて然り!」


つまり翼と希が言っているのは……純粋な親心に、男親的な不純物が混入された件について!なのであった。


「いや、難しいと思うなぁ……けんちゃん朴念仁だし、前世の娘が今世で義妹なんて運命的ではあるけど……そんなトキメク設定にも恋愛感情が揺らがないのが……けんちゃんなんだよ!」


正妻様の反論。現在、そのポジションを不動の物としている梓だからこそ、剣の心がそう簡単に揺るがない事を誰よりも知っているのである。ちゃんと嫁として(なし崩し的に)認知(諦め)させる為に、それはもう根気よく頑張ったのである!


「だ……だよな?好意を向けられたって気軽に手を出すような奴じゃねぇし……そもそも簡単に気付く奴でもねぇもんな!」


その鈍感さ故に……幾度となく赤面させられている遥の言葉の重み!


しかし、その返しも双子は想定済みか……動じないどころか、ニヤリと笑っている!


「確かに二人の言う通り……()()()()()()そう簡単に恋愛感情を揺るがせはしないと思われる……」


「しかし!みどりんの方は……果たしてそう言えるのでしょうか?みどりんの前世、ヴェルティエさんがお兄ちゃんの前世〝無銘の聖剣〟をどう思っていたのか……我々には限られた情報から推測するしかできないのです!」


そう、親子・師弟・相棒……どれも剣の視点と心情からの関係性でしかなく……ヴェルティエがどう想っていたかは……誰も知らないのである。そして……剣のニブチンは、性別の無かった前世では現在のそれを上回っているであろう事は想像に難くない……


「それって……実鳥義姉さんが……兄さんに?そう言えば不思議だったんだよね……同級生の男子さえ苦手な義姉さんが、兄さんに対して初めからあまり警戒してなかったの……本能的に、前世の記憶が安心感を感じさせていたってこと……なのかな?」


「それこそ憶測、けれども小町」


「ファンタジーな現実に、思考が追い付いたようで何より」


「お……追い付いてないし!なんとなく、そう思っただけだし!」


認めたくない現実に対し、無駄と判っていても抵抗せずにはいられない……常識人として、小町の意地っ張りな性格の為せる……姉心をくすぐる可愛らしい反抗であった。


「わからず屋なこまちゃんかぁわいー!」


「今のそっぽ向き、完璧なツンデレ!」


「ちょっ?やめっ!姉さん達こそ緊張感なくしてるー!」


翼と希にもみくちゃにされる小町。確かに、先程までの周辺警戒をしていた緊迫感が、双子から完全に失せていた。


それは、警戒する必要がなくなったからであった。祭壇とは逆方向からゆっくりと響く、馬の蹄が地を叩く音が聞こえてきたからである。


「ただいま。話、つけてきたよ」


それに先行し、重力魔法で音もなく飛行して戻ってきた剣の方に、遥と小町が呆然としたのであった……


「魔法、何でもアリだよ……」


「便利な単語だよな、魔法……」




姉妹達の前に、二頭の馬に曳かれた大きな馬車が停車し、御者をしている魔族の女性、バルテが御者席を降り、姉妹達に軽く会釈をして話しかけた。


「貴女方がツルギ殿の姉妹ですね。この度は世話になりました。これから私達の隠れ家に案内させていただきます」


「有難う御座います。私は長女の光と言います。こちらの世界の事……本当に解っていませんので御迷惑お掛けすると思いますが……よろしくお願いします」


長女らしく礼儀正しく、深々と頭を下げて挨拶をする光。その恭しい態度に、逆にバルテの方が畏まり、慌てた様子で深々と返礼したのであった。


「迷惑だなんてとんでもない!我々、ツルギ殿には危機を救っていただいたも同然ですから!その上リーイース国王の身柄まで、一晩の宿代として惜し気もなく譲って下さり。問答無用で襲いかかった同胞を無傷(?)で返していただいて……本来ならば、礼のしようも無い程の恩なのですが……」


「いえいえ、私達にとってあんなクズな王様こそ、無価値同然ですから。こんな右も左も解らない異世界で、一晩の安息を得られる対価となるなら安いものなんですよ。そもそも、私達の国では人身売買が禁止されていますから、人の適正価格なんて付けられないんですけどね」


「そうですか……異世界の国、興味深いですね。時間が出来たら、是非聞かせて下さい。……あの、異世界人は……いえ、早く移動しましょう、乗ってください」


バルテが言葉を濁らせたのは、聞くべきか迷い、結局聞けなかったからである「異世界人は、皆、ツルギ殿のような戦闘力を有しているのか?」と……それでもし、答がイエスであった場合を考えると……怖いので問題を先送りにしたのであった。


「はいは~い!こっちから乗ってくださいね~」


馬車の後方からひょっこり顔を出したアロアがタラップを下ろし、聖家姉妹に乗車を促した。


「よろしく~」


「ふわぁ……ようやく少し休める~」


促されるままに、迷いなく乗車したのは翼と希。警戒心ゼロな二人に対し、地球の常識人な遥と小町は……かなり戸惑っていた。その理由は、馬車内には小さいながらもランプらしき光源があり、その灯りに照らされたバルテとアロアの素肌が、青かったからである。


「い……異世界、だもんな?」


「翼姉さん希姉さん……平然過ぎるよぉ」


現代の地球の常識では当然、肌の色で人種差別をするのは人道的、倫理的に許されざる悪例とされていて、遥も小町もそれを正しい価値観だと思ってはいるが……それでも青い肌は、異質な物として目に写ったのである。それが無礼な行為であるとは理解しつつも、つい、何度もチラ見してしまうのであった。


翼と希が魔族の肌色に動じなかったのは、様々なタイプの異星人を実際見たことがあるからである。肌色とか角がある程度、驚くに値しない些細な個体差だと認識しているのだった。グローバルどころか、ギャラクシィスタンダート価値観の持ち主なのである!


「リアルガミ○ス人……キタコレー!」


そして当然、桜ちゃんは大喜びしてました。


それに驚くアロアに空かさずフォローを入れるのは、地味に姉妹の中で精神耐性トップクラスな、常識に縛られない女、梓であった。


「ごめんなさいね~。魔族の皆さんみたいな肌の色の人って、私達の世界にいなくて珍しくて気になっちゃうんだよ~。不快だったら言ってね?すぐに黙らせるから」


「へ~、まあ珍しいなら気になるの仕方ないね!ま、こっちの正人族みたいに蔑むような目じゃないから気にもならないって!……いや、本当に異世界人なんだな~……見た目正人な人に気遣いされるなんて、なんだかムズ痒いなぁ」


不快どころか、アロアは気恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべたのであった。


聖家御一同を馬車に乗せると彼女は一人、馬車を降り。


「そんじゃ、バルテは皆さんを宜しくね」


何故か別行動をしようとするアロアを訝しみ、剣がバルテに問い掛けた。


「ええ……アロアには召喚祭壇の調査をしてもらいます。実際に召喚が行われた以上、その召喚には膨大な魔力供給源が必要となります。我々の調査の結果……それは、奴隷にされた大勢の魔族である可能性が……最有力なのです」


バルテの言葉に、剣が表情を曇らせた。


魔力の枯渇は生命の危機に繋がる。異世界からの召喚に必要な魔力がどれ程か……剣にも想像がつかない。一体、どれだけの魔族奴隷を動員し、使い潰したのか……


「しかし……祭壇にはリーイースの正人しか見かけなかったが?」


「祭壇建設時の図面を入手したところ、地下に用途不明なスペースがあったのです。祭壇の裏手側に、そこへと通じる扉がある筈なのですが……」


剣とバルテの会話を聞いていた翼が、突然何かを思い出したかのように、自身の懐をまさぐり始め……四次元に繋がっていそうな谷間から鍵束を取り出した。


「魔族のお姉さん、コレ……いる?」


「え?この鍵束は一体?」


「ハルバート持ってた騎士の側に落ちてた~」


嘘です。剥ぎ取りました。


「まさか……祭壇の鍵!?ありがとう!アロア、これを持っていきなさい!」


「わっ?手間が省けちゃったよ……ありがとね!帰ったら改めてお礼するからねー!」


元気一杯、天真爛漫な笑顔を浮かべ、アロアは闇夜へと駆けて行ったのであった。


アロアを見送った後、ヴェルティエの遺体も馬車に載せると、魔族達の隠れ家へと馬車は出発した。


馬車の内部はとても簡素で、車の左右に長い一枚板の仕切りもない座席があるだけだった。それも当然、兵士の移動用に使われていた馬車を利用させてもらっているからである。広さこそそれなりにあるが……ゴムタイヤでもなく、サスペンションもない、旧時代のシンプルな仕組みの馬車は、乗り心地が最悪であった。


夜に馬を走らせるのは危険なのでゆっくりと進んではいるが……車輪が小石に乗り上げるだけで、ダイレクトに揺れてしまうのである。


そんな馬車に揺られる事……凡そ二時間。林道を進んでいた馬車の前に、武装した何者かが現れ、馬車を停めさせた。


「バルテ!話は聞いてる、待っていたぞ!」


「ああ、恩人を連れてきた。丁重に扱ってくれよ!」


「……お仲間か」


もしかしたら盗賊かもと思い、臨戦態勢をとっていた剣であったが、バルテが気安く対応しているのを確認すると、すぐに警戒を解いたのであった。


「ははは!リアラがぐるぐる巻きのリーイース王を連れてきたのを見たときは目を疑ったぞ!正直、全員笑いが止まらなかったぞ!あの、偉ぶった王様が……ぐふふっ!」


「それは……よく判る!それはそうと……ガルミアは?目を覚ましたか?」


「まだだ。しかし……ガルミアを倒しちまう異世界人か。何とか味方に引き込めないもんかね?」


「……あのな、本人がすぐそこにいるんだが……あまり欲張るとロクな事がないぞ。兎に角、今日のところは客で恩人なんだ。それと……その恩人の姉妹は、外見正人だが美人揃いだぞ。下手な事を考えて恩人の機嫌を損ねないでくれよ……」


「まさか!幾ら美人でも、肌が青くもなければ角もないような女に……とと、いけねぇ、口が滑っちまった」


「お調子者が……まぁいい。馬車の始末は任せるぞ?ツルギ殿!ここからは徒歩で移動するから降りてきてくれ!」


ひょいっと馬車から飛び降りた剣を見て、出迎えに現れた魔族の男達は「こんな優男が?」と不審そうに首を捻ったが、念動魔法によって氷晶に包まれたヴェルティエを宙に浮かせる様を見て言葉を失った。誰にも、そんな真似が出来ないからである。


続き、馬車を降りてきた聖家姉妹の姿に……男どもは一気に沸き立った!肌の色?角がない?そんなの関係ねぇっ!と……


「馬鹿男どもが……」


バルテは急に頭痛に襲われたようである。どうやら、この集団の中では苦労人ポジションらしい。悩み多き年頃の、世話好き生徒会長小町が共感して、慈しむような瞳で見つめていた……


「バルテさん……負けないで!私、応援するよ!」


「?何だか解らないが……ありがとう、コマチ」


異世界召喚に最も混乱していた小町であったが、姉妹の誰よりも早く、異世界間友情を築きつつあった。


馬車を降りて、木々の間を抜けるように進むこと三十分。そこには、かつては立派だったであろう西洋風の大きな屋敷が、打ち捨てられて数十年は経っているだろう廃屋敷が現れた。


「これは……異世界テンプレな貴族屋敷!」


「あの……お化け屋敷っぽくない?」


「小町、お化けなんているわけ……あるわね」


光さんは実の弟をジト目で見据えた。弟の前世は聖剣の九十九神……立派にお化けの一員と言えた。


「外見は手入れしていないが、中は普通に過ごす分には問題ない。すぐに、寝室の用意を……」


その時、屋敷の二階の窓が開け放たれ、そこから寝間着姿の女性が飛び出してきた!


「貴様!何故ここにいる!?成敗してやる!」


剣対ガルミア……第2ラウンド……ファイッ!


「リアラ~……」


ガルミアが飛び出してきた窓を見上げるバルテさん。そこには、申し訳なさそうにするリアラちゃんの姿が……


「ごめん!説明間に合わなかったの~」




かな~り殺伐感が薄れたかな?

ガルミアちゃんは、かなり短気な子です。頭にすぐ血が上っちゃいます。

剣さん、今度は上手くやってね!

ま、どうやっても、ガルミアは勝てませんが……

一応安全な場所にたどり着いたって事で、次回のサブタイトルは【団欒】です。


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