↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/241

115話目 召喚

今日も連続更新!

……ある意味、前話までの全てがプロローグ。

かな~り展開変わっちゃうから、ゆるグダ展開好きになってくれた人には拒否られちゃうかも……

でも、コレもやりたいんじゃあ!

夏休みに入ってすぐの夕方、剣は燕にせがまれて、近所の玩具屋に花火を買いに出掛けていた。


「せんこーはなびやるっ!」


「兄様!これも買いませぬか?」


「家の屋上でやるんだぞ……ロケットなんてやったらご近所に怒られるっての……手持ちとドラゴン程度にしとけって」


「くぅっ……時代はロケットに厳しいのです……せめて、ネズミとヘビを……」


「……ま、自分で買うなら好きにしろ」


「けんちゃ~ん、デザートに駄菓子も買っていかない?」


梓と桜も同行していて、中々に気が散り、花火選びは順調とは言えなかった……


「うわ……日が沈みそうだ……」


店から出ると、東の空は深い青に染まり、星が輝き始めていた。すっかり、花火をするには頃合いの時間であった。


「あちゃぁ……みんな待ってるのに……急いで帰らないと」


「遅くなった分、精一杯盛り上げるのです!」


家路を急ぐ四人。この時、誰もこの後に起こる事を予感すらしていなかった。




剣達が家に戻ると、既に他の姉妹が全員、待ちかねていたのか屋上で水を入れたバケツ等を用意して、準備万端であった。


「お兄ちゃん達、遅い~」


「ちゃんとロケット買ってきた?」


「お前らもロケット好きだな?……桜が買ったけど、今日はやらないからな!」


「「ちぇ~~」」


ロケット花火は実に楽しい。激しく火花を散らす導火線。空を引き裂くような音を鳴らしながら、真っ直ぐ飛んで空に火線を描き、儚く消えて行く……それを連発した場合の爽快感たるや……しかし、暗い夜に飛ばした本体を回収するのはほぼ不可能。ゴミの散乱にも繋がるので、ロケット花火を発射可能な場所は、時代が進むにつれて、減少する一方なのである……


「姉さん達!他人に迷惑かけるような遊びは駄目なんですからね!普通の花火だって、普通に綺麗で楽しいんだから!」


「そうよねぇ。手持ち花火だって、回したり振ったりして工夫すれば面白いもの。あ、でもジェダ○vsシ○みたいな遊びは危ないから禁止ね」


「いやアネさん、誰もそんな馬鹿……やりそうか……」


「あはは……実際にライト○ーバー絵柄の花火とかあるもんね……私は普通で充分楽し……あ、れ?」


不意に、実鳥が足をもつれさせたように、地面に膝を着いた。直ぐ様、遥が駆け寄り声を掛ける。


「実鳥、具合でも悪いのか!?」


「な……なんだろ?いきなり、変な感じが……体が、ゾクゾクする……」


突然の体調不良か、実鳥が身体を震わせ、腕を抱えて縮こまった。他の姉妹達も、心配して実鳥の元へと集まってゆく。剣もそれに続こうと――


『主様、何か……変です。周囲の霊力に、微弱ながら感じた事のない乱れが……どんどん強くなってます!』


ヒナの進言から僅かに遅れ、剣の感覚にも、明らかな異常が伝わってきた。


「この魔力波動……まさか、転移!?」


かつて、戦場で幾度も目にした高等魔法。主に、魔族が魔獣の召喚や緊急退避に使用していた魔法である。しかし、空間を瞬間的に移動するには制限や制約も多く、魔力消費も激しい。エルヴィアスで実用されていた召喚魔法の場合、術者を召喚側の座標として、魔法の触媒となる道具を持たせた魔獣、或いは人を強制的に喚び出す事しか出来ない魔法であった。その魔法が正に今、起動しようとしていた!


姉妹達の足下から、円を描いて闇が広がってゆく。すると、闇はまるで沼のように、姉妹達の身体をズブリと沈め始めた。


「な、何よコレぇっ!?」


訳の解らなさに、小町が泣き叫ぶ。


「ど、どうなってんだ!実鳥!実鳥ぃ!」


蹲っていて、誰よりも先に沈んでゆく実鳥を、遥が必死に引き揚げようともがく。


「燕!掴んで!」


「ひかねぇ!たすけて!」


光が伸ばした手に、胸元まで沈んだ燕が懸命に手を伸ばし……


翼と希は闇に抗えない事を悟り、互いを離すまいと抱き締めあい……


桜は覚悟を決めたように、無言で剣に頷いた。


そして、梓は……


「けんちゃん、逃げて!」


愛する人に助けを求めず、無事だけを願った。


剣は辛うじて、闇の一歩外に居た。直ぐに逃げれば闇に呑まれはしないだろう。


「梓、そりゃ、無理って解ってるだろ?」


「逃げて!」そう言われるよりも早くに、剣は闇へと飛び込んでいた。


それが、たった一つ全員を助ける為の方法だったから。


十人が完全に闇に呑み込まれると、闇は何事もなかったように、痕跡すらも残さずに、消失したのだった。





「きゃあっ?」


剣と姉妹達が闇に呑まれ落下しているような浮遊感を数秒間味わうと、重力が反転したように、逆方向へと僅かに身体が落下した。


「みんな、無事か!?」


剣は辺りを見回し、全員がすぐ傍に揃っている事をいち早く確認した。……間違いなく、全員が石造りの床に寝転がっている。


無作為・無差別のランダム転移でなかった事は、不幸中の幸いであったと……そう思わざるを得なかった。


「けんちゃん……逃げてって、言ったのに……」


抗議するような口振りながら、梓は呆れたように笑みを浮かべていた。つい、あまりの異常事態に口から出てしまった言葉であったが、どう考えたって、あの状況で剣が我が身可愛さに逃げる訳がない。寧ろ、自分が有り得ない発言をしてしまった事に「ないわぁ~」と、悲劇のヒロイン染みた真似をしてしまった事実に、照れ隠しで笑うしかなかったのである。


そんな梓に、剣も静かな笑みで応えた。


「逃げれる訳がねぇだろっての?それより、現状把握を急ごう。今は非常時だ。モタモタしてたら手遅れ……な、んで……」


梓に注意を促しながら、周囲の様子を探っていた剣の視線が、見付けた物……正しくは、者と表現するべきソレを見付けて、信じ難く、認めたくない現実に、動きを止める。


「兄さん……コレ、一体なんなのよ……サプライズだとしたら、あまりに大掛かりで趣味が悪……きゃ……きゃあぁぁぁ!?」


剣同様、ソレを目にした小町が悲鳴を上げる。すると、全員がソレに注目し、絶句した。光は直ぐにハッとすると、燕を抱き寄せ視界を封じた。


剣達がいるのは、一辺が10メートルはあり、四方の角には炎が灯された大きな燭台がある、祭壇のような場所であった。その、祭壇の中心であろう位置に、ソレは据えられていた。


「なん、で……?どう、して?や、やだ……うあぁぁぁぁ!!!」


「実鳥?しっかりしろ!実鳥!」


大きく叫びを上げると、実鳥は気を失ってしまった。遥の呼び掛けにも反応せず、意識を深く閉ざしてしまった。


「……翼姉様、希姉様、この方は……」


「……多分、桜と同じ事を考えてる」


「昔、お兄ちゃんが少しだけ、話してくれた……」


「あんまり……では、ありませぬか……!」


涙を堪え、爪が食い込む程に、桜は拳を握り締めた。


翼と希の瞳にも、激しい怒りの炎が灯っている。


剣が呆然と見つめる先、そこには水晶の如く透き通り、氷の様に冷気を帯びた靄を放つ、歪な柱が立てられていた。その柱は、正しくは柩だった。鉱石の中には、一人の女性の姿があった。しかし、その姿はあまりにも……無残であった。


身体全体に無数の裂傷と打撲痕。ボロボロの衣服と全身が赤黒く血に染まり、心臓の位置には剣が突き刺さっており、柄の部分だけ鉱石からはみ出ている。そして……その女性には獣のような耳と尻尾が生えており、大半が血に染まっていながらも……とても美しい、翡翠のような毛色をしていた……


間も無く、祭壇の下から多くの足音と、ガチャガチャと金属が擦れあうような物音が響いてきた。警戒心も露に、気を失っている実鳥を守るべく、遥を中心に姉妹達が集まると、大勢の槍を手にした全身鎧の兵士とおぼしき集団が現れ、周囲を取り囲み始めた。


兵士達は威嚇でもしているのか、口々に何かを叫んでいるが、姉妹達にはその言語が全く理解不能であった。


「けんちゃん……どうしよう?」


剣は応えない。ただ、無表情で柩を、長き前世で唯一人、家族と思えた娘の骸を見詰めていた。


言葉の通じない兵士に包囲されてしばらく、祭壇の下から言い争うような声が響くと、再び何者かが祭壇を登ってきた。


その者は、身を寄せあう姉妹達を見つけると、見下すような下卑た微笑を浮かべた。四・五十代の肥えた男性。頭に黄金の冠を戴き、豪奢なマントを翻し、兵士達よりも装飾過多な鎧を纏う四人の騎士を従えるその姿は、世界が違えど紛れもなく〝王〟たる立場にある人物に他ならなかった。


「さて、どれが獣の生まれ変わりであるか?」


王は召喚者達を一瞥すると、後方に控えていたローブ姿の老人に尋ねた。


その言葉に、剣が微かに、しかし確かに感情を昂らせてゆく。


「少々お待ちを……恐らく前世の記憶を覚えてはおらぬでしょう。ならば、次の術式が整うまでの間、警戒心を抱かせず、都合よく利用してやるのが上策であるかと……」


「フン!好きにせよ。どのみち、異世界へ逃れる手段など有り得ぬのだからな」


この会話は、当然姉妹達には理解が出来ない……姉妹達には。


「さすれば、隷属の呪法を施しましょう。他の者は人質になりましょうし、若く美しい娘ばかり、使い途は、幾らでも御座いましょう……」


「そうだな。余の後宮に加えてやるもの悪くなかろう……ククク……」


ブチブチッ!誰かの血管が限界に達した。


「それでは……皆様方、私の言葉が通じてますかな?」


「え?日本語?……はい。あの、ここは何処で、貴方達は……」


「ほう、上手く翻訳されたようで何より……ここは皆様がいた世界とは異なる世界。エルヴィアスと呼ばれております。その中でも歴史あるリーイース王国の王都で御座います。私は王宮魔法師筆頭のネウグル。詳しい説明の前に、先ずは此方を……」


ネウグルが合図をすると、部下らしき魔法師達が、光達に恭しく赤と青、二色の鉱石に彩られた装飾品を差し出した。


「このアクセサリーには、言語翻訳の魔法が付与されております。効果は私が身を持って証明しております。いやはや、私もコレがなければ皆様とマトモな会話が成り立ちません……お恥ずかしい限りな話で……」


そう言ってネウグルは、首元より青い鉱石の嵌まったペンダントを取り出してみせた。


「そうですか……では、遠慮なく御借りさせて……」


「そこまでだ。下らねぇ芝居してんじゃねぇよ。動物園の猿の方が、よっぽど役者だぜ」


前触れなく吹き荒れる突風。光達に差し出されたアクセサリーは、一つ残らず舞い上がる。そして突風は嵐となって、王や兵士に襲い掛かった!


「陛下!」


「我らの後ろへ!御下がり下さい!」


王は四人の騎士に護られ、ネウグルは自ら魔法障壁を張り、事なきを得たが、兵士や他の者達は、容赦なく祭壇から吹き飛ばされ、落下させられていた。ドシャドシャと地面に激突し、鎧が砕けひしゃげる音が、彼らがどうなったかを、見るも語るまでもなく容易に想像させるに至る……


「ま、まさか……魔法?異世界の?し、しかし……それほどの魔力など感知出来ない筈が……」


「あ?必死に隠蔽してたに決まってんだろ?相変わらず、腐った国だなリーイースは」


剣が手のひらを上に向けて開くと、舞い上げられていたアクセサリーが全て、静かに降りてきた。


「ふん……確かに青い鉱石には翻訳が付与されてるみたいだが、赤い鉱石には服従の類が付与されてるな?発動条件は自ら身に着ける……呪いのアイテムの定石だな」


「なぁ!?貴様……何者だ?何故、エルヴィアスの魔法を知っている?いや、それ以前に言葉を……まさか……いや、エルヴィアスからの転生者なのか?そんな偶然が……」


想定していなかった事態に、ネウグルは動揺を隠せない。此度の計画はネウグル達王宮魔法師の主導で進められてきた。多くの時間と予算、資源が注ぎ込まれ、そして勇者の転生体の召喚に成功したのである。計画の達成を目前にして、偶然召喚に巻き込まれたイレギュラーによって、計画が最後の最後で頓挫するなど、在ってはならないのだ!


「偶然か、必然か……はたまた神の悪戯か……全部関係ねぇよ。決まってんだよ……俺の姉妹に危害を加えた時点で……あまつさえ性奴隷にしようとか……そして、召喚の触媒に、俺の娘の骸を弄びやがって……国ごとブッ殺ブッ壊してやる!」


それは、光も、梓も、姉妹の誰も見たことがない、本気の怒りと憎しみに表情を歪ませた剣だった。




遂に……入っちまったぜ異世界編!

やるやる詐欺じゃなくなった!

ここまでお付き合い下さった読み手の皆様、どうか、暖かい目で見たって下さい。

その内日本に帰りますから!

次回は、ガチ憤怒モードの剣さんがバトります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。