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114話目 ビーチの支配者

ギリギリ連続更新!

海回最終話です。

【誰もがビーチの主役になれる!飛び入り歓迎カラオケステージ!XX時より毎日開催中!】~御問い合わせは海の家ステイジックまで~


「とゆう、ポスターを見つけたので教えた訳なんだが」


意味深な台詞を残して立ち去った翼と希。それを訝しんだ姉妹達に剣がした説明が、この通りであった。


「浜に面したステージのある海の家があってさ、そこで誰でも歌えるみたいなんだよ。あの二人なら……教えたらこうなって当然だよな~」


「そんなイベントやってたのね~。確かに翼と希は歌うのも目立つのも大好きだから、知っててやり過ごすのは無理よ~」


「ばさねぇとぞみねぇうたうの?みたい!ききたい!」


「くっ!ボクとしたことが迂闊であった!本日は完全SAKUTANのオフ日でコス衣装もウィッグも無いのです!素の聖桜では、ステージに立つ資格も価値も無いのです!」


悔しそうに地団駄を踏む桜に、実鳥が「やっぱり桜ちゃんだなぁ」と、苦笑いを浮かべると。


「衣装あったら、立つ気満々なんだ……」


小町がパターン化されたように呆れるのであった。


「でも……エントリーしたからって、確実にとか、直ぐに歌える訳でもないんじゃないかな?希望者多かったら抽選になったり、着順だったりするかも……それに、私達悪目立ち済みだから、オーディエンス殺到してとんでもない事に……」


「梓って、案外常識あるよな……」


「はるるん……どーゆー意味かな?私が常識ズレしてるのは、けんちゃんへの愛情と色欲と性欲ぐらいのもんだよ!」


「だから、ソレだって」


わいきゃい騒ぐ聖家姉妹を前に、明良は口を挟むタイミングも、挟むべき言葉も見つけられずに立ち尽くしていた……


「大丈夫っすか明良さん。ま、こんだけ女子に囲まれると普通は疲れますかね?」


「剣君……気を遣わせちゃったかな……いや、改めて剣君が凄いなって思うよ。漫画とかだと、姉妹が多くて男が一人だと扱いが雑になったりするのがテンプレートじゃない?なのに、無下にされるどころか、とても慕われてるし……」


「余所ん家の事は解りませんけど……翼と希には都合よく使われてる感が少なからずあるんですけどね……ま、可愛い妹の細やかな我儘に振り回される程度、別に苦でも嫌でもありませんけど。明良さんも今後遊ばれたりするでしょうから、その内普通に馴れちゃいますって」


「遊ばれたりって言った?遊ぶじゃなくて!?姉妹に都合よく使われちゃうポジションは確定なのかな!?」


「……がんばって」


「不安ばかりだよ~……」


そうして雑談が盛り上がる中、問題なくカラオケステージのエントリーを済ませて翼と希が戻ってきた。


「順番的に、15時過ぎ~」


「それまでたっぷり日光浴~」


それから双子のステージが始まるまでの間、皆でウォーターガンで銃撃戦をしたり、各自思い思いに波に揺られたり昼寝したりしてのんびり過ごしたり、かき氷の早食い競争をして頭痛を楽しんだり(?)して、海水浴をしっかり堪能したのであった。




14時を過ぎると、海の家ステイジックに設けられているステージ周辺には、大きな人だかりが出来上がっていた。誰でも気軽に参加が可能なので、性別を問わず大人から子供まで参加者の層は幅広く、夏や海をテーマにした曲や、大勢で盛り上がれる元気な歌が選曲されて、観客も一緒になって、正にお祭り騒ぎの様相である。


「小町、実鳥ちゃんも、なるべく俺の前に居ろよ?どさくさで痴漢するような不届き者がいるかもしれないからな」


「は、はい!宜しくです、剣さん」


「……頼らせてもらうわ、兄さん」


実鳥と小町の二人を守るように、二人の後ろに剣と梓と桜。実鳥の隣に遥。小町の隣に光、そして明良が立っている。燕は人混みでの定位置、剣に肩車されている。


「ま、けんちゃんとはるるんがいる時点で、手を出せる奴なんていないけどね!今も近寄りがたいオーラ出てるっぽいし」


梓の言は正しく、聖家の周辺は他より少しばかり人の密集率が低く、歩いて移動するのに不自由しない程である。


「絶対、豪腕女とか思われてる……都合いいけどさ……」


「……怪力美少女とか、ボクには萌え要素としか思えぬのですが……世間の感性とは、つくづく相容れぬであります」


「それ言ったら、お前リアルに武闘派美少女じゃんかよ。いっぺん、コスプレ演武動画でも配信すればいんじゃね?」


「遥義姉様……そのアイデア頂戴します!すると衣装はやはり格ゲー……鉄○……デドアラ……」


SAKUTANの動画項目に、歌う。踊る。に加え、闘うが追加されたようである。


「……変なスイッチ入れた?」


「仕方ないって、さっちゃんのやる気スイッチ多すぎるから。常に面白い事を探しているから」


「やらずは絶対後悔!やったら後悔しないかも!が信条なのであります!」


「……っとに、ウチの連中はハート強ぇな」


そうゆう遥も、猫耳尻尾付きメイドをやっているのだが。どっこいではなかろうか?と、皆で思っているのだった。


翼と希の出番が近付く中、剣が周りをキョロキョロ見回し、ほんの少し嫌そうな表情を浮かべていることに梓が気付き、同じように辺りを見てみると……


「なんだか……見知った顔が多いような……」


「梓も気付いたか?……あいつら、告知しやがったな……〝TJ〟のファンが大挙していやがる……」


恐らくは、SNSでの事前予告無しの突然の告知。それも、最速でも二時間前だ。それで剣と梓が知っているだけでも三十人は集まっているのである……コアなファン、強すぎる!


そして当然、剣と梓は〝TJ〟のライブ常連ファンには顔バレしている。ファン達に恭しく挨拶されたり、他の姉妹も美少女揃いであることに驚かれたり嫉妬されたり、ささくれだった彼等の心を、燕のエンジェルスマイルが癒したり……てんやわんやありながら、遂に翼と希の順番が回ってきた。


「仲良し三人組の女子大生、カナさん、クミさん、ショーコさんでしたぁっ!いやぁ、みんなとってもキュートで盛り上がったね!今一度皆さん拍手を!あーりがとう、ございましたあ!」


短い茶髪にサングラス、アロハシャツの司会者がノリノリで会場を盛り上げる。それもその筈、彼自身、次の参加者が楽しみで仕方なかったのだ!


「それでは次の参加者をお招きしよう!凄いぞみんな!知ってるか?最近強引なナンパで迷惑だった連中を一掃してくれたヒーロー&ヒロインを!そのヒロインの内二人が、ここに歌いに来てくれたんだぁ!」


「「「ウオォォォォウ!!」」」


司会者の突き上げた拳に合わせ、観客達も雄叫びを上げる!


「……ねぇ剣、恐くて聞かなかったんだけど、貴方達が片付けたならず者って……」


「安心して、海を守る使命を持つ者……ライフセイバーが快く引き受けてくれた上、事後処理もしてくれたから」


「借金執事のお兄さんかしら?」


光が安心している間も、ヒートアップしている司会者のトークは進み、みんなが待ってるヒロイン達が呼び込まれる!


「しかも!二人は双子の高校生!え?本当に?と、言わざるを得ないぜ!それでは……お越し下さい!」


司会者の呼び込みを受け、ステージ横の控えテントから、双子が元気よく飛び出した!ぶるるんっ!と激しく揺れた豊満な胸肉に、観客(主に男)がとても幸せそうな奇声をあげた……そして、サービス精神旺盛な双子は、アレをやる!


「潮風に誘われ、蒼き空より降り立った断罪の翼!ウイング参上!」


「非道な悪には絶望を。理不尽に抗う者に希望を。天より注がれし裁きの輝き!ホープ推参!」


「「我ら、聖姉妹(セイントシスターズ)!」」


完全に、正義のヒロイン気取りな口上である!しかも、大仰なフリまで着けて!司会者が「え?この娘達って厨二?痛くない?」って顔をしているが、そんなのお構いなしである!何故なら……ここは既にアウェイではなくホームだからだ!


「ひゃっほーう!ウイングちゃん、ホープちゃん最っ高!」


「その即興口上が堪らない!」


「それでこそ〝TJ〟のツインボーカル!」


そう……仕込み(サクラ)は万全だったのだ!そこかしこから上がる声援に、一般客もその空気に流されて行く……


「それじゃ、掴みはオッケーって事で!改めまして、ウイングでっす!」


「ホープだよっ!本名NGなので、そう呼んで下さいね!」


とびきり営業スマイルで、再びの自己紹介である。愛想振り撒き、アイドルっぽくウィンクして、キラ星飛ばすその姿に、誰より度肝を抜かれていたのは、実鳥と小町であった。


「あ……あの……翼さんと希さん……なんですよね?」


「普段のぶっきらぼうが、欠片も無い……」


「そういや、二人ともステージモードの二人を見た事なかったか?」


「アタシはバイトで見てたからな……どっから湧き出るんだか、あのプロ根性……」


初めての接客を淡々とこなされた時を思い出し、遥は目から光を失っている……


「え、え~と、それじゃあ歌の前に、少しインタビューしちゃおうかな?とゆうか、セクハラしちゃうねゴメンナサイ!いや……スッゴクお胸が大きいけど、本当に高校生なの?」


「はい!正真正銘のJKですよ!」


「因みにカップは二人ともJで~す!絶賛成長中ですっ!」


「じぇじぇじぇ……J~!?野郎共!俺達の夢は、ここに詰まっていたー!!」


正に熱狂。観客(男の九割)の心は一つとなった!


「あら?確かこの前洗濯した新しいブラ……もっと……」


光お姉ちゃんの呟きはかき消された!


「いや、とんでもない娘が現れたもんだね……それに見事に綺麗に焼けたね~。いや、太ももの辺りとか、お兄さん直視するの躊躇っちゃうな~まるで……」


とか言いつつ、チラチラ双子の太ももに視線が向いちゃう、正直者の司会者さん。それもその筈で……


「そういや、あいつら下だけ水着を着替えているよな?」


「だねぇ。真っ黒のミニスカタイプだから、太ももの白さが際立ってるねぇ」


呑気に事実確認している熟年若夫婦の傍らで、双子の日焼けが何を表現しているか……現役メイドと生粋ヲタは、驚愕に瞳を見開いていた。


「こ、これが狙いだったのかよ?膝上までの日焼けと、ミニスカまでの白い空間……」


「日焼けでニーソを表現したのでありますか!?何も装着せずに、くっきりはっきりとした白と黒の線引き……これは正に、天然の……絶対領域!ありがとうごさいます!」


無駄に手間暇かけた美の表現。何故そんなことをしたのか?それは、双子が互いに見てみたかったからでしかない!それをついでにファンに見せびらかしているのだ!


「一度、日焼けで絶対領域を表現してみたかったんですよ~。ただ、日焼けって将来的に肌に悪いでしょう?」


「だから、日焼け絶対領域の私達は、今年だけの激レアバージョン!もうやらないからね~。日焼け落ちたら二度と見れないよ~。今がシャッターチャンスだぁ!」


観客側から、嵐のように鳴り響くシャッター音。そのリクエストに応えるように、煽るように、双子は太ももを上げたポーズをとったり、足を絡ませて抱き合ったり、巨大な胸を押し付けあったり……


「これ、グラビア撮影会だったっけ?」


「そこかしこで彼女さんに殴られてる男がいるねぇ」


それからどうにか司会者が我を取り戻すまで、約十分。


「いやぁ、まるでアイドルだね、君達……人前で全然緊張しないし、それどころかリラックスしてるよね?」


「はい。私達インディーズでバンドやってまして、人前で歌うのは天職だと思ってますから。私達、トリオス・ジェミニィってバンドやってまーす!動画とかアップしているから、暇があったらググッてね!」


「三組の双子で構成されてる珍しいバンドでーす!ちょっと呟いただけで応援に来てくれたファンのみんな!ありがとー!」


「告知ですか!?ま……まぁいっか。それじゃあそろそろ……歌ってくれるかな?」


翼と希は頷あい、目を閉じて、マイクを両手で持つと口元へと寄せた。ファンサービスをしていた朗らかな雰囲気は消えて失せ、完全に歌への集中に入る……


「この歌は、私達が歌手としてこうあるべき、こうなるべき、こうなりたいと思う、そんな人の歌です」


「それは理想。人の生み出した幻想。架空の存在。でも、確かに現実に影響し、私達の心を震わせた……」


双子は大きく深呼吸すると、合図もなく、声を重ねて曲名を叫んだ。


「「突撃ラ○ハート!」」


それが、何の曲かを知っている観客達が、一斉に膝を折ったり笑いを溢した……


そして、微動だにしない剣さん。


「翼と希はマク○スシリーズ、好きなんだよな……」


「いや、ここまで引っ張って……顰蹙(ひんしゅく)買うんじゃないか?」


心配する遥に対し、剣は軽く鼻で笑い……


「そんなの、実力で黙らせるさ」


剣が確信していた通り、翼と希の歌唱中、誰一人としてステージ前を去らなかった。完全にシンクロした圧倒的な声量は音域が広く。一切タイミングがずれないアクロバティックなパフォーマンス。何よりも歌と音楽を楽しむ笑顔に、誰もが魅了されてしまう……それが解っているから、〝TJ〟のファン達は聴きに来てくれたのである。


曲が終わった時、翼と希に、敵はいなかった……




「結局、アンコールでマ○ロス合計十曲か……」


夕暮れ、人も疎らになった砂浜で、剣は一人、姉妹たちの着替えを待っていた……


すると、翼と希が剣に寄り添うように、両側から腕を取った。


「今日のステージ、最高だった?」


「それ以外、答えは聞かない」


「……幾らでも、褒めてやるよ」


双子は揃って、剣の胸に頭を擦り付けた。二人とも、実に甘えんぼである。


「そだ、お兄ちゃん、ヒナちー返しとく」


翼の胸元から、にゅるっと取り出される妖刀〝緋波〟どう収納されていたかは、永遠に謎である。剣が水着になると隠しようがないので、本日はずっと翼が預かっていたのであった。


「おう、ヒナ。今日一日翼といてどうだった?」


『……圧倒的でした。あんなに沢山の人に注目される高揚感……何だか……クラクラしました~……』


「そっか、二人が武道館やスーパーアリーナに立つ時は、一緒に連れてって貰うといいな」


『や、ヤバイです!死んじゃいますよ~』


下らない会話。基本的に、翼も希も桜も(梓も)ヒナとはこんな会話しかしていない。その所為か、かなり性格が砕けて護り刀としての本質を見失いがちになっているのは、果たして善いことなのか……


「さてと、帰りに晩飯、何を食べようか?」


「刺身!お寿司!」


「しらす丼!アジフライ!」


長かった一日も、もうすぐ終わり。剣と九姉妹にとって、とても有意義な一日であった。







終わったぁ~……

双子のマクロ○好きは、その内詳しく書こうかと……

次回より新展開!もう……引っ張らない!

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