二十九話 つかぬ間の休息
このトーナメント戦が始まってから一度も寄らなかった屋台エリアに着いた。
「まるで祭りだな」
と呟きが漏れてしまうほど屋台エリアは賑わっていて、俺の呟きも喧騒に呑まれて掻き消えた。
「にしても多すぎだろ」
この先にある焼き鳥屋を目指して歩き出したのだが、如何せん人が多すぎて全然進まないのである。だからと言ってこんな大勢の中でスキルを使うわけにはいかないので大人しく人の波に揉まれる。
「……やっと着いた」
比較的会場に近い屋台なのだが、数分かけてやっと着いた。
「……そりゃ並ばないと買えないよな」
何とかして屋台には着いたのだが屋台の前には長蛇の列が出来ている。
諦めるか、と焼き鳥を買うのは断念して近くにあるコンビニ付近に転移して昼食を買う事にした。
「転移、転移っと」
別に見られた所であまり問題にもならないかと思い、その場で転移を行った。
「あれ?鴉田君?」
名前を呼ばれた方を振り向くと知っている顔があった。
「ん?栗原?」
「そ、そうだよ」
「どうしてここに?」
「あ、えっと…支援職部門に出場してて…」
へぇ意外だな、あの大人しそうな栗原がダンジョン対策部隊に志願するなんて。
ついでに説明すると、今回のトーナメント戦は戦闘職部門と支援職部門で分かれている。戦闘職部門では戦闘力を、支援職部門では支援系スキルの効果をコンテスト形式で審査して順位を決める。
「えっと鴉田君はお昼ご飯を買いに?」
「あぁ、屋台で買おうとしたけど人が多過ぎてね」
「私もそうだよ」
と中々知り合いらしい会話が出来ている、別に嬉しくなんかないんだからねッ!(需要ZERO)
「鴉田君…このあと試合の観戦とかする?」
「んー、どうしようかな…」
「も、もしも観戦するなら一緒に観ない…?」
「……まぁ暇だしいっか」
「本当?やったぁ!」
何が嬉しいのかニヤニヤしている、俺と観てそんなに楽しいだろうか?……ハッ!まさか栗原は俺に惚れて!?……ないな、黒歴史が出来るところだった。
「栗原もまだ昼飯買ってないよな?」
「え、うんそうだよ」
「じゃあさっさと買って会場に戻ろうか」
「そうだね」
コンビニに入って、それぞれでコンビニ弁当を買って来た。
因みに俺が肉丼で栗原が蕎麦だった。
「栗原、手を繋いでもいいか?」
「え、えぇぇぇ!て、手!?あ、えと…」
「いや、別に嫌ならいいんだが」
別に手を繋がなくても、体の一部に触れていればいいから嫌ならいいんだが。
「嫌じゃないです!」
「お、おう…」
気を使ってくれたのかな?でもそんなに大声を出さなくても……ほら、周りの人にチラチラ見られてるよ。
「鴉田君と手を……手を……ふふふ」
「えっと…栗原?」
何を言っているかはよく聞こえなかったが、何故か自分の世界に入っているようなので呼び戻した。
「ごめんなさい…私、時々自分の世界に入っちゃうんです…」
「いや、それは別にいいんだがそろそろ移動したいから手を繋いで貰ってもいいか?」
「はい!よ、よろしくお願いします…」
何に対して宜しくなのかよく分からないが、栗原は俺の手を握った。
あ、なんか微笑んでる…可愛い……とそうじゃない、転移っと。
「着いたぞ栗原」
「え……?」
また自分の世界に入っていた栗原を呼び戻すと栗原は呆然としていた。
「……ここは何処ですか?」
「?試合会場だけど」
「えぇぇぇ!?」
栗原、周りの目が痛いので叫ぶのはやめて欲しい。




