第41話 ガーラント・オルグ
「こちらは一般奴隷の中で肉体労働を主とする者達です。単純な労働、生産系の仕事に従事していた者、様々です。また、ここにいる者が全てではなく、外に働きに出している者もおります」
野外から建物の中まで、一般奴隷エリアを見て回ったが、”一般”だけあって、普通の市民がただ暮らし、働いているようなものだ。さすがに、全ての奴隷を見て回り、荷物持ちを探すわけにもいかないので、それにふさわしい者達を幾人か紹介してもらった。皆、そこそこにむさい野郎どもだ。価格帯は30~50万ほどで探してもらった。
そして、なぜか全員、”ぜひに買ってくれ”アピールが凄かった。まあ、気持ちはわかる……この容姿だ。むさいおっさんに買われ、こき使われるより、よっぽどいいだろう。しかも一見、”こんな美少女と二人っきりで冒険できるのよ!”ってわけだ。誰が美少女だ……
まぁ、奴隷契約で主人に滅多なことはできないように、むろん縛りは掛けるが、一緒にいて気持ちのいいものではないな、常にエロい視線で舐めまわすように見られるのは! やはり値段より質にこだわろう……
「価格帯によらず、もう少し見て回っていいですか?」
「もちろんでございます。ユキア様がご納得いくまで付き合わせていただきます」
”ミレイさんの紹介状”効果か、ここまでよくしてもらえるとはね。たいしてカネ落とさないのになぁ……ほんとミレイさん効果。あ~、ミレイさんに会いたい、ミレイさんとイチャイチャしたい、ミレイさんと……
はっ、いかんいかん! 一気に奴隷見すぎて疲れてるな~。もう少ししたら、今日は一旦帰るか。
次に訪れたのは、開放感のある広い平屋だ。いくつもの太いオーク材の柱で大きな切妻屋根(三角屋根)を支えている。その屋根には、これまた大きな煙突が1本飛び出していた。
”トン、カン、トン、カン ゴン、ジュッ ” と中からはリズムの良い音と橙色の火花と熱気が溢れ出てくる。
「ここは当商会の鍛冶場です。当商会お抱えの鍛冶師や奴隷の鍛冶職人もおります」
戦闘奴隷に遜色ないガチムチのおっさんたちが、一心不乱に鉄を打っている。
「ここにいる者は体力も筋力もあり、荷物持ちには最適な者も多ございますが、先程の者達より値は張りますぞ。多少なりとも技術がありますからな」
なるほど。本来の意味で、手に職を持つ者達か。いいね、鍛冶の技術があるなら、武具のメンテとかも頼めそうだ。
幾人かの奴隷の鍛冶職人を見てまわる。話しかけると、俺を見て少し驚いた表情を浮かべるが、簡単な受け答えだけして、すぐに作業に戻る者が大半だった。うん、仕事熱心でよろしい、職人って感じだ。先ほどの露骨にエロい視線を送ってくる奴らとは違う。
少し気分よく歩いていると、ふいに視界が淡い蒼に染まった。
──うっ!
咄嗟に目をつむり、手で顔を覆う。おそるおそる目を開けるが、痛みなどはない。
「どうされました? ユキア様?」
「いえ、なんでも……」
目を開けてから、一人の男性が目に付く。何が、というわけではないが、その男性が少し気になり、作業を見つめる。容姿は周りに劣らず筋肉質だが、全体的に無駄な肉はついておらず、威圧感はなくスッキリとした感じだ。顔もそれなりに端正な顔立ちをしているが、すごく目を引くというほどでもない。
「彼はガーラント・オルグ。31歳男性の借金奴隷です。この街で鍛冶職人として働いておりましたが、独立して自分の店を出したところ経営難となり、家族のため自らを借金奴隷として当商会に売り渡したのです。まぁ、どうも厄介な商人に目を付けられたようですが」
「少し話してもいいですか?」
「もちろん。ガーラント、少し来なさい」
作業を中断してガーラント氏がこちらにやってくる。立つとそれなりに大きいな、180cmくらいはありそうだ。
「こちらのお客様がお前と話したいそうだ」
皆と同じで少し驚いた表情を浮かべたガーラント氏だが、すぐに穏やかな表情となり挨拶してくれた。
「ガーラント・オルグと申します。31歳となります。以前は鍛冶職人として働いておりました。それなりに腕も経験もある方だと自負しております」
気負うことなく自然に自分の強みを語る、客観的に自分の実力を把握している証拠だ。
「ガーラントの申す通り、この者の鍛冶の腕はルーベリスでも指折りのものです。鍛冶職人としての実力は当商会が保証します。だが、ガーラント、この方は冒険者として活動しており、荷物持ちを探しておいでだ」
「そうでしたか。一応、体力と力には自信もあります。そして、冒険者様であれば、武具の整備等でもお役に立てるかと思います」
過度に売り込むこともなく、出来ること、事実を、淡々と述べてくる。うん、好印象だ、人柄も信用できそう。ただ、気になることは……
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