第30話 ルーベリス浄化作戦
「……古代種?……何です、それ??」
「うん、まあ簡単に言えば……稀にいる強い個体ってこと!」
うん、簡単に言い過ぎだ。まあ、レアモンスターってことか。でもあのゴブリン、そんなに強かったか? 一撃で沈んだけど……ああ、あの”青く光っていた剣”だったからか? 一撃でやれたのは。
「それで、そんな強い個体をFランクのユキア君が倒せたのは……なんで??」
「そ、それは…………た、たまたま……たま、玉に! 急所にいい一撃が入ってっ!」
「いや、下ネタかいっ! しかもおっさん臭い! ったく、そのルックスで下ネタ繰り出してたら、『あ、コイツ、そういうのイケる方なんだ!』って思われて、酒奢られて…………気づいたら犯されてるよっ」
怖いわっ! 飛躍しすぎっ! 思わず「ふぁんで(なんで)!?」と、噛んでしまった。
「もう、ユキア君おもしろー。ま、古代種はギルマス案件だから報告したけど、『ユキアに関してミレイ師の弟子だから詮索不要』だって。ただね、わたしに正式にユキア君の担当になれだって、”今後もやらかしそうだから”、だそうだよ」
な、なんか色々と聞きたいことがあるのだが……
「まず、僕って、ミレイさんの弟子だと認識されてるんですか? それになぜギルマスが僕のことを知って……?」
「はぁ~」と深いため息をつかれ、
「いや~、何で知られてないと思うのかが不思議だわ~。それだけ『初心者講習ミレイさん編』は伊達じゃないってことだよ。前少し話したでしょ、『ルーベリス浄化作戦』……」
「え、ええ……」
『ルーベリス浄化作戦』……この夜の産業がお盛んな”不夜城ルーベリス”という城塞都市には、比較的質の悪い冒険者も多かった。歓楽街の裏社会で暗躍する冒険者も相当数いたという。
そこに帝都にある総合調整自由組合本部がミレイさんを『総合調整統括官』という、なんか支部のギルマスより権力のある地位につけてこのルーベリスに送り込んだそうだ。
そこでミレイさんが講師になり、『冒険者中堅研修』を実施した。中堅研修と銘打っているが、実質は問題の多い、かつ裏で犯罪組織と繋がっている疑いのある冒険者を集めたそうだ、受ければ『冒険者ランク昇格』という噂を流して。
そして……3日目が終了した時(というか、開始からぶっ通しで72時間後らしい)、全員、冒険者をやめてルーベリスを去っていったのだという。そして彼らはすべからく、”人が変わったようだった”と語り継がれている……これ『情報過多による精神崩壊』だよね!
「なかなか証拠を掴ませない、あくどい奴らばっかりでさぁ。あんな合法的に”始末”できるなんて、さっすがミレイさんだよ!」
いや、ルーシェさんもこわっ!
「まぁ、ミレイさんは”本当に改心してほしい”、的なところもあったらしいけど。だからつい熱が入って、反抗的な奴には【威圧】で身動きできなくしてたし。糞尿たれ流したり、気絶した奴には〈ヴァロッシュ〉で身ぎれいにして、意識もスッキリさせて寝させないようにしてさぁ。最後らへんはぶつぶつ独り言という奴が多くて、うるさかったけど」
拷問だよね! これは正しい拷問のやり方だよね!
「でもおかげで、その後、彼らがカルマルさんたち軍当局に協力的でさぁ。任意の尋問に全て応えてくれて、もうルーベリスの裏社会が丸裸! やばい犯罪組織が一挙壊滅! ルーベリスもだいぶ住みやすい街になったよ!」
ガクブルだね! 権力ってこわいよね!
「まぁ、そのイメージがどうしても強くて、このルーベリスではギルド研修、講習の類が怖がられちゃうから、困った面もあるのだけれど、あはは」
ルーシェさんが困り顔で笑っている。こんなにお世話になっているルーシェさん、少しでも彼女の役に立ちたい。
「僕がもっと、『初心者講習』の素晴らしさを喧伝します。深夜には宿に帰って少しは睡眠取れるし、10分くらい昼食休憩あるし、トイレだって言えば行かせてもらえます。しかもミレイさんまでついてきてくれて、用を足しながらでも、トイレの薄い扉の向こうから講義を続けてくれる……」
「お願いします……どうかやめてください。これ以上ギルドの研修制度を……」
ん? ルーシェさんが泣きそうな顔で懇願してくる。どうした? そうか、もっと、もっと良さを伝えなければ……僕は満足だったのか? 本当はどうしたかったんだ? 本当はもっとミレイさんと、ミレイさんに……
「初心者講習を受けて、そろそろ1月経ちます。最近思うんです……確かに講習を受けているときはつらかったけど……なんで僕は昼休憩なんて取ったんだろう? なんで深夜、宿に帰ったんだろう? なんでトイレになんか……ミレイさん、なんで僕に【威圧】をしてくれなかったの? 椅子に縛り付けて、できない僕をもっと叱ってほしかっ……」
「あ、あ、あ、あああぁぁぁ! わ、私たちは何てことをっ!!」
「うるさいっ! 何をやってるんだ、お前たちは!!」
白髪を後ろになでつけた、目つきの鋭い男が近寄ってきた。
「ギ、ギルマス……私たちは取り返しのつかないことを……一人の純朴な少年を……一人の……真正の変態に…してしまっ……」
「いいから二人とも私の部屋に来いっ!」
「あ、はい」
「あ、はい」
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