第24話 冒険者として
…………夢、ではないはずだ。おぼろげではあるが、あの人を、感じたんだ。熱くて、激しくて、でもどこか切ない感じがした…………これでお別れじゃないよね……ミレイさん……
コンコン、控えめなノックの後、静かに部屋の扉が開く。
「……ユキア、入るね――って、起きてる!? おかーさーん!」
入ってきた時とは静けさとは真逆な感じで、ドタドタとキーリちゃんが出て行った。
◇
「はぁっ! せいっ!」
剣を一閃し、チビゴブリンの首を刎ね飛ばす。返す刀で、剣だけど、背後にいたチビゴブリンの頭をかち割る。
よし、このチビゴブだけであれば剣だけで倒せる。剣を軽く振り血を払う。本当はここで布で丁寧に血を拭きとるようにと『初心者講習』で習ったのだが、いかんせん俺には……「収納」っと、剣のみを異空間に収納し、再度取り出す。
すると、何ということでしょう、血を拭きとられた綺麗な剣が手元に! そして、チビゴブの体内に埋まっている魔晶石も「収納」する。
「いや、こういう細かい手間が省けるだけでも充分チートだわぁ~」
【異空間魔法】……なぜか馴染みのあるこの魔法。しかも、以前よりはるかに使いこなせている自信がある。『水聖の少女』との交わり。そして……
ブヲンッ
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---魂の操作盤・弐---
【魂の配分】
・体力:21
・筋力:13
・敏捷:14
・器用:15
・知力:23
・耐性:12
・内在魔素量:88
・魔素調整力:119
【魂の回廊】
・水魔法(20) ・清浄水魔法(60) ・水聖魔法(180) ・剣技(30) ・戦技(30) ・薬剤生成(60)
~~~~~~(中略)~~~~~~
・状態異常耐性(70) ・気殺(180) ・状態異常無効(140) ……………
【隷属・魂操作盤壱】
【隷属・魂操作盤弐】
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『水聖の少女』にも”あげる”って言われ、確かあの時も”あげる”って言われた。具体的に何をもらったのかは分からないけど、確かに大事なものをもらった気がする。
「魔法関連ステータス、爆上がり……とくに『魔調力』なんて、100を超えちゃったよ……」
他のステータスが二桁前半なのに、これだけ桁が違う。身体能力が人より極端に劣る感じはしていないので、この『魔調力100越え』は多分異常なはず。【異空間魔法】はこの世界に来た時から何となく使えてたけど、あの白銀の世界でオークや白狼とやり合っていた時とは段違いな気がする。今では……
フォウッ フォウッ ダダダ……
岩弾を数発飛ばし、デカ角兎2匹をしとめる。以前は”魔法を使うぞ”という意識が必要だったが、今は”自分の拳で殴る”くらいの感じだ。まさに自分の手足のように使える。”ノールックバレット”ももはや可能だ。まぁ、見えないと外すけど。【気配感知】のようなスキルがあれば可能かな。
あとは、
【魂の回廊】
・水魔法(20) ・清浄水魔法(60) ・水聖魔法(180)
【清浄水魔法(60)】というスキルが現れ、水聖魔法の取得必要数が〈240〉から〈180〉へと減っている。その差〈60〉。うーん、これは……
「【水聖魔法】の一部を抜き出して、別個の魔法スキルにしてくれたのかな? 取得しやすいように」
おそらく【清浄水魔法】にはあの〈ヴァロッシュ〉という魔法が含まれているのだろう。俺はヴァロッシュにいたく感動し、使えるようになりたいとあの人に訴えていた。
この現象が、直接あの人のおかげか、それともこの【魂の操作盤】の能力なのか。おそらくは後者だろう。だが、”スキルの一部抜き取り”ということができるようになったのも、この【魂の操作盤】という特殊固有スキルをさらに使いこなせるようになったから。そう、〈ヴァロッシュ〉という魔法を認識し、そして魔調力が爆上がりしたからだ。
「……結局は全部、あなたのおかげなんです。ミレイさん……」
◇
「あー、おかえり、ユキア君」
「ただいま、ルーシェさん。今日の分です、お願いします」
冒険者ギルドのカウンターで、麻袋ごと魔晶石や魔獣素材を渡す。ちなみに、魔獣そのものだったり、大きな素材がある場合は、解体場直行だ。
「うん、今日も順調だね。ユキア君が持ってくる魔晶石はきれいに洗ってくれてるから助かるよ~」
「まぁ、魔晶石だけですけど」
魔晶石だけは異空間魔法できれいに抜き取っているが、その他の素材は自分で解体して持ち帰るようにしている。
おそらく今ならデカ角兎の角くらいなら異空間魔法で収納できる自信はある。だが、素材まできれいにして変に怪しまれても嫌だし、何より「基本は大事だよ、解体なんかの面倒くさいこともおろそかにしちゃだめ」って、可愛すぎる顔にわざと怖い表情を作って初心者講習で親切に教えてくれた人を思い出すから。いや、むろんゴルドーさんではない。
「はい、今日の分、3万2千バースです。ソロのFランクにしては相当の稼ぎだねぇ~」
「そうなんですか?」
「うん、ユキア君くらいの歳でFランクなら、日で1万いけばかなりいい方だよ。さっすがウチの”第一号さん”! 期待してるよ!」
「あはは、頑張ります」
「そういえば、3日後にはカルマルさん、迷宮から上がってくるみたいだよ」
「ホントですか! どこに行けば会えますか!?」
「夕方にはうちにも報告に来るみたいだから、待っていれば会えるんじゃない?」
「ありがとうございます。その日は早めに上がって、ここで待ち伏せしときます!」
「待ち伏せって。カルマルさん喜んじゃうよ??」
お礼を言って冒険者ギルドを後にする。ルーシェさんは俺の専属というわけではないが、「ユキア君は私のところに来てね、ミレイさんに頼まれてるから!」と言ってくれる。
というわけで、お言葉に甘えてルーシェさんに何かとお世話になっている。今使っている『初心者講習受講者特典・冒険者セット』、と勝手に俺が呼んでるだけだが、『剣と盾と鎧セット』の1か月間無償貸与もルーシェさんが用意してくれた。初心者用のショートソード、スモールシールド、革製のプロテクターって感じだけど、使いやすさをメインに考えられた中々のものだ。気に入れば無償貸与期間後、相場よりも安く買い取れるとのこと。
「いや~、ほんと『初心者講習』様々だよなぁ……まぁ、死ぬほどきつかったけど」
さ、宿に帰らなきゃ。仕事が待ってる!
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