第22話 合格……そして
それから約2時間、ぶっ通しで筆記試験を行った。約3日半の座学と残り実技講習の分も含めて、みっちり、満載の内容だった。だが、昨日の夜は宿に帰ってがっつり復習していたし、何よりあの【ヴァロッシュ】という気持ちのいい魔法のおかげで、頭のほうもスッキリしていた。おそらく8割、9割は出来たはずだ!
だが、ミレイさんの中での合格ラインがどこかわからないため、目の前で採点を始めたミレイさんを緊張の面持ちで見つめる。正直、ぶっ倒れるんじゃないかと思えるハードな5日間だったけど、ミレイさんはものすごく真剣に、真摯に俺に講義をしてくれた。実技講習も付き合ってくれたし、兎にも角にも感謝しかない。
『だから、俺はミレイさんに失望されたくない、というか認められたいんだ……』
隣ではカルマルさんが机に突っ伏して寝ている。
「『ミレイさんの初心者講習』の最後を見届けるなんざぁ、今後あるかどうかわからねぇからな。最後まで付き合ってやるぜ」
などと、渋い笑みを浮かべて言ってくれたが、その後、「娘に自慢できるぜ、へっへっ」と小さなつぶやきが聞こえてしまった。
「採点が終わりました。結果は100点満点中、92点でした。ユキアさん、お疲れさまでした」
ミレイさんが優しい笑顔で結果を教えてくれた…………が、どうなんだ? 点数的には悪くないと思うが、ミレイさんは満足してくれているのだろうか? 平均点も偏差値も分かんないし、ミレイさんの表情からもイマイチ読み取れない。
「あ、ありがとうございます。本当にミレイさんにはお世話になりました。それで、その……僕は合格なんでしょうか?」
「え? これは合否のある試験ではありませんよ。ただ、講義の復習を兼ねて最後に実施しているだけですから」
「そ、そうじゃなくてっ!! その、これだけミレイさんによくしていただいて! ミレイさんの時間を奪っておいて!! 僕はそれだけの価値のある男だったんでしょうかっ!!」
「おいおい、これはギルドがやってる講習だからな。別にミレイさんがどうこうというわけでは……」
「カルマルさんは黙ってて! これは僕とミレイさんの問題なんだ!!」
「ひいっ、はい!」
いつの間にか起きていて、口をはさんできたカルマルさんを怒鳴りつけてしまった。もう感情が高ぶってしまって自分でも何言ってるのかわからない。とにかくミレイさんに認められたいという一心だ!
「ユキアさん、立ってください」
「はい」
ミレイさんが俺の正面に立ち、美しい琥珀色の瞳で見つめてくる。そして…………
「ユッくん、スゴーーーい!! この試験で9割を超えるなんて!! 宿に帰っても復習してたの?? いやんっもうっ! なんて健気なの! いやんっ いやんっ!!」
もうハグというか、揉みくちゃにされる。そして、優しく両手で頬をはさまれ、
「もうすごいよ、ユッくん。あと半年くらい私が教えれば、『第一種帝国管理登用試験』も一発合格できちゃうくらいだよ!」
「ええっ!! まじかよっ! ユキア、お前ナニモンだっ!! 貴族かっ! いいとこのボンボンだったのか!!」
隣でカルマルさんが腰を抜かしている。
「後でゆっくりあげるつもりだったけど、もう我慢できないから、今ちょっとだけ……」
ミレイさんの形の良い唇が、俺の唇に押し付けられる……キスしちゃった。最高に柔らかく、それでいて絹のように滑らかな感触。強烈なハグで腰と頭をがっちりとホールドされ、逃れることができない。それに全くそんなつもりもない。
脳天を突き抜けるようなシビレと多幸感を感じていると、さらにミレイさんが舌を絡ませてくる。と、同時に何かが流れ込んできた。「え!? つ、唾液…!?」とちょっと興奮したが、違う……これは……
『あの川で”水聖の少女”と一つになった時に感じた……』
そう、あの時、体中の血管に熱くて濃い血が流れたような……あの感じ。そう感じた刹那、あまりの気持ちよさに、俺は意識を失った。
◇
…………これは夢……?? 身体中全てにミレイさんのぬくもりを感じる……
ごめんね、ユッくん。本当はもう少しゆっくり慣らしてあげたかったんだけど……帝都に戻らないといけなくなっちゃって。今度こっちにいつ戻れるか分からないから、今……全部あげるね……大丈夫…ユッくんも水聖族に愛されてるでしょ? さっきの”チュー”でおねーさん、分かったんだから~ ……ユッくん……最後に君みたいな子に会えてよかった~…………あ、ああ…ん、ユッくん……私のすべてを…受け入れて…………
……ミレイさんの暖かいものが俺の中に流れ込んでくる……そして俺はミレイさんの中に入っている……一つになっている…身体も……魔素も…こんなに溶け合うものなのか…いや、これは魂そのものが繋がったような…………
お読みいただきありがとうございます。
面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




