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再生の賢者 ~スキルポイント目当てで低級奴隷を漁っていたら、再生の賢者と呼ばれるハメに~  作者: 和食 三昧


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第2話 魂の操作盤(ソウルボード)

 それは高級なアンティーク家具に使われていそうな艶のある木製の板。あるいは樹齢何千年の神木から切り出され、神へと奉納するため、熟練の職人により加工された格調高き木版のよう。それに文字が刻まれている。


=====================

---魂の操作盤(ソウルボード)---

名:○○○○

年齢:15

魂位:1

職:————

魂の欠片:0

特殊固有スキル:【魂の操作(ソウルオペレイト)翠緑(すいりょく)-】 【異空間魔法】

スキル:

=====================


「なんだよ……これ??」


 本日3度目の同じセリフ、自分でも悲しくなるくらい語彙力が低下している。だが、そんなことが気にならないくらい現状把握ができない。


「名前がない……? 魔法……?? これって……」


 ズドンッ ガガッ 


 ハッとして顔を上げると、ゴブリン的な奴と、オーク的な奴がこちらに向かってきている。しかもそのオーク的な奴は、さっき胸を突き刺された奴より一回りも二回りも大きく、しかも恐ろしく凶暴な顔をしている。そいつが……頑丈で重そうな鋼鉄製の馬車を頭上に持ち上げて……


「……う、うそだろ……や、やめ…………」


 腰が抜けて立てない俺は、とにかく必死に後ずさろうとする。


「グガッ、ギャッ ギャッ ギャッ!」


 ゴブリン的な奴が醜悪な顔をさらに歪めて笑っている。完全に馬鹿にされてるようだ。くそっ、何かないか、武器……剣……はあいつらの向こう側だ。剣……魔法?? なんか魔法って書いてあったな、あの板に……


「くそっ! 出ろ、ファイアーボール! ウィンドカッター! なんでもいいから!!」


 ファンタジー好きな俺は、恥ずかしげもなく片手を奴らに向けて、それっぽいことをするが、そんなに都合よくはいかない。魔法、魔法……なんて書いてあった?? 視界の隅にプカプカ浮いている木版を再度見ると……


「……い、異空間魔法! ってなんだよ!!」


「ブモォゥ~~!!」


 オーク的な奴が鋼鉄製の馬車を俺に向かって投げてきた! 俺は何も考えられず反射的に目を瞑る……が、衝撃も痛みも中々来ない。頭の片隅で『……即死か?』と考えながら目を開けると、馬車を投げ終えた格好のオーク的な奴と、醜いながらもポカンとした表情を浮かべるゴブリン的な奴らが数匹、立ち止まってこっちを見ている。


「な、なんだ……? あれ、馬車は??」


 疑問が浮かぶと同時に、俺は理解していた、【異空間魔法】というものを。なぜかわかる、その使い方が。自分の体を動かすのにどうすればよいか、などと考えずに動かせるように、その使い方がわかる。


「ブゥモォォ~~」 「グギャァァッ」


 オーク的、ゴブリン的生命体どもが、なぜか怒りの形相で俺に向かってくる。俺は先程までの完全パニック状態からは脱していた。なぜなら、向かってくる奴らへの対処がなんとか出来そうだから。ぶつけてやればいい、取り込んだあれを!


「……()けっ! 鉄馬車クラァァァッシュ!!」


 グヲォンッ!


 俺の目の前に黒霧の靄(くろぎりのもや)が現れ、そこから先程投げ付けられた鋼鉄製の馬車がすごい勢いで射出(・・)される。


 ドガァンッ


 鉄馬車は1匹のオーク的な奴と、数匹のゴブリン的な奴をまとめて吹っ飛ばし、数メートル先に奇麗に鎮座した。


「……おお」


 その鉄馬車の佇まいに、なぜか少し感動した俺は、だが自らの安全のためにオーク的な……めんどくせぇオークでいいか……オークとゴブリンが完全に死んでいるか確認する。


「……死んでるみたいだな。よかった……」


 そのまま倒れこみ横になりたかった俺だが、それはできなかった。なぜなら……


「さ、寒い……」


 それもそのはず、この雪降り積もる一面の銀世界に、俺は…………全裸だった。


「…………は??」


 ◇


「寒いっ、冷たいっ とにかく馬車の中に……」


 雄々しく佇む馬車に乗り込もうとした俺だが、


「ぐっ、扉が開かんっ……」


 先程の衝撃でなのか扉が歪んで中々開かない。


「ぬぐぐ……ぐ……むあっ!」   


バンッ!

 

 とにかく力任せに扉を引っ張っていたら、何とか開いた。


「ふぅ~~、あったか……くはないか……そりゃそうだ…」


 見た目鋼鉄製の馬車だ、暖房でも効いてない限り暖かくはならないだろう。まあそれでも外よりは幾分かましだ。床には厚めの布が敷いてあり、申し訳程度に保温効果もある。馬車と言っても向かい合わせの席で、いわゆるお姫様が乗るような馬車ではない。電車のように両サイドに横並びの席が10名分ほどあり、計20名くらいは乗れるような作りだ。鋼鉄製の見た目も相まって、護送車のような印象を受ける。

 マントのような布と毛布があったので、とりあえずそれに包まり暖をとる。服とか靴がないか探すが、あるのは剣が3本と保存食っぽい硬いパンが数個。


「……とにかく服と靴……このままじゃ凍傷になってしまう」


 馬車から外を眺めるが、周りには葉の落ちた木々と、死んだオークとゴブリン、そして……人間と思しき死体が6つ。


「……追い剥ぐか……? いや、さすがに……いやでもこのままじゃ……」


 あまりの現実味のなさと、切羽詰まった状況に倫理観と恐怖感が麻痺している。やるなら今しかない……

 

 毛布に包まり馬車を出る。一番近い鎧姿の男に近づく。ゴブリンにめった刺しされていた男だ。少しでも息がないか期待するが、すでに息絶えていた。


「死体なんて生で初めて見るのに……」


 さほどの動揺がない。感覚が麻痺している証拠だろう。


「……追い剥ぐにしても、鎧なんてどうやって取れば……ああ、そうか」

 

 俺は死体に手をかざし、微量の魔素(・・)を死体以外に這わせる。


 ――ヒュッ!


 目の前には衣服まではがされた全裸の男が横たわっていた。

 【異空間魔法】……男が纏っていた無機物を俺の異空間に収納する。


「……えっ? 遺体も収納できるのか……??」


 感覚的にできるのが分かる。だが、さすがにそれは躊躇する。せめて埋葬を……と思うが、雪も深く、地面を掘る道具もない。何の意味もなさないが、雪をかぶせ覆い隠す。


「……悪いな」


 と言いながらも、さほどの罪悪感もない。ここでは日常的――とまではいかなくても、さほど珍しいことでもない……


「……感覚の麻痺??……いや、なんだこの感じ……」


 なんだかよくわからない感覚におおわれるが、


「と、とにかく寒い……残りもやってしまおう」

お読みいただきありがとうございます。

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