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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第8章 神敵、『否定を否定』する

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第78話 決戦前夜と、最終正妻戦争(本妻不在)


 ――数日後。

 今日もミラとコアちゃんはクレズマーを引き連れてどこかに行ってしまったようだ。


「……ひまだ」


 正直女神がぶちぎれて攻めてくるかと思ったのだが……こちらの世界どころか、セシリィたちがいる世界にも変化はない。

 神ともあろうものがこの世界を見つけられていないとは思えないのだが……。


「ルシアン様! 見てください!」


 アイリスが持ってきたのは、特大の魔石と狼――『カース・フェンリル』の生首だ。

 瘴気の森に放していた個体がカース化したのだろう。


「懐かしいな、カースフェンリルか?」

「はい! 私とルシアン様を引き合わせてくれた愛のキューピットちゃんです!」


 そのキューピットちゃんの生首を掲げて笑うアイリス、実に微笑ましい。

 今やSランクの魔物など、アイリスにとっては赤子同然だろう。


「おーいルシアーン! 見てくれー!」


 そこにやってきたのは、同じく瘴気の森から帰ってきたらしいマール。

 その手には……というか巨大なイカを引きずっている。


 森に池はあったが……そんな奴いたっけか?


「とったどー!」

「あ、ああ。うむ。そんな奴いたのか」

「以前森の生物を増やすために一緒に集めただろう? その時にこっそり小さいイカを忍ばせたのだ!」

「……そうか。もうそんなに成長したのか」


 牛などの家畜の他にモンスターを適当に乱獲して放り込んだのだが……マールの奴め、いつの間に。

 この短期間での異常な成長……魔力の濃さゆえか、それとも暗黒世界樹の影響か。


「なんだアイリス、そんな小さい魔石で満足してるのか? 仕方ない奴め! わっはっはっ!」

「むっ! たまたま大きいモンスターが見つからなかっただけですぅ!」

「言い訳などするな! ルシアンの隣――ミラの反対側は我に任せよ!」

「イカ臭いマールさんなんかより! 私の方がふさわしいです!」

「何をー!?」

「何ですか!?」


 ケンカが始まった。


「いいでしょう! 今から私と勝負です!」

「ほう? 我に挑むというのか? ルシアンの“左手”である我に!」

「それを言うなら“左腕”――じゃなくて“右腕”でしょう!」

「我とルシアンを引き合わせてくれた邪神の“左手”にかけているのだ! このセンスがわからぬとは……アイリスもまだまだだな!」

「わかってたまるかーーー! 全然うまくないっ!!!」

「何をーーー!!!」


 いよいよ取っ組み合いが始まるかというところ。


「あなたたち、やめなさい」

「リエラさん……」

「むぅ……」


 リエラの制止する声が。

 見ると、ロルウェンナやラビラビィ、チャチャまでいる。

 そしてロルウェンナが……いつになく真剣な顔で宣言した。


「それでは……これより、第1回『ルシアン様に抱いてもらう順番選手権』を開始しまぁす!」


 ん?


「くじ引きでお題を決めて、1対1で勝負します! それぞれ総当たり戦で順位を決めまぁす!」

「は?」

「大会委員長はリエラちゃん! 司会は私、ロルウェンナです!」


 澄まし顔のリエラと、ほんわかしたロルウェンナが対照的――じゃなくて。

 何だこれは。


「いいでしょう! 望むところです!」

「はっはっはっ! しかし我とアイリスのお題は“戦い”で頼むぞ!」

「……仕方ないですね! ルシアンくん、蘇生させてあげてね!」

「……いいけど」


 こうして始まった謎の選手権。

 まず最初にアイリスとマールが戦い始める。

 おたがい容赦なく爆発させたり切り刻んだり吹っ飛んだり吹っ飛ばされたり……最終的には引き分けに終わった。


「……さ、さすが……マールさん、ですね……」

「アイリスこそ……まさかここまでやるとは……」

「あなたこそ……“左手”に相応しい……です」

「……いいや、アイリスの方が……“右腕”に相応しい……」


 そのまま気を失った2人。


「おーっと! 2人とも気絶しちゃいましたね! 大会委員長のリエラさん、どうしますかぁ?」

「このまま不戦敗ということで処理しましょう」

「さすがは『冷鉄の美女!』 淡々と処理していくぅー!」


 ああ、無情にして無常。


「お次は――」

「私と“わらわ女”の歌勝負よ!」


 おっと、意外なことにラビラビィがチャチャを指名しての歌勝負とは。


「わらわにお歌で挑むとは……いい度胸なのであーる! 褒めて遣わすのであーる!」

「はん! 私だってなぁ! 100年も聖女やって散々糞みてぇな聖歌を歌ってきたんだよ! ぽっと出のてめぇなんかとは年季がちげぇ!」

「むー! わらわだって……わらわだってぇ~~~!」


 わらわだって……何だ?

 しかし次の言葉が紡がれることなく、歌勝負が始まった。

 チャチャ・ゴーレムが奏でる素晴らしい演奏とともに、順番に歌う2人。


「――そこまで! 勝者は……チャチャちゃん!」

「わぁ~い!」

「ちょっ!? なんでだよーっ!」


 ラビラビィは納得できない様子で、大会委員長兼審査員のリエラに詰め寄る。


「理由は単純明快。聖歌の歌詞で『神』の部分を『ルゥくん』と無理やり変えたからですね。それによってリズムに狂いが生じましたので。変えたい気持ちはわかりますが」

「ぐぬぬぬ~!」


 順当な理由だった。


「では続いての勝負は――」


 その後、リエラがロルウェンナに化粧勝負を挑んで大差で負けたり、目覚めたアイリスがリエラと戦って再び気絶したり、マールとチャチャの揉み心地勝負だったり……。


 気が付けば夜も更け、みんな道端で眠りこけていた。

 快適な世界ではあるが、風邪を引いては困るとそれぞれに毛布を掛ける。


「……なんだったんだ……」


 よくわからないきっかけで始まった、よくわからない勝負。

 途中から勝敗というよりは自慢大会になっていった。

 もしかしたら、この世界に閉じ込められている鬱憤(うっぷん)を晴らしたかったのかもしれない。


「……ふふ」


 彼女たちの笑顔を見ていると、いつの間にか自分も笑顔になっていたことに気が付いた。

 守るべき笑顔、守るべき人たち。大事な、愛する女性たち。




「ならばこそ、行こう。神を殺しに――」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話の投稿は

20時10分頃

となります!

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