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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第1章 誇り高く上を向くもの

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第7話 ヒキガエルへの鉄槌と、没落騎士の涙


「いえ、私は既にこの方――ルシアン様の恋人(もの)ですので」


 迷いなく言い放つ彼女。その横顔はやはり美しい。

 嘘やごまかしは似合わないな。


「きゅー!(今のはよかったわね! 仕方ないから私も認めてあげるわ、ルシアンのロケット処理係としてね!)」

「(そりゃありがたいが……珍しいな。ミラが新しい女の子を認めるなんて)」

「(30%くらい皮肉よ!)」

「(その30%、多分100%だぜ……?)」

「(フンだ! ところで……ロケットってなぁに?)」


 なんて会話をしている間に、目の前のヒキガエルがゴブリンの顔をぐちゃぐちゃにしたようなものに変化する。


「……は? いま、なんと……?」

「ですから、私はルシアン様の恋人ですので」

「この、ドブネズミのような男のものだと!? 没落騎士の分際で、私の慈悲を無下にするのか!」


 今のはかちんときたぞ!

 ゴブリンにドブネズミ呼ばわりされたんだが!?


「しかも! 私に(すが)らなければ『暗黒の月』が手に入らない! つまりその娘が治ることはないのだぞ!」

「それは……」


 もういいか。これ以上アイリスに似合わないマネをさせる訳にもいくまい。


「アイリス」

「はい。バルトス伯爵、こちらが『暗黒の月』で間違いないでしょうか?」


 俺の合図で、カバンから取り出したケースに入った『暗黒の月』。

 それを見た伯爵の顔がゴブリンからブルーゴブリンに進化した。


「何だとっ!? い、いやしかし! その子の治療には特別な魔道具が――『魔素吸引機』が必要で!」

「もういいだろう?」

「な、何がだ!?」

「この子の治療は、既に終わっている」

「……は? え?」


 『暗黒の月』で結晶を中和、融解(ゆうかい)。手厚くやるなら、その後残った(ちり)を体外に放出。これは別にやってもやらなくてもいい。

 このくらいの治療など、花がなくても、話しながらでもできる。


「ば、ばかな……!」

「へ? 本当だ、苦しくない……」


 言われるまで気が付かなかったらしいユナちゃん。将来大物になるな。


「な、なんてことを……貴様ぁっ!?」

「アイリスの美貌に目が眩み、どうにかして手籠(てご)めにしたいと……罪のない少女を人工的に『魔晶肺』にして、その治療のために力を貸すふりして恩を売り婚姻を迫ったが、イケメン魔術師に邪魔された――ってところだろう?」

「んなぁっ!?」

「しかも、彼女が弟を(うしな)ったのと同じ病を利用して……アイリスが見捨てる訳ないもんな?」

「ぐ、ぐぬぬぬ……!」


 あの日たまたまアイリスと出会わなければ。彼女が死ななければ。

 そう思うと寒気がする。


「そんな……じゃあ、ユナちゃんの病気は……」

「お、お姉ちゃん……」

「よかった……弟と同じ苦しみをする子はいなかったんだ……」

「お姉ちゃん……!」


 これだ。

 (だま)されていたというのに、まずは幼い子の無事を喜べるこの気高さ。

 その涙は、何よりも美しい。


「何を泣いておる……だ、騙される方が悪い! 私は……私は貴族だぞ! 伯爵だぞ! 偉いんだぞ!」


 まさか、この豚はアイリスの涙が悔し涙だと思っているのか?

 本当に救えないな。


「貴様……貴様のようなドブネズミのせいだ……貴様魔術師だというなら勝負しろ!」

「は?」

「我が誇る魔術師部隊『簒奪(さんだつ)の猟犬』と勝負だ!!!」




 ◇◇◇◇◇◇


 なぜか勝負することになってしまった。

 

 とはいえ、実はワクワクしている。

 それは、まだ見ぬ魔法と出会える可能性があるからだ。

 俺の知らない魔法、俺の知らない禁忌……ワクワクするじゃあないか。


 でかい屋敷の裏にある、これまた広大な訓練場のような場所にて、集められた38人の魔術師。

 一体どんな魔法を見せてくれるのか。


「では……我が『簒奪(さんだつ)の猟犬』が勝てばアイリス嬢は我の物となる!」

「はい!」


 そして案外アイリスもノリノリで、敵の条件をあっさり受け入れてしまった。

 信頼されているともいえるか。


「(女の子は、誰だってお姫様になりたいんですぅ! 誰かに颯爽(さっそう)と助けて欲しいんですぅ!)」


そういうもんか。


「……そして、ないと思うが、万が一我々が負けたら……“アイリス嬢の家の没落について”我から話すと……何のことやら」


 既にこの時点で察しが付くが……リエラが調べてくれた資料に()っていたのだ。

 アイリス――ラインハルト家が没落した原因に、こいつが関わっていると。

 ついでなので、こいつの口から直接話させようって魂胆だ。


「では……勝負は『簒奪(さんだつ)の猟犬』の総勢38名が順番に戦い、貴様が生き残れば勝ち。それでいいな?」

「構わない」


 1人に対して38人とは。

 姑息すぎて笑えるが、まあ問題ない。

 俺は死んでも死なないし。


「では――1人目、マールーン! 行けっ!」

「はっ! 『“炎よ、原初より存在するを紅き炎よ。命の源たる魔素よ――』」

「……はぁ」


 詠唱を聞いて、一気に興味が失せた。

 何も詠唱を否定する訳ではない。不得意だったり複雑な魔法の補助として詠唱は重要、この俺でさえも詠唱を必要とするものはある。


 だがこいつらは……決闘の場で詠唱をしているのだ。

 要は『今からこの魔法を使うよ!』って言ってるようなものである。

 故に、邪魔をするのも打ち消すのも乗っ取るのも、やりたい放題だ。


穿(うが)つ炎、降り注ぐ槍――『フレイムレイン!』……あれ?」

「『マジックキャンセル』」


 対象の練っている魔術、途中で魔素を解放する――魔法というよりは技法(スキル)か。


「『マジックキャンセル』だと!? 発動させる最中にそんなことできる訳が――!」

「もういいや。お前ら全員でかかって来いよ」


 奴らの(まと)っている魔力の質や量的に、あまり最初の奴と大差はなさそうだ。

 時間の無駄。


「言ったな!? よし全員でやってしまえ!」


 バルトスの号令で、一斉に詠唱を始める『猟犬(ポチ)』たち。

 予想通り、全員詠唱から始めている。


「『マジックスティール』×38」

「なっ!?


 38人全員の魔法に干渉、対象を『自分自身』に変更。

 そして……遅々として進まない魔法の発動を手助けしてやる。


「ごはぁっ!?」

「んぎゃあああ!?」

「あばばばばああああああっ!?」

「た、たすけ――あああああ!?」


 38人が絶叫を上げながら……氷漬けになったり、火だるまになったり、岩の槍で貫かれたり、風の刃で切り刻まれたり。

 何人か死んでそうだが、まあ自業自得ってことで。


「き、貴様っ! 卑怯だぞ! 自分の魔法で戦え!」

「戦うったって……まあいいか」


 既に相手がいないことに気が付いていないのか……しかしそう言うなら、バルトス本人に魔法を食らわせてやろう。


「極大地属性魔法、『破星降臨(ブレイク・アース)』」

「はへぇ……?」

「すごい……一瞬であんなに大きな魔法が!」


 頭上に大きな、バルトスの屋敷よりも数倍の大きさの岩の塊を創造する。

 別に禁忌魔法でも何でもない、基本の属性魔法である。

 アイリスがうっとりした目で見つめてくるが、これで満足だろうか。


「や、やめろぉっ!? そんな魔法――」

「ふっ。『やめろ』と言われたらやりたくなる、そうだろう?」

「たす! たしゅけてくださいいい! おねがいしましゅぅぅぅ!!!」


 鼻から水を垂れ流し、何度も土下座をするバルトス。


「お前は……命乞いに耳を傾けたことは?」

「ももも、もちろんありましゅぅぅぅぅ!」

「じゃあやめない。人に命乞いさせるようなマネしてきた報いだ。死ね」


 指をパチンとならし、『破星降臨(ブレイク・アース)』を落とす。

 立派なお屋敷を半壊させ、バルトスの頭上近くまで迫る巨石。


「しょんなああああああああああ~~~~~――…………あ」


 穴という穴から水を垂れ流し、股間も濡らし……そしてついには気絶。

 まぁ、とりあえずこんなもんだろう。

 役目を終えた巨石を適当なところにゆっくり降ろす。


「(ルシアン、お姫様が待ってるよ! かっこいいこと言ってあげて!)」


 やれやれ、仕方がない。


「……優しいお前のために、殺しはしない。だが俺の『恋人』を泣かせた報いだ。これくらいは勘弁してくれ」

「はい、ルシアン様……!」


 

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話は

20時50分頃

となります!

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