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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第1章 誇り高く上を向くもの

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第6話 卑劣な伯爵の求婚と、迷いなき恋人宣言


 目的地に向かう道すがら、アイリスに詳しい事情を聞く。


「その女の子……『魔晶肺』を患ってしまったんです。私の亡くなった弟も同じ病で……」

「ふむ……」


 肺の中に微細な魔力の結晶が溜まり、呼吸のたびに内臓を削る奇病。

 確かにこの『魔晶肺』の結晶を中和するのに『暗黒の月』は無難に用いられる、特効薬である。


「その子、私が『暗黒の月』を取りに行く時も……笑いながら『無理しないでね』って……咳き込みながら……」

「……そうか」


 気になっていた点が確信に変わる。


「(ねぇねぇ、これってさぁ……)」

「(……そうだな)」


 この『魔晶肺』、本来は体内での過剰な魔力生成に体が処理しきれなくなることが原因で、肺に魔力結晶が溜まるのはその結果に過ぎないのだが、その際に意識は完全に失われ、昏睡状態に(おちい)る。

 つまり、会話などできない。


「(『魔晶肺』を模した暗殺……古くから用いられる暗殺方法だな)」

「(だよねぇ~……)」


 その女の子の暗殺が目的か、はたまた別の目的があるのか。

 恐らく後者だろう。


「(昨日、あの後リエラが教えてくれたことも気になるね)」

「(……ああ)」


 アイリスの身辺調査をこっそり行っていたらしいリエラから届いた書簡。

 そこには、アイリスがなぜ貧乏なのか、今の状況は、などのことが細かく記されていた。


 元々騎士爵だった彼女の家は数年前にとある事情で没落。

 父は処刑、残された借金に母も心労がたまって病死。貧乏なのはこの辺が理由らしい。

 さらに――。


「見えました! あそこが、その子が今お世話になっている……バルトス・フォン・ゲルマイン伯爵のお屋敷です!」

「ほう、立派な屋敷だ」


 この辺一帯を治める領主、ゲルマイン家の屋敷。

 ぱっと見では視界に収まりきらない。

 相当稼いでいらっしゃるようだ。


「(あのこと、本当かもですね……!)」

「(『魔石の闇取引でのし上がった成金。不当な方法で美しいものを集める“蒐集家(コレクター)”である可能性が高い』、か。そうかもな)」


 短い調査時間だったとはいえ、リエラほどの女が誤情報を俺に伝えるはずがない。

 いずれにしろ、警戒しておくにこしたことはないだろう。


「ふふ、もしこれでその子が治ったら、私はもう思い残すことはありません!」

「何を……」


 既にアイリスは俺のものだ。

 勝手に死ぬようなことは許さない。


「ですから、心置きなくあなたについて行けます!」

「……ああ」


 清々しい笑顔を向けるアイリス。

 もう既に治療を確信しているらしい。


「(むっきー! 何なんですかこの女正妻面して! こうなったら私も人化して――)」

「(落ち着け。それだけのために人化してたらさすがの俺でも破産してしまう)」


 お前が正妻だ、と言うと調子に乗って人化しそうだから黙っておこう。


「では早速門番さんに話をしてきますね!」

「あ、待て――」

「はい?」


 アイリスを招き寄せて耳打ちをする。


「……『暗黒の月』が手に入ったこと、俺が合図するまで秘密にしていろ」

「ひゃっ!? ひゃい~……」


 顔を真っ赤にしながら頷くアイリス。

 そのまま門番の所にまで向かって行ったが……大丈夫だろうか。




 ◇◇◇◇◇◇


「アイリスお姉ちゃん――ゴホゴホッ! 無事でよか――ゴホゴホゴホ……」

「ユナちゃん、無理しないで……!」


 門番に案内されたのは、質のいいベッドで横たわっている少女の部屋だった。

 見るからに体調が悪そうだ。


「ユナちゃんとやら、少し体を見せてくれるかい?」

「へ? お兄さんだぁれ? もしかして……アイリスお姉ちゃんの恋人!?」

「そんなところだ。少し触るよ」

「ゴホゴホ……うん、いいよ! 後でお姉ちゃんとのお話、聞かせて――ゴホォッ!」


 おませな子……というか苦しいのにそんなこと喋るなと言いたい。


「こ、恋人……えへへ……!」

「(こっちはこっちで嬉しそうにしちゃって! 正妻は私ですけどね!)」


 その通りだから、顔を叩かないで欲しい。

 しかしこの子の状態は――。


「(やはり、予想通りだな)」

「(肺に結晶を生じさせるための、不自然な魔力供給の術式痕があるね)」

「(ああ。吐き気がするほど雑な仕事だ。暗殺者なりたての子どもがやったレベルだぞ)」

「(病気を装うにしても、もっとうまくやるよね~)」


 呆れていいのか悲しめばいいのか怒ればいいのか、よくわからない気持ち。

 それを打ち払ってくれたのは、廊下から聞こえるドスンドスンという不躾(ぶしつけ)な足音だった。


「入るぞ! おお、アイリス嬢! よくぞ無事で――」


 ユナちゃんの診察をちょうど終えたところに、この屋敷の持ち主と思われる人物――バルトスが部屋に入ってきた。

 言っちゃ悪いが、(みにく)いヒキガエルのような面だ。


「――貴様! 何者だ!?」

「失礼、私は流れの医者でございます。たまたまアイリスさんからお話を伺いましてこちらに――」

「医者だぁ!? ふん、この娘の治療に必要なのは『暗黒の月』だけ! アイリスよ、手に入ったのか?」


 医者に診られては困ることがあるとでも言うように、バルトスがアイリスに詰め寄る。


「え、えっとぉ~……」

「やはり『死の森』に1人では心細かろう! 我が魔術師軍団を格安で護衛につけてやろうか!」

「そ、そのぉ~……実はぁ~……」


 いかん。

 まじめで誠実なアイリスに嘘を付くのは至難の(わざ)だったらしい。

 これは俺のミスか。


「どうした!? もし金が足りないなら……そうだ、お前がわしの嫁に来れば解決だぞ! どうだ!?」

「え……?」


 おお、どうやら向こうが先に我慢できなかったらしい。

 アイリスが自身の嘘を忘れてきょとんとしている。


「そうだ、それがいい! そうすればお前のお家復興も夢じゃ――」

「いえ、私は既にこの方――ルシアン様の恋人(もの)ですので」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話は

20時30分頃

となりますよろしくお願いします!

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