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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第8章 神敵、『否定を否定』する

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第69話 王国を襲う天使の策略と、無関係の大賢者


「――ということがあったようだ」


 大天使と思われる者たちとソニプロフェン王国の王との密談、記憶から再現したその場面をアイリスたちに見せる。


「そんな……! 罪のない人たちが危ない目に! 急いで助けに行きましょう!」

「まあ待て。既にこの場面は3日前、王国の民は蹂躙(じゅうりん)されつくしているだろうな」

「そんなっ!?」


 アイリスだけでなく、ラビラビィたちも絶句している。


「……そして、これが今の惨状だな」

「……何よこれ! 国を預かる身でありながら……怯えてるだけなの!?」


 そこには、部屋の隅で膝を抱えている王や臣下の者たち。

 中には漏らしている者もいるようだ。


「そして、これが王都だな」

「ああ……民が……女性が!?」


 そこには大量の天使たちが町や人々を蹂躙(じゅうりん)する姿が映し出されていた。

 3日前に王と対面していた“武”の大天使などは、女性を犯しながら男性を引きちぎっている。


 もちろん、局部は黒塗り加工だ。


「ひどすぎる……これが天使のやることなの……?」

「ひどい……あんまりです……!」


 アイリスが顔を手で覆い、悲しむそぶりを見せるが……。

 しかし指の隙間からこちらをチラチラ見ている。


「(チラチラ)」

「…………」

「(チラチラ)」

「…………」

「(ちょっとぉ、アイリスは正義感が強いんだから! からかうのはやめてあげて!)」


 やれやれ、仕方がない。

 アイリスの奴め、しっかり俺のことがわかっているようだ。


「――というのが、本来王国が辿るはずだった『神の定めた運命、あるべき姿』だ」


 指をパチンと弾くと……蹂躙(じゅうりん)されていた人たちの姿が全てゴブリンに変わった。

 もちろんこちら側の映像だけだが。


「『魂装幻夢(ファンタズムヴェール)』でゴブリンを人間に見せていた。天使たちは知らないうちにゴブリンを犯している、という訳だ」

「やっぱり! ルシアン様はお優しいですもんね」

「優しくはないぞ。王族共はそのままだ」

「……まあ」


 さしものアイリスも、遂には彼らに同情することはやめたようだ。


「……国の女性を『どうぞご自由に!』なんて差し出すゴミクズども……ぜってぇー許さねぇ! だけどよぉ――」

「同感です。ですがルシアン様、家や畑など民の財産が傷つけられているのは事実。急ぎ救援に行くべきかと」


 ラビラビィやリエラ言うことも一理ある。

 が――。


「その必要はない。なぜ俺があの国の民などを助けねばならんのだ」

「ほん? 今度は何を企んでいるのだ?」

「…………」

「(ぷぷぷ! もうみんな『理解(わか)ってる』のね。ルシアンが素直じゃないってことが!)」


 何も理解(わか)っていないが?


「……我が世界で採れた暗黒世界――とある果実を使った合成物をな、実験的に投与したのだ。現在セシリィ王女が中心になって避難している国民共にな」

「ほう! どんな効果なんだ!?」

「『あるべき姿の能力を極限まで高める』――つまり、めちゃくちゃ強くなる」

「なんと! 爆発は!?」

「しない」


 『なぁんだ……』と呟き、興味を無くしたように下がっていくマール。

 彼女は、自由だ。


「あくまでこれは魔術実験。それがたまたま自分たちで王国を守るかどうかなど……俺の知ったことではない」


 次元の裂け目の向こうでは、ちょうど国民が王都に辿り着いたようだ。

 人間とは思えない(ちから)で天使どもをねじ伏せ、人間とは思えない跳躍(ちょうやく)で空にいる天使をはたき落とし、人間とは思えない速度で天使を引きずり回している。


「すごっ! あれが一般の人間!?」

「武の心得がなくても、圧倒的パワーで倒していっています!」

「ほう! 天使たちが求める『あるべき姿』、その極地に辿り着いた人間に逆襲を食らうとは……なんとも皮肉なことだな!」


 まるで闘技を観戦しているかのような彼女たちの中で、唯一そうでない者がいた。


「だけど! サザロックはとーっても強いのであーる! 人間じゃとても……」

「そうだな……しかし、関係ない」

「……むー! むー!」


 かつては向こう側だったというのに、グルグルパンチをしてまで不満を訴えてくるチャチャ。


「こうなれば……わらわが助けに行くのであーる!」

「それは待て。あいつらのことだ、お前は『汚れた身』とか言って犯されるぞ」

「けど――犯されるってなぁに?」

「……この前、海に行ったときのこと覚えてるな。アレだ」

「…………行かない」


 賢明である。

 それに、奴らの目的は俺らを誘い出すことだろう。ならば意地でも行かん。


「ほれ、見てみろ」

「むー……あ、あれは……?」

「ルシアン=ゼファウルゴス・MK-Ⅱ(マーク・ツー)だ」


 コアちゃんと一緒に作り上げたゴーレム人形。

 その1番最初のゴーレムが、今なおゴブリンと交尾している“武”の前に立ちはだかった。


「ちょうどいい、MK-Ⅱ(マーク・ツー)を通して向こうとこちらとの音声を繋げよう……あー、あー聞こえるか、そこの物好き天使?」

「ん……? お前……何者だ?」

「貴様のようなド変態物好き天使に名乗る名はない」

「はっ! 悔しかったら俺を止めてみろ!」


 挑発するように、腰を振る速度を増す“武”。

 これは……絶好のタイミングを見計らうしかないな。


「ふははは! 我が子種を受け取るがいい! んはぁぁぁ――あ、あれ……?」

「ゴッブン♡」

「お、おい……おいいいぃぃぃいいいい!?」


 絶頂を迎えそうな瞬間、『魂装幻夢(ファンタズムヴェール)』を解除する。

 その瞬間、奴の下半身と結合していたゴブリン(雄)が姿を現し……恍惚(こうこつ)の表情を浮かべながら、サザロックを見つめていた。


「何だ!? どうなっている!? 俺は……俺はまさかぁぁぁああああ!?」

「何匹ものゴブリンを抱いて……そんなにゴブリンが好きか?」

「ああああああああああああああああああああああ!?!?!?」

「くくく……あーっはっはっはっ! これは傑作だ! まさに天にも昇る気持ちだっただろう!?」

「(あっははは! さいっこーね! ゴブリンも嬉しそうだし、みんなハッピーね!)」


 実に心地よい絶叫である。


 しかし……俺とミラだけは腹を抱えて笑っていたが、アイリスたちは目を背けているようだ。

 こんなもの、数百年に1度あるかないかの笑いものだぞ。


「……コロスゥ!」

「はは、まるでゴブリンのような片言だな。だが俺に八つ当たりしたところで、ゴブリンを愛した事実は消えんぞ?」

「シネェェェェエエエエエエエ!!!」


 さて、果たして“武”の本気の攻撃を耐えられるか。

 まじめに実験開始だ。


「オラァァァ!!!」

「――ッ!」


 ガキンという耳をつんざく音が響き、“武”の拳がMK-Ⅱ(マーク・ツー)の頬を殴りつける。


「――い、いてぇ……」

「ふむ」

「な、何で痛いんだよぉ~……俺様の……『神の権能』を乗せた拳がよぉ~……!」

「……どうやら、効いていないようだな」


 MK-Ⅱ(マーク・ツー)の守りは、当然鉱石だけの硬さではない。

 魔力を内包する部分に『不壊(ふえ)』の概念が書き込まれてある。


 俺ではない声で『損傷:0。戦闘継続に支障なし』と解析して見せるMK-Ⅱ(マーク・ツー)に、サザロックとやらも呆然としている。


「……とはいえ、さすがに無傷とはいかないと思ったが……」

「――!? 黙れ! 黙れ黙れダマレダマレダマレェェェェ!!!」


 “武”の拳や蹴りによるラッシュ。

 (かす)った瓦礫(がれき)が砂のように粉砕されているのを見ると、確かに驚異的な威力らしい。

 MK-Ⅱ(マーク・ツー)は無傷だが。


「……もう十分だ」

「まだまだだぁぁぁあああ――アギャ!? アギャギャギャギャ!?」


 サザロックの顔面を掴み、締め付け上げる。

 すると彼は、遂には(よだれ)を垂らしながら、ゴブリンのような悲鳴を上げ始めた。


「た、たしゅけ――」

「『万象崩壊(オールブレイク)』」

「俺様が……最後が……ゴブリン……と……」


 かつてダンジョンの壁を掘り進むのに用いた魔法。

 対象を一瞬で分解する強力な魔法だが、準備に手間取るもの。

 しかしゴーレムにあらかじめ付与しておけば即座に発動が可能のようだ。


「『右腕の損傷確認。戦闘及び救助の続行に影響なし。指示を待つ』


 とはいえ、MK-Ⅱ(マーク・ツー)の右手――いや、右腕までも崩壊してしまっているな。

 出力調整を誤ったか、あるいは素材の強度が大天使の魂の崩壊エネルギーに耐えきれなかったか……。

 いずれにせよ、多用はできなさそうだ。


 さて――。


「――これにて、実験終了」

「(ついでに王国も、また救っちゃったね!)」


 チャチャにはしなかった、実際に大天使を“分解”して得られた情報もある。


「まだまだ実験台が足りないな。他の大天使とやらを探しに行くか」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日の投稿は

20時10分頃

となります!

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