第67話 ゴーレム人形(メイド)と、記念パーティ
そしていよいよゴーレムお披露目会である。
姿かたちは似ているが、関節部分が球状だったり体が硬かったりと、ゴーレム的特性が見て取れる。
「ルシアン様……これは私ですか?」
「20体のアイリス・ゴーレム。役割は拠点の護衛と雑用だ。お前の指揮に強く従うように設定している」
「……何でメイド服なのですか? みなさんのゴーレムも、全部……」
「……元来メイド服とは、汚れてもいいように作られた作業服だからだ」
決して趣味ではない。
「これは我か!? 何で1体だけなのだ!?」
「うっと――マールほどのコピーを作るには素材が足りなかったからだ。役割は……癒しだ。ついでに魔法も使える」
「わかっているな、ルシアン! 解析してみてもいいか!?」
「もちろんだ」
自分の解剖、それは魔術師ならば誰もが夢見る実験だ。
「次は私ですね。10体ほどでしょうか。おや……本物と比べて、胸が少し小さいようですが」
「……リエラ・ゴーレムは本物同様、汎用的に何でもこなす。畑仕事から拠点の防衛までな」
「まあ! ですが、胸が小さいようですね」
「……気のせいだ」
魂の情報から得ているものなので、完全に一致しているのだが。
「……毒物発見。排除します」
「え? ちょっと! それは私がコアちゃんに作ったクッキーよ!? 今度こそうまくできたハズなのに!?」
「消去、実行」
「――あ、ああ……そんな……」
本人に似て淡々と毒物を処理して見せたリエラ人形。
うまく機能しているようで安心だ。
「次は私ですか? 何だか他の子たちと比べて……」
「気のせいだ。ロルウェンナ・ゴーレムの役割は家事。それ以外は何もない」
「本当かなぁ~? あれ、おっぱい柔らかい……」
「たまたまだ」
他のゴーレムたちとは異なり、彼女は特別に柔らかい。
深い意味などないが。
「次は私ね! 何だか神々しく光ってるわ!」
「ラビラビィ・ゴーレムは聖なる波動を放つ。野菜や果物に祝福を与えるだろう」
「さすルゥ♡ 聖女の奇跡のパワーをお野菜の成長に使うなんて♡」
「確かにもったいないな。いずれは家畜も用意しよう」
野菜や肉が光り出さないか心配ではある。
「次はわらわゴーレムであーる! 6人もいるのであーる! 何か楽器のようなものを持っているような……?」
「その通りだ。わらわゴーレムはお前の歌に合わせて音楽を奏でる。必ずや、お前の歌声を引き立たせてくれるだろう」
「わーい! 嬉し~い! らららぁ~♪」
チャチャが歌い出した瞬間、楽器隊がやかましい不協和音を奏で始める。
作ったことを後悔するほどの吐き気が……。
「さて、これで全部だが――」
「ケケケ! ルシアン様、持ってきたよぉー!」
お披露目会が終わったところ、『あっちゃん』と『みっちゃん』がやってくる。
彼女らの後ろには、大量の葉っぱや果物を抱えたミニ邪神がトテトテとついてきていた。
「世界――とある樹から取れた収穫物です! とってもおいしいですよぉ~!」
「ケケケ、私たちの体だからね! 大事に食べてよ!」
ふむ、これはちょうどいいタイミングだ。
「ならば……外に出てみんなで食べようじゃないか。遅くなったがこの世界への移転記念パーティだ」
確か異国の言葉で……バーベキューと言ったか。
ちょうど給仕係もできたことだしな。
「わぁ! ルシアン様、それはいい考えですね!」
「おお! まさか焚火か!? 焼いて食べるのか!?」
「世界――とある樹の果実を焼く……?」
「焼いてもおいしいかもですね! それに小枝もおいしいんですよ!」
「枝まで食べられるのですか!?」
「ケケケ! もちろん! 採れたてだから柔らかいと思うよ!」
「世界――とある樹を食べるなんて……100年聖女やってても初めてだわ!」
「うふふ♪ 楽しそうね! 里を出てきてよかったわ!」
「わ、わらわは歌ってもいい!? いいえ歌うのであーる!」
楽しそうに外に出て行く女性たち。
そうと決まれば、ここにいない彼女たちも呼んでこなければな。
「準備しておいてくれ。コアちゃんたちを呼んでくる」
「はい!」
家の裏に新たにできた小屋、その扉を叩く。
「俺だ。入るぞ」
「きゅーきゅー!」
ミラの鳴き声――恐らく念話で『来たよ! 早く隠して!』とでも言っているのだろう。
「肯定:どうぞ」
扉の奥の部屋……空間拡張で広がっている部屋にカーテンで目張りをしている。その隙間からチラッと覗く巨大な――いや、やめておこう。
「2人して何を作ってるのやら。ところで、今からみんなで食事をするのだが……2人も来ないか?」
「(くんくん……確かに良い匂いがするわね!)」
どうやらもう始まっているようだ。
『焼き世界樹の枝』に、恐らくマールが待ちきれなかったのだろう。
「同意:いく」
「ああ」
「懇願:のせろ」
「……ああ」
コアちゃんを肩車し、再びみんなの元へ。
目を離したのはほんの数分だというのに……既に騒がしくなっていた。
「うまっ! うまいぞルシアン! 『焼き――』もごぉっ!?」
「ルシアン様、この焼いた小枝……まるで濃厚なお芋みたいでおいしいです!」
マールの口を塞ぎながら、アイリスが小枝を片手に教えてくれる。
差し出された枝を口に含むと……食べた瞬間に魔力が全身を駆け巡り、疲れが吹き飛ぶ感覚を覚えた。
「ねぇ、本番ってどんな感じなの?」
「え~? うふふ、それはねぇ~――」
ラビラビィとロルウェンナ、その手に持っているのは酒のようだ。
酒のせいか何なのか……こんな所でやめてくれ……。
「ケケケ! 『みっちゃん』もうまいな!」
「『あっちゃん』もおいしいです!」
「(あれって……お互いの本体を焼きながら食べてるの!? 倫理的に問題ないの!?)」
倫理など糞くらえとばかりに、お互いの葉っぱを焼きながら楽しそうに笑っている妖精。
気になるのは、彼女たちに食事は必要ないということだ。
「ちょっとあなたたち!? どうして畑に世界――とある樹の葉っぱを撒いてるの!? せっかくもらったのに!」
「本体が推測しているように、非常にいい肥料となるからです」
「だからって――ああ、立派な野菜が出来上がっちゃったわ……! せっかくなら……これも食べちゃいましょう」
自身のゴーレムに振り回されつつ、どこか嬉しそうな顔で野菜を収穫しているリエラ。
「ルシアン様、コアちゃん。お1つどうぞ」
近所のおば――お姉さんのように、野菜を手渡してくれる。
それを口に含むと――。
「うまい! みずみずしくも味が濃縮され、さらに生命力まで満ちてくるような――よくもあのひどい野菜がここまでになるものだ!」
「結論:うまい」
「うふふ! これで私の料理も成功しやすくなると思います!」
これで野菜の心配はなくなった……後は肉だな。
料理のことはリエラ・ゴーレムやロルウェンナ・ゴーレムが何とかしてくれるだろう。
「らららぁ~♪ わらわのお歌を、聞くのであーる! るるるらぁ~♪」
チャチャが楽器隊を率いて登場。
どうやら短い時間でもなんとか打ち合わせが済んだようで、統一感のある演奏が流れる。
さすがは、元音の権能大天使。
「こぉー!」
「ん? ミニ邪神が小枝を持ってきてくれたぞ。食べてみたらどうだ?」
「結論:……わるくない」
「こぉー! こぉー!」
小さな体をくねらせ、喜びを表現しているようだ。
「考察:みんな、うかれてる」
「そうだな」
だが――。
「結論:でも、これがいい。これが、“楽しい”」
「……ああ」
だからこそ、この『楽しさ』を邪魔しようとする不届き者を許してはおけん。
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となります!




