第61話 新たな女性と、新たな世界
「ルシアン様……どうしてそうなるのですか!?」
「ルシたま――ルシアン様。どうしてそうなるのですか?」
「疑問:どうしてそうなる?」
「(どうしてそうなるのよ!?)」
チャチャを連れ、隣のロルウェンナの部屋に入ると……アイリスとリエラ、ついでにコアちゃんとミラから浴びせられる非難。
まだ俺は何も言っていないのだが。
「はっはっは! さすがルシアン、魔術の研究と美しい女性に目がないなぁっ! 我が1番だがな!」
「ルゥくんがモテるのはいいことよ。私が1番だけどね」
「まあまあ♪ ルシアンくんったら……やっぱり男の子ね!」
マールとラビラビィ、そしてロルウェンナは意外と寛大だった。
「らららるぅ~♪ わらわは~、元大天使のぉ~チャチャであーる!」
「知ってますけど……何で歌いながら?」
「ルシたまに~……あんなことやぁ~こんなことされてぇ~♪」
「……へぇ」
その瞬間、1人も漏れなく全員から――いや、ロルウェンナを除いて殺気が駄々漏れになる。
「ひぃっ!? た、助けてルシたま!」
「…………」
怯えるように俺の背中に隠れるチャチャ。
それ、逆効果だからな。
「……こいつの体を解析するついでに、声帯をいじってやったんだ。そのせいで天界に戻れなくなったから……仕方なく連れてきた」
「体の解析って! やっぱりいやらしいことしたんじゃないですか!?」
「思考の解析:『羨ましいなぁ……私の体も隅々まで解析して欲しいよぉ♡ ルシたまぁ♡』」
「――くっ!」
澄ました顔を恥ずかしさに歪ませながら……リエラも全く懲りないな。
コアちゃんもなぜかリエラの思考ばかり解析するようになってしまったし。
「まあ、そういう訳でな。恐らくこのまま放置すると……俺の影響を受けたということで粛清されかねん」
「ららら~♪ ルシたまには責任取ってもらうのぉ~♪」
こいつはまた誤解されるようなことを……。
「……今更ですが、なぜその方――チャチャ様のお体をお調べに?」
「ああ、実はな……ミラの体はな、天使の肉体構造を参考に作ったんだ」
強大な魂と膨大な魔力を収め、そして概念魔法を行使するに足る器として、天使の体は非常に参考になった。
「ええ!? その白くてモフモフでマスコットみたいなお体が!? 確かに小さな羽が付いていますが……」
「(アイリスが私をどう思ってるか理解できたわ。お仕置き待ったなし!)」
わかったから、俺の頬を代わりにペシペシ叩くのはやめて欲しい。
「ミラの体のアップグレードができればと思ったのだが……あまり進展はなかった」
「(ルシアン……いつもありがとね。大好きだよ)」
いかん、収穫がなかったことで……つい声が暗くなってしまった。
少ししんみりしてしまった空気を切り裂くように……『くるるるる~』とマヌケな音が響き渡った。
「……ルシたま……お腹が……減ったのであーる……」
「……そうか」
さすがに恥ずかしさには勝てなかったようで、チャチャが歌うことをやめて俺の服の袖を軽く引っ張る。
「(……はぁ。何だか大天使って言っても憎めないやつね! 同行を許可します!)」
「(憎めないと言っても、肉付きはいい――)」
「(ルシアンの! 女癖の悪さは! 許してない!)」
頬を叩く勢いがかつてなく強い。くすぐったいだけだが。
「……ちょうどいい。試し――新鮮な野菜が採れる場所がある」
「今『試す』って言った?」
「みんな準備はできたな? 行くぞ」
「『試す』って言ったでしょ? これ以上わらわで何を試すって言うのー!?」
纏わりついてきて鬱陶しいムチムチを引きはがしつつ、空間を手刀で切る。
その次元から覗くのは……以前の赤と黒の世界とは異なり、何もない虚無の空間。
「ほわぁ」
「これが通称『魔界』の成れの果て、神ゼファウルゴスが創り、そして俺が壊した世界だな。そしてこっちが――」
別の空間を手刀で切る。
すると……まるで田舎のような光景――緑豊かな自然に田畑、そして小さな一軒家がポツンと建っている世界が映し出された。
派手さはないが、彼女たちとゆっくり過ごすにはこのくらいがいい。
「これが俺の創った世界――仮に“狭間の世界”と呼んでおこう」
「せ、世界……? 転移先じゃなく……?」
「そうだ。魔界の構造を解析して、ついでに魔界の魔素も使わせてもらってな」
「ほえぇぇ~……」
「(いつの間に……)」
「(教会から『神敵認定』されたことを聞いて急いで創った。ロルウェンナたちの避難先にな)」
さすがに体感時間で数千年はかかったが……俺の『加速』の前では時間など問題ではない。
「すごいです! まさか世界まで創っちゃうとは!」
「ルシたんは……神にでもなるつもり……?」
「否定:すでに、じゃしん」
「我はその域に辿り着けるのだろうか――否、辿り着くのだ!」
「さすルゥ♡ 今度からルゥくんの聖女名乗る♡」
アイリスたちが好き勝手言っているが……まあいい。
「俺の許可のないものは入れないことになっている。遅れずについてこい」
次元の裂け目を通り抜け、地面に降り立つ。
土や木々を構成しているのは元の世界の物と同じなため、感覚としては本当に『転移』しただけに感じるはずだ。
「ふわぁ~……」
誰ともなく、感嘆の声が漏れるのが聞こえた。
「ようこそ、俺と――お前たちの世界へ」
誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!
★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!
明日の投稿は
20時10分頃
となります!




