第52話 100年越しの共同作業と、王都を包む光
――1週間後。
少し間が開いたのは、目の前に広がる美しい援軍を待つためだった。
「ルシアン殿、我ら『ユリエル』の民……必ずや恩に報います」
「助かる。わざわざすまないな、ユリエナ」
「……いえ。将来の夫のためですから」
「むっきー!(むっきー!)」
リエラの呼びかけに応じて集まったエルフたち。
その数総勢1000人。コアちゃん作、以前渡した『劣化版お手軽誰でも邪神討伐装備』と今回の『お手軽誰でも魔人化解除セット』を携えている。
「まず俺たちが王都に突入して瘴気をあらかた浄化する。その後はエルフの戦士たちに来てもらい、魔人化した人間を浄化してもらう。今はモンスターとはいえ、元々は罪のないこの国の民だ。なるべく傷つけないように頼む」
「もちろんです!」
基本的に彼女たちは魔人の浄化と捕獲を優先し、マールたちはその他のモンスターがいれば討伐に当たることになっている。
残念ながら、俺は新技の制御に集中するため、ほとんど動くことはできないだろう。
「ルシアン様の近くにある魔法陣の中に入れれば……公爵邸――聖女様の所にある『マール人形』と入れ替わる、ということですね……?」
「そうだ。この魔法の発案者に敬意を表した、見た目にもかわいいマール人形だ」
「素晴らしい魔法です……しかし、マール殿が恥ずかしそうにしてますが……」
そんなところもかわいらしいだろう。
「よし、準備はいいか?」
「もちろんです」
「はい!」
「任せろ!」
「結論:いける」
「(ミラちゃんに、まっかせなさーい!)」
リエラ、アイリス、マール、コアちゃん、そしてミラ。
力強い返事と瞳を受け取り、いざ瘴気に覆われるソニプロフェン王国王都へ。
「行くぞ!」
結界を展開し、ひたすら王都の中心を目指す。
途中、元人間の魔人や高ランクの『カース・フェンリル』などの高位モンスターを見かけるが、今は無視だ。
「この辺でいいだろう」
王城が目の前に見える、王都の中心。
「頼むぞ――ミラ、『人神換装』!」
人々を蝕む絶望を払うように、長い銀髪が光を反射する。その深い漆黒の瞳は、絶望などに負けない強さを秘めている。
最愛にして、最も信頼しているパートナー、ミラ。
「行くわよぉー! 魔素よ! 命の源たる魔素よ! 私の求めに応じよ! 理を否定して全てを覆せ! 存在の反転、闇を光へ! 『万象反転・瘴魔転生』!!!」
かつて『退廃の腕』の瘴気を吸収し魔石へと変換した大技。
それを人化したミラが行使する。
「来るぞ! 魔人とカース種の大群だ!」
その魔力に魅かれ、王都中のモンスターが殺到する。
殺してはいけない、と言うのが面倒だ。
「ガルォォォオオオーーーンッ!!!」
「ルシアン様にお見せするんだ! はっ、とっ、やっ――はぁっ!」
迫りくるカース・フェンリルを、空中ジャンプを交えて翻弄したアイリスが叩き斬る。
彼女の成長が誇らしい。
「魔人は任せてちょうだい。氷柱、魂を凍らせて――『アイスバインド』」
リエラによる魔法で、魔人の下半身を拘束する氷が出現する。
相変わらず頼りになるやつだ。
「わっはっはっ! こうも実験台がいっぱいだと嬉しいなぁ! 『ウインド・転移』」
マールはモンスターの首に風を送り込み、内部から破裂させている。時々失敗しているが……なかなかえげつない。
常に前を見ている彼女が、間違いなく必要だ。
「懇願:まもれ……ぶくぶく……」
「よしよし」
コアちゃんはふるえながら必死にしがみついている。
そして俺はコアちゃんを撫でる。
完璧な連携の元、少しずつ瘴気は晴れ、順調にモンスターの数が減っていく。
「ルシアン様!? 魔人が多すぎて無理なんですけど!?」
「モンスターも多くて――きゃっ!?」
「…………」
なかなかうまくいかないな。
「見つけたぞ!」
「あれが魔人!? 本当に人なの!?」
「2足歩行の奴は魔人だ! 多分!」
どのように料理しようか考えていると、エルフたち――ユリエナ達の声が聞こえた。
予定より早いな。
「早いじゃないか」
「この魔道具のおかげです! 試しに入ってみたら問題なかったので、予定より早く突入しました!」
何事も実験してみる。いい心構えだ。
「魔法陣展開――『マール式転移』! その魔法陣に浄化した人間を放り込め! 多少のケガは向こうの聖女が治す!」
「了解です!」
打ち合わせ通り、エルフたちが片っ端から人間を浄化し、魔法陣に突っ込み始める。
助けられたものは軒並み意識を失っているが……転移した先でロルウェンナ率いる冒険者たちやラビラビィ、王国の人間が介抱しているはずだ。
しかし、想定外のことが再び起こってしまう。
「くっ……マール人形が……!」
人間と入れ替えに転移してきたマール人形が溢れ、魔法陣を塞ぎ始めてしまう。
一体どうすれば……!
「……くっ! このままでは転移が……!」
「困惑:どうしたの?」
「あの魔法陣を塞いでいる人形をどうにかどけなければ……いや、ついでに『自立型モンスター迎撃魔道具』にすることができれば……!」
「考察:……できれば?」
「とても……嬉しい……!」
「結論:まかせて!」
これが、子の成長を喜ぶ親の気持ち……!
コアちゃんが恐る恐る魔法陣に近づいて、マール人形に触れる。
するとマール人形がこぞって『カース種』の元へ飛んで行って――自爆した。
「結論:むふっ」
「……すごいぞコアちゃん!」
「懇願:なでろ」
マール人形よ、さらば。
「(随分余裕ね! こっちは大変だって言うのに!)」
ミラへと視線を向けると、笑いながらも冷汗を流している。
術の制御に精一杯なようだ。
「……人間の転移は落ち着いたな。ミラ、一緒にやろう」
「あら、共同作業? まだちょっと早いんじゃないかしら!」
「いじわる言うな。100年以上待ちくたびれてる」
「……私もよ」
軽口をたたきながら、ミラの横に立ち、魔法陣に手を伸ばす。
「「『万象反転・瘴魔転生』」」
俺とミラ、2人の魔力の色が混ざり合って、王都の空を塗り替えていく
「いっけぇぇぇーーー!!!」
やがて――。
「ふぅ、これでどうよ!」
「ああ、やったな」
王都の空に、再び青空が戻った。
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次話の投稿は
20時10分頃
となります!




