表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第4章 ささやかな胸に去来する願い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/82

第46話 古いしきたりと、新しい決まり


「ユリエナよ、戻ったか。して、生贄(いけにえ)は誰にするか決まったか?」


 『カツテナ』に辿り着いた俺たちを迎え入れたのは、そんなしわがれた声だった。

 リエラを生贄(いけにえ)にするときに中心的役割を果たしていた――族長だったか。


「……む? そこの人間は見覚えがあるな……」

「(このおじいさん、まだ生きていたんだね……)」

「(憎まれっ子世にはばかると言うしな)」


 さすがはエルフ、老人になっても100年は余裕で生きられるようだ。


「久しいな。 生贄(いけにえ)の儀などやって大丈夫か? また漏らしてしまうぞ?」

「何を――貴様あの時の!?」

「(覚えられてたね、ルシアンのこと)」


 世迷言を吐く割には、記憶力がいいと見える。


「貴様! 貴様があの時生贄(いけにえ)を連れ去ったから! 再びこの地を災いが襲ったのだ! この大罪人め!」


 族長が、まるで腐ったトマトのような顔で唾と罵声を飛ばしてくる。

 いや族長だけじゃない。周囲の老人たちも口々に『そうだそうだ』『(けが)れし人間め』などと(わめ)いている。


「我々の掟に口出しするな、薄汚い人間風情が!」

「そうだ! 我らの苦労の上に生きている者をどう扱おうが、我らの自由だろう!」

「里を捨てた恩知らずどもに思い知らしめるいい機会だ!」

「あの役立たず共、わしらのために命を捧げる方が里のためじゃ!」


 ひどいな……こいつら、本質的には自分さえよければ他者などどうでもいいのだろう。


「(ほんとむかつくこいつら……! ルシアンどうにかして!)」

「(仰せのままに)」


 いつもの無茶ぶりも、今度ばかりは完全に同意だ。


「全て貴様のせいだ! 責任を取れ!」

「それは悪かったな。では責任を取って――」

「ようやくわかったか――」

「責任を取って、お前らを生贄(いけにえ)として効率よく魔力を取り出してやろう」

「――は?」


 場が静寂に包まれる。はて、何かおかしなことを言っただろうか。


「若い者よりも老い先短い者から生贄(いけにえ)にするのは道理だと思うが?」

「何を言っている! 里のために今まで尽くしてきた我々を――」

「だから、今一度里のために尽くさせてやろうと言うのだ。ほれ、名誉の死を遂げたい奴から並べ。こんな脆弱(ぜいじゃく)で効率の悪い結界でも、向こう100年は強固な守りを展開できるように魔力を抽出してやろう」

「きさっ――貴様っ……!」


 わかってはいたが、自分たちが生贄(いけにえ)になる気はさらさらないようだ。

 ならば問題の原因を取り除く機会を与えてやるか。


「それとも、お前ら自身の手で邪神を倒してみるか?」

「な、何を……ま、まさかまた……!」

「ほれ」


 少しばかり離れたところにいた邪神の“左足”。

 そいつを魔力で掴んで里の中心に放り投げる。

 必死に魔力の拘束を解こうとして、体をビクンビクンさせているのが最高に気持ち悪い。


「ひょげぇぇっ!?」

「じゃっじゃしんじゃああああ!?」

「ひゃぶぇぇ!?」


 腰を抜かして慌てふためくばかりの老人共。

 立ち向かおうとしているのは、アイリスたちやユリエナだけだ。


「ル、ルシアン様!?」

「心配するな。この邪神、紛い物だ」

「へ?」

「多少は瘴気を振りまくが……この程度は『死の森』以下の影響しかもたらさん」


 どうやらこの邪神、“この森の記憶”から再現された超絶劣化版の“邪神の左足”だ。

 誰がそんなことを……というのは今は置いておこう。


「ユリエナよ、こいつへの対処自体はさほど問題ではないな?」

「……はい」

「ならば……こいつは元の場所に戻してやろう。こいつもせっかくもらった命を謳歌(おうか)したいだろうしな」

「えっ!?」


 再び、“左足”を魔力で掴んで元居た場所に返してやる。

 心なしか嬉しそうにビクンビクンしているが、やはり気持ち悪い。


「――はっ!? お、おおおいぃぃぃ~~~!」

「ん?」

「たたったたた――倒してくれるんじゃなかったのか!? あの時みたいに!」

「いやお前らが倒す機会を与えてやっただけだが。その様子じゃ無理そうだったから逃がした」


 全員が全員、未だに腰を抜かしたまま。そして漏れなく漏れている。

 年を取ると緩むと言うからな。


「さてユリエナよ。『瘴気のごちゃごちゃで里が大変、手を貸してくれ』と言うことだったな?」

「は、はい……」

「であれば、この『カツテナ』ではなく『ユリエル』の里に強力な結界を張ってやろう」


 きょとんとしている老害どもを尻目に、話を続ける。


「瘴気や外敵から守る結界は当然のこと『環境調整』に『自動回復』もついでにつけてやろう」

「それはありがたいですが……維持に相当な魔力が必要なのでは?」

「そ、そうだ! 結局貴様も生贄(いけにえ)を――いや薄汚い人間らしく、対価としてうら若いエルフを奴隷として要求するんだろう! そうに決まっている!」


 どこまでもぶれないじじいどもだ。


「魔力など周囲から取り込むから必要ない――いや、そうだな。村人全員から徴収するか」

「ほらみろ!」

「13日に1度、1人ずつ初級魔法程度の魔力を台座に込めろ。その魔力の性質を元に結界が外敵かどうか判断するようにしよう」

「はえ……?」


 じじいの言葉で、より効果的な方法を思いつけたぞ。

 たまにはいいことを言うではないか。999割方不要なことしか言わないが。


「本当にそれで済むのか?」

「ん? ああ」

「それなら……わしも移動させてもらいたいのう。この年で若いもんに守られるのは申し訳なく、今まで『カツテナ』にいたが……」


 他の老害どもとは違い、それまで口を開かなかったご老人が手を上げる。

 それを見た同様の者たちも『わしもじゃ』『初級魔法程度は問題ないしの』『ありがたや』など、同意を示す。


「どうだユリエナ。俺としては、『(つつし)み深い老人は』村の宝だと思うが」

「ええ、もちろん歓迎します!」


 彼女としても文句はないようだ。


「そ、それならわしも――」


 それに便乗するように、口汚く罵っていた老害どももおこぼれに預かろうとしているが、それは許さん。

 どの口が言うのだろうか。


「お前らは許さん」

「何を……」

「バカか? なぜ今までさんざん(ののし)っていた相手が無条件で助けてやると思えるのだ? 俺を罵った奴は全員把握しているぞ」

「お、鬼か……老人を敬え!」


 鬼で構わん。

 最近は『じゃしん』と呼ばれているしな。


「黙れ。年齢以外誇れるもののない、瘴気にも劣る有害物質が。さっさと死んで森の養分になった方が世界のためだな」

「きさ――」

「――と言われないように、今後気を付けるのならば、話は別だがな」

「(そこまでが“ワンセンテンス”ね! 無理があると思うけど!)」


 “(あお)り”の天才がいてな。参考にした。


「…………」

「条件は2つ。『他者への暴言を吐いたら、10日間喋れなくなる』、そして『3度その状態になった場合、2度と結界内に入れなくなる』。これを受け入れるのであれば許可しよう」

「そんな……! 思考を縛って言うことを聞かせようと言うのか! しかも結界外に……死んでしまうではないか!?」

「そうだが? 俺の庇護下に入れるのに、何か問題が?」

「そんなっ!」

「他者を不快にするだけのその口を(ふさ)ぐだけだ」


 何の問題もない。

 むしろ俺の慈悲深さに感謝して欲しいくらいだ。


「どうする?」

「……わかった……それで……いい」

「まだ勘違いしているな? これは俺の“慈悲”だぞ。お前の許可など求めてないのだが?」

「……わかり、ました。お願い……いたします」


 喋る以外に能のない老害どもには効果的な”(しつけ)”だろう。

 そして学習能力のない生き物は淘汰(とうた)されるのは当然のことだ。

 精々残りの余生を緊張と後悔の中で(みじめ)めに過ごすがいい。


「(ん~~~! スッキリ!)」


 お姫様の機嫌も直ったところで、早速魂の情報を書き換える。

 結果的にほとんど全ての里の者が移住を決断した。


 残った何人かは……俺には関係ないな。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話の投稿は

20時10分頃

となります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ