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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第4章 ささやかな胸に去来する願い

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第42話 芽生えし感情と、作られし聖獣


 体から瘴気を溢れさせている、国よりも大きなクジラ、『深淵の鯨(アビス・ホエール)』。


「こいつが……瘴気の発生原因……?」

「厳密に言うと違うな。体内に邪神の一部がある」


 恐らくふとしたはずみで飲み込んでしまい、そのまま寄生虫のように飼うことになってしまったのだろう。


「さて、このような巨体にも……深海ならではの有効な討伐方法がある」

「……というと?」

「クジラの周辺の空間から瞬時に水を抜き、圧力差で爆縮させる」

「……? よくわからないが、あの巨体の周囲から瞬時に水を抜くというのは……」

「言葉通りだ」


 どうやら、ユリエナにはミュリエラほどの魔法の知識はないらしい。


「わかったぞ! 要はアイリスがブルースフィアを滅ぼ――むごごっ!?」

「きゅっきゅー!」


 余計なことを言おうとしたマールの口を、ミラが身を(てい)して塞ぐ。

 その(よだれ)まみれの身体で肩に乗ってこないことを祈ろう。


 さて、時間もかける理由もないから、サクっと終わらせてしまおうか。


「提案:わたしも、やくにたつ」

「ん?」

「懇願:わたしも、やくにたちたい」

「……そうか」


 初めて『懇願』されたな。


「ではお得意の『解析』を頼めるか」

「ん。解析:……瘴気浸食率100%。体内に“不明な超常の存在”を確認。感情なし」

「やはり邪神だな」

「思考の解析:――不明瞭――少しだけ――完了……」


 コアちゃんの眉毛が、ほんの少しだけ下がった。気がする。


「どうした?」

「推測:とてもちいさくて、わかりにくかったけど……」

「けど?」

「『たすけて』って……」

「そうか」


 やれやれ、面倒くさいことになりそうだ。


「コアちゃんはどうしたい?」

「困惑:どう……?」

「そうだ。目の前で助けを求める者がいて、その声がコアちゃんにしか聞こえない。コアちゃんはどうしたい?」

「考察:…………」


 表情はほとんど変わらないが、考えているようだ。

 自分の心に生じた感情に戸惑い、必死に答えを探しているのだ。


「困惑:…………」

「…………」

「疑問:…………」

「…………」

「結論:…………わからない」

「ふふ」


 思わず笑みがこぼれてしまった。

 ユリエナが『ルシアン殿が……笑った!?』とか呟いているが、俺とて笑う。むしろよく笑う。


「コアちゃんよ、『結論』はまだ早い。1つ教えてやろう。実験とは『わからない』からやるのだ。わからないのであれば、試してみるといい」

「考察:じっけん……」

「そうだ。先日もおこなっただろう。その結果、こうして深海に適応できた。今お前の心に生じた気持ちが『わからない』なら――」

「…………」

「試しに、助けてやろうじゃないか」


 魔法陣、展開――術式起動。


「助けるって……カース化をどうにかするということですか!? 『カース化は戻らない』とあなたが言った――」

「不可能を可能にするのが、魔法だろう?」


 ユリエナがわめくが、そもそもそれはただの一般論。俺には当てはまらない。


「(そのとーり! お姉ちゃんも、かわいい妹にいいところ見せようかな!)」

「助かる。ミラ――『人神換装(キャスト・オン)』!」


 深海にあって美しく煌めく銀髪。海の底より黒い瞳は、全てを包み込むような神秘的な色。

 コアちゃんがそのまま成長したような――ミラが顕現する。


「突撃ー♪」

「驚愕:あれは……?」

「お前が成長した姿――ミラの本来の姿だ」

「驚愕:……きれい……」

「……さて、久しぶりの大技だ」」


 魔法陣に魔力を込め、集中する。


「――魔素よ! 我が求めに応じよ! 『概念変換(オルタエイドス)霊体(アストラル)』」


 深淵の鯨(アビス・ホエール)の存在を、霊体に書き換える荒業(あらわざ)、当然禁術。

 国よりも大きい存在を無理やり変えるために膨大な量の魔力が消費されていく。


 だが、これで肉体のある邪神を無理やり引っ張り上げることができるだろう。


「見つけたぁー! とぉぉりゃあああーーー!!!」

「――――ッ!?」


 今度は足――“右足”だ。

 ミラが邪神の右足を深淵の鯨(アビス・ホエール)から抜き出し、思いっきり上に放り投げた。


 さすがに邪神と言ったところか、この深海でも問題なく存在している。


「ミラ! そいつを思いっきり蹴とばして急いで戻ってこい!」

「りょ! そりゃ!」


 何をするか察したのだろう、ミラが邪神が吹き飛ぶ速度より早く戻ってきた。


「今回は本当に余裕がない。悪いが手抜きでやらせてもらう。『ロックスピア』×100、そして――『概念変換(オルタエイドス)・ゼロ』」


 邪神の“右足”、その周辺に大量の石槍を作成。さらに周囲半径50メートルほどの水を、球状に消失させる。

 何が起こるか。


 半径50メートルの水が消失した真空地帯へ、数千メートル級の水圧が一気に殺到する。中心点へと向かう海水の激突は、岩槍を音速を超える(つぶて)へと変え、邪神の肉を文字通り『分子レベル』で削り取っていく。


「きゃっ!?」

「のわっ!?」

「ひぃぃっ!?」


 遅れてやってきた音と衝撃で、俺たちを包む障壁が激しく揺れる。

 さすがにあの規模の破壊は結構揺れるな。


「解析:“不明な超常の存在”、消滅……ぶくぶく……」

「跡形もなくなったな。海底もひどいありさまだ」

「自分でやっといて……」


 それもそうなんだが……。


「さて、後はクジラの瘴気化を解除だが……」


 霊体化していたおかげで深淵の鯨(アビス・ホエール)も大規模な破壊の影響は受けていない。

 だが、問題が1つ。

 “書き換え”はデカすぎてめんどくさいし、概念変換しようにも元の体の状態わからん。


「まあいっか。『概念変換(オルタエイドス)(ホーリー)』」


 “瘴気”がダメなら、“聖”にすればいい。

 きっとこいつも聖獣になりたかったに違いない。


「(また適当なことを……)」


 いつの間にか毛玉に戻っていたミラはそう言うが、これが最適な方法に間違いない。

 暗い深海だ、体が聖の波動でほんのり光るくらいがちょうどいいだろう。


「(人の賢者よ……礼を言う)」


 瘴気を書き換え終わった頃、頭の中に声が響いた。


「(ん? お前……深淵の鯨(アビス・ホエール)か?)」

「(左様。我も長く生き、こうして他の者に意思を伝えることができるようになった……)」


 念話は言語でなく、意志を伝える。モンスターが使うのは珍しいが、ないことはない。


「(礼ならこの子に言え。この子がお前を助けたいと言ったから、お前を助けてやったに過ぎん)」

「(……では、そうしよう。人間の賢者よ、ありがとう)」

「(ああ待て。そうだな……『コアちゃんのおかげで助かった』とか『とても嬉しい』とか『その気持ちを大切にした方がいい』とかそんな感じで――)」

「(……えぇ……)」




 俺には返事を返さなかったが……コアちゃんの顔を見るとうまくやってくれたらしい。

 さすが聖獣。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日の投稿は

12時10分頃

20時10分頃

となります!

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