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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第3章 無垢なる絶壁に刻まれしもの

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第28話 素人の秘術と、朝飯前のバックアップ


 ダンジョン・コア。


 本来ならボス部屋の地下に隠されているダンジョンの本体と言っても過言ではない魔石。

 それがボス部屋の真ん中に表出しており、そこからは(おびただ)しい量の瘴気が生じている。


「(いやいや、それより問題なのはさぁ~――)」


 ミラも気が付いたか。

 この魔術式、実に見覚えがある。かつて俺も似たようなことをやった。


 だが――。


「(似ているが違う。というより途中までほとんど同じだが、途中から別物――わからないものを無理やり別の物でどうにかしたような……まるで素人の料理人が最高級の食材を台無しにしたような不快感を覚える)」


 『魔素を瘴気に変換』、まではいいがそこからなぜか『吸収した水を留めて圧縮』というように、全くの別物に。

 なぜ水なんだ?

 そのせいで瘴気が漏れ出てしまっているではないか。


「(ああ! 魔術式の失敗に詳しいミラちゃんからすると簡単よ!)」

「(む?)」

「(『吸収、留めて圧縮』の術式を、水魔法の術式からそのまま転用したのよきっと!)」

「(なぜそんなことを……? 水と瘴気は全く性質が異なるではないか。つまり肝心の『吸収、留めて圧縮』の術式も異なるのは当然であって――)」

「(はいはい、わかったわかった。ほら、マールがコアに触っちゃいそうだよ?)」


 それはいかん。


「おいマール、それに触れては魔人化が進んでしまうぞ!」

「ちょ、ちょっとだけだ!」

「ちょっとで済むか!」


 好奇心、猫を殺す。マールは子犬だが。


「いいか? そういう正体不明の物に触れる時は、必ず魂のバックアップを自分で取って自動的に蘇生魔法を展開されるように準備してからにしろ」

「むぅ……」


 やれやれ危なっかしい。

 しかし嫌いじゃない。


「ルシアン様……魂のバックアップとは……? それと蘇生魔法なんて普通はできないかと……」

「安心しろ、ちゃんととってある」

「え?」

「しかし複製した魂は果たして本当に“本人”と言えるのだろうか」


 幾分か魔術に精通している自負はあるが、その俺でさえ未だに答えに辿り着けない問題である。

 故に俺は目の前にいる、今なお『え?』と言っているアイリスたちを全力で守るのだ。


 それは置いとくとして。


「マールよ、こんな粗悪品を調べても得る物は少ない。いずれこの者が目指した完成品を用意してやるから少し待て」

「本当か!? 本当じゃな! 待っておるぞ!」

「約束しよう。今はこの劣悪な粗悪品の術式を消すとしよう」


 ダンジョンの持つ魔素を瘴気に変換。そしてそれが漏れ出てる現状が続けば、その影響はダンジョン全体に及ぶ。人間で言うと、毒された血液が体内を回るように。

 そうなれば、『カース・ダンジョン』となって……実に興味深い。


「(やめなさい。こんな都市の中心部でそんなことしたら大変なことになるよ)」

「(………………わかってるよ)」

「(即答しなさいよ!)」


 まあいい。


「よし、終わったぞ」

「えっ!? もうか!? 何をしたんだ!?」

「『マジックキャンセル』だ。こうして止まっている術式を壊すなど、見なくてもできる」


 普通は破壊を防ぐ術式も組むものだが、それすらも施されていない。

 ただ……術式の甘さとは別に、他にも気になることがあるのだが……今はいいか。


「後はコアを元の場所に戻してやれば依頼完了だ」

「元の場所っていうと……?」

「ちょうどコアの真下だな。『万象崩壊(オールブレイク)』で掘って……これで終わりだ」


 後は来た時と逆に、上に向かって掘り進めばいい。


「……ひょっとして、今のコア――魔石を壊せばダンジョンは死ぬのでしょうか?」

「ああ、アイリスの言う通りだ。こいつも魔物である以上、心臓部のコアを失えば死ぬ」

「……なるほど。まれにダンジョンが消失するのはそういうことだったのですね」 

「まあな。ただここは国に管理されたダンジョン、破壊する訳にもいかないだろう」


 資源としても、駆け出し冒険者の成長の場としても。

 他の生き物の中にも、有毒な寄生虫を知っていて体内に取り込んでいるものもいる。

 お互い利用しあいながらうまいこと生きていくのがいい。


「では行くか……ん?」


 不思議なことに、先ほどまでコアがあった場所に1つの杖と床に魔法陣が浮かび上がっていた。


「これは……ダンジョン踏破報酬、でしょうか? 」

「……ふっ。律儀な奴だ。何やらメッセージまで書いてある」

「(『治してくれてありがとう。でも痛いことしないでね』ですって)」


 なるほど、魔法陣は帰還用に設置してくれたらしい。

 一応害はないか確認するが……。


「これで入口近くまで戻れるようだな」

「ほうほうほう!? この距離を一瞬にして……これが他の場所でも使えれば……!」


 さすがの目の付け所である。

 だがその分野は……かつて俺も挑戦し、結果的に魔界経由の『位相転移』を代替えにするしかなかったものだ。


 マールが挑戦するというなら全力で応援してやろう。


「戻るぞ」

「ああ待て! 今魔法陣を書き写しておる! ここは……何の文字だ? まったくわからん……わからんぞぉっ!!!」

「マールさんったら……わからないのに嬉しそう。ふふ」


 十数分後、ひとしきり魔法陣の観察と模写を終えたマールを連れて地上へと戻る。

 そこには来る時と同じようにギルド職員が待ち構えていた。


「ル、ルシアン様! よくぞご無事で」

「ああ。調査は終わりだ。ほら報告書」


 マールが転移魔法陣を調べつくしている間、暇つぶしに書いておいたものを手渡す。

 とはいえ末端の職員に真実を伝える訳にもいかないので、幾分か歪曲しているが。

 真実はリエラには伝えればいいだろう。


「あ、ありがとうございます……え? 原因は『何者かがボス部屋に瘴気を発生させる魔石を設置したことである』ですか!?」

「そうだ。既に魔石は破壊。残った瘴気はダンジョン自体が浄化するだろう」

「な、なんと……何十日もかかっても終わらなかった調査がほんの1時間足らずで……!」

「あとの調査は任せるぞ」

「は、はい……! おい! 瘴気発生の原因がわかったぞ――」


 目の前のギルド職員が同僚に慌てて知らせに行く。

 これから報告書通りにダンジョンが元に戻ったか調査をするのだろう。


「――ああっと、忘れていました。ギルドにお立ち寄りいただけますか? 『丁重に持て成すよう』ライブラのミュリエラ様から……」

「ああ。ありがとう」


 リエラのやつめ。別にそんな特別待遇を求めている訳ではないのだが。

 とはいえ厚意を無下(むげ)にする訳にもいかないな。


誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話の投稿は

20時10分頃

となります!

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